薩摩おごじょ

薩摩狂句勉強中です。

2月フォト狂句 (地)

2013-02-28 10:10:33 | 日記
(地)
義理(ぎい)張(は)いの 返(かえ)いが大(ふと)か チョコ一個(ひとつ)


原文<義理交際(ぎいはい)の 返いが大(ふと)か チョコ一個(ひとっ)>


      扇香(2月6日掲載分)(チョコレート)

(寸評)
上五を修正しました。なまじ義理チョコを貰ったために、(こんなことを言うと、女性陣からきっと叱(が)られるでしょうが)「余計な」神経を使わなければいけないという私のような「内気(いめ)な」、か弱い男の心理状態が想像されて可笑しくなりました。

それこそ浮世の義理というものには、チョコに限らずいろんな場面で義理の大小(?)に応じて、それぞれに対処しなければなりません。場合によっては家計にも響きかねない義理(ぎい)張(は)いもありますが、それが日常生活の潤滑油の働きもしていると言えなくもありません。

隣に住む人の名前さえ知らない潤いのない都会生活者には到底分からないであろう「人情味」も、世知辛い現代には大切なものに思えてきます。

そんなことを考えると不便な田舎暮らしもまんざらではないと思いなおしたりします。
                       寸評 黒柱先生

2013年1月フォト狂句 人

2013-02-04 20:05:05 | 日記

(人)
三浪目 パワースポッて 神頼(かんだの)ん 
  扇香(1月6日投稿分)(釜蓋神社)   

(寸評)
三浪の受験生の心境がよく表れていて、句としては問題ないと思いますが、フォト狂句としては釜の蓋が詠み込まれていないのが難点でしょうか。
釜蓋神社の様子または釜を頭に乗せた少年の姿がまたは心理状態が句に反映されていれば文句なしだったのですが。釜蓋神社=パワースポットと捉えて一句にされたのでしょう。その点を含んで採らせていただきました。

先ほども述べましたが、写真と句の融合は難しいものだと思います。自分では詠まないくせに、人様の句を批評するのはほんとうに忸怩たる思いです。
ともあれ、三浪ともなれば実力もさることながら神にも頼りたくなる心境でしょう。三浪君の健闘を祈るや切(せつ)です。
 寸評 黒柱先生


※今月の「蛇の足」

今回も言いたい放題、失礼を省みず気付いたことを、順不同で書いてみます。ご質問や疑問点などありましたら是非お聞かせください。
〇課題吟から
1.今月も「っ」抜き言葉が気になりました。「家(え)一杯(いっぺ)並(なら)べ」は最後が「並べっ」となるのが一般的な鹿児島方言ではないかと思います。破調を避けるための「っ」抜きだとしたら、無理に縮めるのは間違いです。

「っ」抜きでも通用することがあるかも知れませんが、ごくまれな例ではないでしょうか。そのような例をご存知の方がおられたらぜひ教えていただきたいと思います。

2.送り仮名について・・・これはなかなか厄介な問題です。かなりのベテランでもうっかり間違うことがあります。共通語の送り仮名と比較しながら考えると良いでしょう。たとえば、「福を貰う」は「福(ふ)く貰(も)ろっ」となります。「違(ちが)う」→「違(ち)ご」。
ちなみに、「間違う」は「間違(まっ)ご」、「間違い」は「間違(まっ)げ」となります。

3.下五の終わり方について・・・結論からいいますと、「下五は名詞止めか動詞(~しっ)や形容詞の用言止めにしたほうが句に締まりがあって良い」と言われています。

今回も見られた「願掛けち」や「ホーホーち」と言った終わり方だと中途半端な感じを与えるというわけです。俳句などのように「余韻を持たせる」表現は使わないようです

4.フクロウ(梟)のことを鹿児島方言では「とっこ」ということは一徹さんが書いておられたとおりです。地方によって言い方が違うかもしれませんが。

5「割(わ)れ鍋(な)べ探(さ)げっ」の「べ」ですが、送りかなにすると「鍋に」という意味になります。「鍋に入れた」なら「鍋(な)べ入れた」でよいのですが、「鍋を探す」は「鍋を探(さ)げっ」となるでしょう。
そうすると字余りになります。また、「べ」を送らずに「鍋探(なべさ)げっ」とするとやはりやや不自然な鹿児島方言になると思います。このままでは中七には使えないことになりますので、ほかの表現を工夫することになります。

たとえば「割れ鍋探(さが)し」と名詞にでもすれば破調は避けられます。また「~が」を省略して「女房(かか)吐(か)えっ」という言い方をされることがありますが、これも同じでしょう。この場合は語順を入れ替えて「吐(かや)す(し)女房(かか)」とすれば5音字に収まることもあります。
  破調を避けるための無理な省略はしないほうが良いと思います。

〇自由吟から

1.「良(よ)か当(あ)たい思(おも)た」は「良い当たりだと思った」という意味ですから「良(よ)か当(あ)たい思(と)もた」と書くことになっています。間違いやすいので注意しましょう。

2.「重(かさ)ね見(み)っ」 これも「っ」抜き言葉になります。「重(かさ)ねっ見(み)っ」とすべきところです。このままでは上五、下五には使えません。別の表現にするか、使うとすれば中七で使うことになります。

3.「滑ち」→「滑(すべ)っち」、「美人(シャン)いちて行(い)た」→
「美人(シャン)に付(ち)て行(い)た」、「ほがない」は「方(が)無(ね)」というように「方」」を使うのが一般的です。

4. 「海(うん)に向(む)こ」は「海に向かって」という意味でしょうから、「海(う)み向(む)こっ」となります。

5「朝飯食(あさめしく)わじ」でも意味はわかりますが、「朝飯(あさめし)も食(か・くゎ)じ」とすると、飛び出していったときの驚いた、または喜んでいる(?)様子がより強調されて、句に躍動感が出てくると思われます。

6.「美味(よか)もんぬ」でも間違いではないと思いますが、「美味」を「よか」と読ませるのは少し無理があるようです。
漢字(文字)と読み(発音)を出来るだけ一致させたほうが、耳で聞いているときにも作者の意図がより伝わりやすいと思います。
もうひとつの理由は、無理な漢字の当て方をして意味を補うのは十七音字で詠むという原則に反している場合があると思われるからです。
たとえば、「新妻」と書いて「かか」は欲張った言い方でしょう。逆に「かか」という音から聞いた人がイメージするのは新妻とは限らないでしょう。「かか」には単純に考えれば「妻」「女房」「母」「姑」などどの「かか」でしょう。「かか」だけで「新妻」と表記するのは、漢字に負ぶさった欲張った言い方ということになります。

同じように、「亡妻」「亡母」を「かか」と読ませるのも無理でしょう。「亡亭主(夫)、亡夫(亡父)」なども同じです。
したがって、ここでも「美味(う)めもんぬ」か「良(よ)かもんぬ」のどちらかにするほうが良いのでと思います。

7.「坊主(ぼし)」という言い方には、やや見下したようなニュアンスを含む場合があるので、そのままでは使わないほうが良いという人もいるようです。誤解を招く恐れのある言い方は避けたほうが良いでしょう。ちなみに「坊主様(ぼっさあ)」は良いとされています。

8.「転(こ)けんごっ」も「こける」という言い方が気になるところです。
これは共通語ですから、出来れば「転倒(はんとく)っ」という鹿児島方言を使いたいところです。ただ、上五や下五には使えません。
    
今月は以上でした。                                      文責 黒柱先生