世界の異常気象…続編―(2)
世界中で異常気象が猛威をふるっている。日本でも、観測史上最も短い梅雨が明け、6月にも拘わらず所によっては40℃前後の猛暑に襲われた。東京では記録的な真夏日が6月下旬以降延々と続いて居り、その間には35度以上の猛暑日が幾日も継続して居た為、連日熱中症対策が叫ばれる異常事態である。日本だけではなく、欧州やアメリカでも歴史的な高温が記録されるなど、世界でも猛暑に襲われ、未だ過って経験したことのない大洪水や山火事などが頻発、地球温暖化に対する危機感を強めた国連のグテーレス事務総長には「地球沸騰の時代」とまで言わしめている。
地球の平均気温の上昇により海水温度も上昇、その結果海水の蒸発が活発となり、多量の水蒸気が発生し集中豪雨が増える。台風も高い海面水温からエネルギーを補強し、益々強くなる。又今年一月、九州、京都などで大雪、更には八丈島でも冠雪を記録したが、温暖化の中であっても、ひとたび寒波が襲来すると、水蒸気が増えている為、大雪になり易い。冬は豪雪、夏は酷暑と豪雨、観測史上初めてとか10年に一度と言った言葉が飛び交う。この様な「極端化現象」こそ異常気象である。熱帯地域では台風・ハリケーン・サイクロンといった熱帯性低気圧が猛威を振るい、中緯度地域では乾燥化が進行し、高緯度地域では洪水や高潮などの被害が多くなると言った、異常気象の発生頻度が高まっている。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新報告書でも地球温暖化が進むほど熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧等の「極端現象」の頻度や強さが、増加すると指摘している。
2023年初頭より世界各地を襲った異常気象による甚大な被害を拾い集めると、その深刻さが見えて来る。
* 1月、南スーダンは通常12月から2月は1年で最も乾燥する時期であるが、4年連続で歴史的な洪水被害に見舞われ、九州より広い地域に浸水状態が続き、農作物が収穫できず、人口の63%もの人々が食料不足、290万人が飢餓状態に陥っていると報じられている。
* 1月 – 2月、南米チリでは10年以上干ばつが続いており、世界気象機関(WMO)は過去1,000年で最も長い「メガ干ばつ」であるとし、深刻な水資源危機を警告しているが、夏にあたる今年年初に、熱波と強風により、27万ヘクタールもの土地が火災の被害に逢い42人の死者が出た。
* 2月6日から3月15日、アフリカ南東部のマラウィやモザンビーク、マダガスカル、ジンバブエをサイクロンが襲い、1,000人以上が命を落とした。このサイクロンは、史上最も勢力が強く、最も長い期間猛威を振るったサイクロンとして記録を塗り替えた。
* イタリアでは5月、1日半の間に6カ月分に相当する豪雨が降り、20以上の河川が氾濫し、土砂崩れが280個所で発生した。13人が死亡、何千人もの人々が避難を強いられた。洪水の被害を受けたイタリアのエミリア・ロマーニャ州では、36,000人が家を失った。土壌が長期間にわたる乾燥で硬化し、水分を吸収する能力が著しく低下していたのが洪水の原因と報じられている。
* 日本では6月に襲った台風2号と梅雨前線の影響で、和歌山・愛知・静岡など6県に、長時間にわたって大雨を降らせる線状降水帯により、全国で河川の氾濫や土砂崩れが発生し、49名が死傷、被害を受けた家屋は8,000棟を超えた。農産物への被害も深刻で、沖縄だけでも、葉タバコやサトウキビ、野菜などの被害額が7億円に昇った。
* 7月カナダでは制御不可能な大規模森林火災が発生、上旬時点で北海道の面積を上回る900万ヘクタールもの森林が焼け、15万5,000人以上の人々が避難した。森林火災の煙がカナダはもとよりアメリカにも広がり、シカゴは6月、世界最悪レベルの大気汚染に見舞われ、ニューヨークでも大きな影響を受けた。カナダ森林当局によれば、干ばつが大きな要因であるが、夏の間さらに高い気温が続けば、国中で例年以上の森林火災が発生する可能性が高いとのことである。
