薩摩おごじょ

薩摩狂句勉強中です。

2015.1月黒柱先生評

2015-01-31 21:48:16 | 日記



3.仏壇(にょうさん)に 向(む)こっ多(う)こない 
独(ひと)い言(ご)っ

 連れ合いに先立たれた人の気持ちがよく伝わって来る作品です。
共感される方も多いと思います。

下五の「ひといごっ」は「独(ひと)い言(ごっ)」で、
「っ」は読み仮名です。愚痴(ぐぜごっ)、
下知(げっ)などの名詞や、全部(ずるっ)、
沢山(ずばっ)などの副詞は「っ」は読み仮名です。
「書(か)っ」「言(ゆ)っ」などの動詞は、
「っ」は送り仮名になります。これは共通語と同じルールです。
かなりのベテランでも間違いが多いようです。
しっかり、区別するように気をつけましょう。
8.安(や)しむんじゃ カメラ宛(あて)ごっ 追出(うだ)せた爺(じ)
 
粗大塵に、年がら年中、家におられたのでは奥方としては、
持て余すことになります。そこで、趣味のカメラを宛がって
亭主を外に追出したわけです。
これで、両方(まんぼ)とめ満足ということでしょう。
「安しむんじゃ」は「安しもんじゃ」とも言います。また、
下五は「爺(じ)を追出(うで)っ」の方が句全体が
すっきりして、落ち着きも良いでしょう。
4.正月(しょがっ)焼酎(じょつ) 飲んだ勢(い)き舞(め)っ 回った目
 
これも、正月の振る舞い酒飲んだ勢いで舞ったので、
目を回しているという状況が分かる面白さが伝わってきます。
前出の句と同じく、句の中に「獅子が目を回している」
ことがもっとはっきり分かるような表現があればもっと
良かったかもしれません。
上五は「正月の焼酎を」という意味の方が中七と
意味が繋がりやすいので「正月(しょがっ)焼酎(じょ)つ」
と「つ」を送り仮名にしたほうがよいでしょう。
例えば、
「正月焼酎(しょがっじょ)つ 飲(ぬ)だ獅子(し)しゃ舞(も)たや、目が回(も)でっ」ではどうでしょうか。

「舞う」という動詞の場合は「舞(も)・舞(も)っ」となり、
「舞(まい)」という名詞の場合は「舞(め)」(神舞(かんめ)、
獅子舞(ししめ)など)が一般的でしょう。
6.新(に)か御幣(しべ)も 獅子と一緒(いっど)き 
門(かど)で舞(め)っ

 新しい御幣と獅子頭の組み合わせが、
正月らしさをかもし出しています。滑稽味はありませんが、
正月風景を巧みに映し出した季節吟です。
「舞(め)っ」については前述の通りです。

7.獅子頭(ししがし)て 負けん頑丈(ごたま)し 
面構(つらがま)え

 これは獅子頭そのものではなく、それに負けないような
「ご(っ)たまし」面構えの男性を詠んだものです。
句としては、獅子頭そのものを詠んでいないきらいがありますので、
素材(兼題)からすこしずれている印象があります。
課題吟ではなく、自由吟であればとても面白い句です。
課題吟の場合は、あくまでも「課題を句の主役」
に据えるという観点を忘れないようにしたいものです。

「つらがまえ」は共通語と同じで、「面構え」です。
「面(つら)」と「顔(つら)」の使い分けについては、
詳しくは「国語辞典」を参照してください。一般的に、
「面(つら)」は「相手をさげすむ気持ちを込めて用いる。
「ばか―」「紳士―」(ネット辞典)、
卑語やののしりとして用いる。「何だそんな面しやがって」
(広辞苑)など良い意味では使われない語のようです。
9.厚(あち)ち祝儀 獅子はま一度(いっど) 舞(め)っ見せっ

 獅子舞に限らず、失礼ながら、お布施の場合も
同じようなことがあるようで、よく狂句の素材になるようです。
誰しも、期待以上のものが手に入るとわかれば、
サービスもしたくなるでしょう。
人間の微妙な心理描写が効を奏しています。

「祝儀」は「はな」と言います。
「ぶ厚(は)ち祝儀(は)ね」がよいでしょう。
「舞(め)っ」は前述の通り「舞(も)っ」。