追憶の彼方。

思いつくまま、思い出すままに、日々是好日。

C.Gone With the Wind(カルロス・ゴーン風と共にさりぬ!)…(2)

2020年01月08日 | 政治・経済
C.Gone With the Wind(カルロス・ゴーン風と共にさりぬ!)…(2)

検察・弁護士・メデイア・政治家・役人等々多くの人が、やれやれと肩の荷を降ろして往く年・来る年に思いを馳せていたであろう大晦日、ゴーン本人の「私はいまレバノンにいる」との声明で内外誰もがぶったまげた。羽田空港で東京地検特捜部に逮捕されてから13カ月、2度目の保釈から8カ月、多数の監視カメラをかいくぐり、関空のお粗末な出国審査をすり抜け、プライベートジェットでベイルートに向かって魔法使いのように「風と共に逃げ去った」のである。
前回ブログで、世紀の大脱走と言う「風」と共にゴーンが大きな物を失ったと書いたが、同様に其の風の原因を作った日本の「検察を頂点とする司法制度」も風の吹き戻しの影響をモロに受けて大きな代償を払うことになるかも知れない。
ゴーンは今回の件は「日産とルノーの経営統合を進めようとしている張本人として自分を排除したい日産経営陣が仕組んだクーデター、それに日本の政治家も絡んだ国策捜査」だと述べ、記者会見を開いて実態を明らかにすると述べている。
事実ニューヨーク・タイムズが報じる所によると、ゴーンは逃亡前に自宅でハリウッド映画プロデューサーのJ・レッシャー氏と日本の司法制度を告発する映画の構想について話し合い、著名人の裁判事例なども研究し、「有罪率99%」の日本の司法制度では公正な裁判は期待出来ない、国策操作に関わった日本の政治家の名前も公表し糾弾するつもりだと息巻いている。
この記者会見によりゴーン本人の事件もさることながら、国際基準からかけ離れた旧態依然の日本の刑事司法制度が脚光を浴びる形となり、基本的人権の無視、更には日本の民主主義に懐疑の目が向けられることになるだろう。経済が第3位の「先進国」を自負する日本に対し国際社会の見る目には大きなギャップがある。男女格差が世界114位、報道の自由度72位、国連世界幸福度51位、国連人権理事会等による日本の人権に対する考え方に厳しい国際評価が存在する事に迄目が向けられるかも知れない。
先ずゴーン本人の事件であるが郷原氏始め多くの著名弁護士が指摘しておられる通り、検察が金融商品取引法違反の容疑事実とした「役員報酬の過少申告」の金額は、退任後の支払い予定の「未払い報酬」に過ぎなかったという衝撃の事実が明らかになった時点で犯罪とは為りえないものであった。会社法上、退職金支払いには株主総会決議が必要であり、決議もされず支払もされていない退職金を記載しないのは有価証券報告書虚偽記載・金融商品取引法違反だというのは幾らなんでも暴論であろう。その他の隠蔽された報酬は「海外での自宅の提供」だとか、SAR(株価連動型報酬)だとか、それによって日本で税を免れていたとかは、「検察御用マスコミ」が勝手な憶測(?)で報道を続けていたものに過ぎないことが明らかになった。しかも、勾留満期には逮捕事実の「2015年までの5年間」の有価証券報告書虚偽記載で起訴し、その逮捕事実と同じ「直近3年分」で再逮捕するという、不当な再逮捕により身柄拘束を継続しようとしたが、東京地裁が勾留延長請求の却下を決定した。それに対して検察は延長請求却下の翌日に、当初は「形式犯」だけの立件しか予定していなかった「サウジアラビア・ルートを含む特別背任を新たに立件して再逮捕したのである。しかし検察は、無理に立件したサウジアラビア・ルート、オマーン・ルートについては、日産から中東への送金が事業目的に見合うものであったのかどうかという「特別背任罪の成否の核心」に関する事実について、中東での証拠収集がほとんどできていないまま日産関係者の供述だけで特別背任で2度も逮捕するという、従来の検察の常識に反するやり方を強行し、逮捕後に中東各国への捜査共助要請をして証拠を収集しようと言うお粗末な対応をとったが、協力を得ることは先ず不可能だろう。本人自白が無く、証拠がほとんどないまま起訴している為、証拠開示が出来ず、いまだに初公判の見通しすら立っていない。長期勾留や婦人との接見禁止等の人権無視の手法は被告人を精神的に追い詰め公判の為の自白を取ろうというのは検察の常套手段である。
このような「異常な刑事事件」の虚偽記載容疑については、4月に初公判が開かれる可能性が出てきていたが、中東ルートの特別背任についてはいまだに初公判の見通しすら立っておらず、一体いつ始まりいつ終わるのか、見通せない状況になっていた。こういう状況で、ゴーン氏は、保釈条件として妻との接触を9か月もの間禁止されたまま日本国内に公判対応のためだけに留め置かれ、いつになったら接触禁止が解除されるかもわからないのである。明らかに異常な刑事捜査、長期間の身柄拘束や厳しい保釈条件による人権侵害の問題などを自らの言葉で世の中に訴えようとしても、特別背任のときのように別件で再逮捕される危険があり、記者会見すら開けない。弁護団が予定主張記載書面を公開したりしてゴーン氏の主張を公表しても、日本のマスコミは殆ど報じない。
ゴーンの大脱出の背景にはこの様な「絶望的な状況」があったのである。
2016-11月のブログ日本の民主主義でも触れたが検察を頂点とする日本の司法制度は極めて前近代的、内外からの批判も多い。ゴーンは著名人の裁判事例なども研究し、「有罪率99%」の日本の司法制度では公正な裁判は受けられないと確信したともされ、映画化により世界に不当な扱いを明らかにするなど、徹底的に戦うつもりのようだ。
御用マスコミを使って推定有罪をゴリ押しし、文書の改竄まで行って冤罪さえ恐れない独善的な検察に対する国際社会の風当たりはますます厳しくなる。日本が採用している起訴便宜主義は本来被疑者保護の視点に立って採用されたものであるが、検察はこの起訴・不起訴の裁量権を悪用し安倍政権の森友・加計・桜の会の不祥事件には政権に忖度しダンマリを決め込んでおり、政官始め日本全体のモラル低下に拍車をかけている。
果たしてゴーンの記者会見で何が飛び出すか、検察その他の行政はまともに反論できるのか,当に見ものである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする