中国では、果樹の総称といえばモモであり、ヨーロッパではリンゴと言われています。このように、ヨーロッパにおけるリンゴは、果物の代表と考えられることから、17世紀頃のヨーロッパのリンゴがどのような品質のものであったか興味がわきます。
当時のリンゴを知る上で、わが国にもニュートンの家の裏庭に植えられていたリンゴの木の複生樹がありますので、その果実品質を紹介します。
ニュートン(1642~1727)は、リンゴの落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見したことで有名です。このリンゴは「フラワー・オブ・ケント」という品種で、当品種は接ぎ木で増殖され、世界各地に植えられています。日本には昭和39年、英国国立物理学研究所から柴田雄次日本学士院長に苗木が送られ、東京大学付属植物園小石川本園に植えられています。その他、秋田県果樹試験場などにもニュートンのリンゴの木は栽植されています。
秋田県果樹試験場の調査によると、果実重122g程度と小さく、円~長円形、果皮は暗赤色で縞があり、甘味は少なく酸味が強く、果肉が軟らかでボケやすく、さらに、収穫前落果が多く、現在なら経済栽培品種にはなり得ません。余談ですが、「フラワー・オブ・ケント」が落果しにくい品種であれば、ニュートンの万有引力の法則の発見は遅れていたかも知れません。この情報からも、現在の私達がいかに美味しいリンゴを食べていることか・・・幸せではありませんか。
リンゴには多くの神話、伝説があります。『旧約聖書』の、アダムとイブが禁断の木の実を食べてエデンの楽園から追放されたという話は多くの方がご存じでしょう。アダムが禁断の木の実を食べようとした時、神様から声をかけられ、あわてて飲み込もうとして喉にひっかかり、喉仏になったという話から、喉仏のことを英語でAdam's appleといいます。ただ、禁断の木の実がリンゴであったか否かは、明らかではありません。 (果物&健康NEWS )