* 8月8日ハワイ・マウイ島で山火事が発生、9日朝までに、マウイ島西部にある古都ラハイナの大半は瓦礫と化し、死者は114人に昇ったと報じられている。主な要因として、地面の乾燥、ハワイの南西数百kmを通過したハリケーン「ドーラ」による強風、そして放置耕作地となった荒地に燃えやすい低木や草が密集したことが挙げられている。
* 9月11日、北アフリカ・リビア東部の港湾都市デルナを襲った大洪水により、街の3分のⅠが海に消え1万人以上の死者・行方不明者を出したと報じられている。リビアに豪雨をもたらしたのは9月上旬にギリシャ西方のイオニア海で発生し、「ストーム・ダニエル」と名付けられた「メディケーン(地中海ハリケーン)」と呼ばれる台風のような低気圧。ギリシャ中部で24時間に750ミリという平年の1年半分の記録的な雨を降らせ、トルコ、ブルガリアと合わせた3カ国で少なくとも27人の死者を出した。その後、海水温の高い東地中海を南下しながらエネルギーを貯め込み、10日に最大勢力になってリビアに上陸、風速は毎秒20メートル、11日の朝迄に最も多い所で24時間に400ミリを超す雨を降らせた。放置された二つのダムの決壊と、遮るもののない内陸の乾燥した荒れ地に降った雨が、ふだんは水が流れていない枯れ川に集まり、東部デルナなど河口部にある複数の都市で洪水を起こしたとみられている。
日本の状況も一例として取り上げたが、九州から北海道に至る全国各地で線状降水帯によるゲリラ雷雨の被害がなかなか終息の気配が見えない。又残暑は9月一ぱい続くとの長期予報が出て居り、「暑さは彼岸まで」は期待できそうにない。
この様な異常気象の最大の理由は偏西風の蛇行であるが、偏西風は北極の温度と熱帯の温度の差が大きい程まっすぐに流れる性質がある事が明らかになっているが、近年北極の温暖化が著しく、熱帯との温度差が縮小傾向にある為、偏西風の蛇行頻度が多くなっていると指摘されている。
世界の異常気象…続編―(3)
熔ける北極と世界熱波へ
世界中で異常気象が猛威をふるっている。日本でも、観測史上最も短い梅雨が明け、6月にも拘わらず所によっては40℃前後の猛暑に襲われた。東京では記録的な真夏日が6月下旬以降延々と続いて居り、その間には35度以上の猛暑日が幾日も継続して居た為、連日熱中症対策が叫ばれる異常事態である。日本だけではなく、欧州やアメリカでも歴史的な高温が記録されるなど、世界でも猛暑に襲われ、未だ過って経験したことのない大洪水や山火事などが頻発、地球温暖化に対する危機感を強めた国連のグテーレス事務総長には「地球沸騰の時代」とまで言わしめている。
地球の平均気温の上昇により海水温度も上昇、その結果海水の蒸発が活発となり、多量の水蒸気が発生し集中豪雨が増える。台風も高い海面水温からエネルギーを補強し、益々強くなる。又今年一月、九州、京都などで大雪、更には八丈島でも冠雪を記録したが、温暖化の中であっても、ひとたび寒波が襲来すると、水蒸気が増えている為、大雪になり易い。冬は豪雪、夏は酷暑と豪雨、観測史上初めてとか10年に一度と言った言葉が飛び交う。この様な「極端化現象」こそ異常気象である。熱帯地域では台風・ハリケーン・サイクロンといった熱帯性低気圧が猛威を振るい、中緯度地域では乾燥化が進行し、高緯度地域では洪水や高潮などの被害が多くなると言った、異常気象の発生頻度が高まっている。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新報告書でも地球温暖化が進むほど熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧等の「極端現象」の頻度や強さが、増加すると指摘している。
2023年初頭より世界各地を襲った異常気象による甚大な被害を拾い集めると、その深刻さが見えて来る。
* 1月、南スーダンは通常12月から2月は1年で最も乾燥する時期であるが、4年連続で歴史的な洪水被害に見舞われ、九州より広い地域に浸水状態が続き、農作物が収穫できず、人口の63%もの人々が食料不足、290万人が飢餓状態に陥っていると報じられている。
