イギリスのEU離脱と日本の参議院選での改憲勢力の勝利
イギリス、日本双方で国の将来を決しかねない極めて重要な選択だったにも拘らず 拍子抜けする程あっさりと結論が出た。
両国の国民が何故そのような選択をしたのか、イギリス・日本はもとより米欧多数の専門 家による分析が為されているが、その中には話を極めて単純化し、イギリス国民は金(経済)よりも主権(EUによる国家主権への侵害排除)を選び、日本国民は主権(国民主権―憲法)より金(経済―アベノミクス)を選んだと言うことで、そこには何となく国民性の違いも垣間見えると言う主張である。
しかし事はそれほど単純ではなさそうだ。 恐ろしい事に、イギリスではEUの何たるかも充分理解せずEU離脱に票を投じた人が多くいたと伝わってきているし、日本でも自民・公明の改憲政党に投票した人の大多数が改憲議席3分2の意味を理解していなかったと報じられていることである。
イギリスでは残留派のキャメロン首相は残留派の勝利を過信した為、充分な啓蒙活動を怠り、EU離脱というような複雑で国家の将来を左右するような重要な問題を、残留か離脱かというような単純な二元論にすり替え国民投票にかけてしまった。 短絡且つ浅慮の誹りは免れず退任は当然だろう。
一方日本の参議院選挙では安倍政権が選挙テーマは経済問題、アベノミクスの深化だと 主張し、党首討論を拒否する等憲法問題から逃げまくった。
この自公政権の選挙戦略に追い 風となったのは、降って涌いた様な三つの大事件である。 舛添都知事の公私混同スキャンダルによる辞任騒動、五月末から6月18日辞任決定に至る間,メデイアの報道はこれ一色に塗りつぶされ、参議院報道は片隅に追いやられた。
6月24日からはイギリスのEU離脱と金融界の狼狽による世界的な株価下落と100円 割れも現出した円高、7月2日にはバングラデッシュ・ダッカでの日本人が巻き込まれた 過激派によるテロ事件、立て続けに起こったこれらの事件報道により改憲論議は完全にメデ イアから消えてしまった。
国民がこのような国家の行く末を左右するような重要な問題の選択をする時には、政府は政争とは切り離し、メデイアと共に懇切丁寧な説明と情報を提供し、判断に必要な充分な 時間を国民に与えることこそが、民主政治最大の弱点である衆愚政治に陥るのを回避する 極めて重要な方策である事をあらためて痛感させられた政治問題であった。