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横田の里の常連さんが綴る里のネタ特集

名球会の基準

2015年08月29日 | 夏ネタ

「今の連中は何もわかっとらん!」ペナントレースを見つめる球界の重鎮たちは、異口同音にこう苦言を呈す。400勝のレジェンド・金田正一氏が現在のプロ野球にもの申す。


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 ワシが長嶋(茂雄)と王(貞治)とで「名球会」を作った時、決めた入会条件は、投手で通算200勝、野手で通算2000本安打だった。当時は達成が難しい条件で、名実ともに「名選手」が名を連ねていた。
 
 しかしこれだけ試合数が増え、現役を長く続ける選手が出てくるとは想像もしなかった。200勝はまだしも、2000本安打は細く長く現役を続ければ誰でも到達できる数字になってしまった。
 
 しかもこうした数値目標を作ってしまったせいで、「記録」というものに執着する風潮を生み出してしまった。だからワシはひどく後悔している。
 
 例えば先日、谷繁(元信・中日)が野村(克也)の持っていた通算試合出場の記録(3017試合)を塗り替えた。また、同じ中日の山本昌は、メジャー記録であるJ・モイヤーの49歳6か月での史上最年長勝利の更新を狙っているという。
 
 ちょっと待て。記録の前に中日は今何位だ。セ・リーグで唯一蚊帳の外の最下位ではないか。チームがそんな状態で作る個人記録に何の価値がある。
 
 同じ通算試合出場記録なら、30本しかホームランが打てなくなったことを理由に潔く引退した王(貞治)の2831試合の方が、ずっと価値がありますよ。投手の最年長記録? どうでもいいわ。
 
 記録を作るためだけに現役を続けているようにしか見えない。最下位を突っ走るチームで、ロートルが若い選手の出番を奪って記録を目指すなど愚の骨頂ですよ。ワシか? ワシが400勝を達成して引退したのは30歳半ばだ。投げようと思えばまだ投げられた。チームもV9の真っ最中で、毎年優勝していたわい。
 
 まァ、2人は名指しにして悪かったが、両者とも十分な実績があるからこその苦言だ。とっくに現役を退いて後進を育てる仕事に集中しなくてはならないことは自分が一番わかっているはずだからね。ボロボロになってでも記録に執着する選手が多すぎるよ。

●かねだ・まさいち/1933年、愛知県生まれ。国鉄、巨人で活躍。球界唯一の400勝達成をはじめ、365完投、4490奪三振、5526.2投球回など、数々の日本記録を持ち、圧倒的な実力と存在感から「天皇」と呼ばれた。引退後はロッテ監督。