* 1月 – 2月、南米チリでは10年以上干ばつが続いており、世界気象機関(WMO)は過去1,000年で最も長い「メガ干ばつ」であるとし、深刻な水資源危機を警告しているが、夏にあたる今年年初に、熱波と強風により、27万ヘクタールもの土地が火災の被害に逢い42人の死者が出た。
* 2月6日から3月15日、アフリカ南東部のマラウィやモザンビーク、マダガスカル、ジンバブエをサイクロンが襲い、1,000人以上が命を落とした。このサイクロンは、史上最も勢力が強く、最も長い期間猛威を振るったサイクロンとして記録を塗り替えた。
* イタリアでは5月、1日半の間に6カ月分に相当する豪雨が降り、20以上の河川が氾濫し、土砂崩れが280個所で発生した。13人が死亡、何千人もの人々が避難を強いられた。洪水の被害を受けたイタリアのエミリア・ロマーニャ州では、36,000人が家を失った。土壌が長期間にわたる乾燥で硬化し、水分を吸収する能力が著しく低下していたのが洪水の原因と報じられている。
* 日本では6月に襲った台風2号と梅雨前線の影響で、和歌山・愛知・静岡など6県に、長時間にわたって大雨を降らせる線状降水帯により、全国で河川の氾濫や土砂崩れが発生し、49名が死傷、被害を受けた家屋は8,000棟を超えた。農産物への被害も深刻で、沖縄だけでも、葉タバコやサトウキビ、野菜などの被害額が7億円に昇った。
* 7月カナダでは制御不可能な大規模森林火災が発生、上旬時点で北海道の面積を上回る900万ヘクタールもの森林が焼け、15万5,000人以上の人々が避難した。森林火災の煙がカナダはもとよりアメリカにも広がり、シカゴは6月、世界最悪レベルの大気汚染に見舞われ、ニューヨークでも大きな影響を受けた。カナダ森林当局によれば、干ばつが大きな要因であるが、夏の間さらに高い気温が続けば、国中で例年以上の森林火災が発生する可能性が高いとのことである。
* 8月8日ハワイ・マウイ島で山火事が発生、9日朝までに、マウイ島西部にある古都ラハイナの大半は瓦礫と化し、死者は114人に昇ったと報じられている。主な要因として、地面の乾燥、ハワイの南西数百kmを通過したハリケーン「ドーラ」による強風、そして放置耕作地となった荒地に燃えやすい低木や草が密集したことが挙げられている。
* 9月11日、北アフリカ・リビア東部の港湾都市デルナを襲った大洪水により、街の3分のⅠが海に消え1万人以上の死者・行方不明者を出したと報じられている。リビアに豪雨をもたらしたのは9月上旬にギリシャ西方のイオニア海で発生し、「ストーム・ダニエル」と名付けられた「メディケーン(地中海ハリケーン)」と呼ばれる台風のような低気圧。ギリシャ中部で24時間に750ミリという平年の1年半分の記録的な雨を降らせ、トルコ、ブルガリアと合わせた3カ国で少なくとも27人の死者を出した。その後、海水温の高い東地中海を南下しながらエネルギーを貯め込み、10日に最大勢力になってリビアに上陸、風速は毎秒20メートル、11日の朝迄に最も多い所で24時間に400ミリを超す雨を降らせた。放置された二つのダムの決壊と、遮るもののない内陸の乾燥した荒れ地に降った雨が、ふだんは水が流れていない枯れ川に集まり、東部デルナなど河口部にある複数の都市で洪水を起こしたとみられている。
日本の状況も一例として取り上げたが、九州から北海道に至る全国各地で線状降水帯によるゲリラ雷雨の被害がなかなか終息の気配が見えない。又残暑は9月一ぱい続くとの長期予報が出て居り、「暑さは彼岸まで」は期待できそうにない。
この様な異常気象の最大の理由は偏西風の蛇行であるが、偏西風は北極の温度と熱帯の温度の差が大きい程まっすぐに流れる性質がある事が明らかになっているが、近年北極の温暖化が著しく、熱帯との温度差が縮小傾向にある為、偏西風の蛇行頻度が多くなっていると指摘されている。
世界の異常気象…続編―(3)
熔ける北極と世界熱波へ