今日は雨音を聞きながら、わたしが23歳だった年の夏の思い出に浸っている。
その頃わたしは実家で両親と暮らしていた。特に出かける予定のなかったある週末、近所の商店街をうろうろしていたら、小学校時代の同級生と偶然再会した。彼女とは小学校卒業以来だから10年以上も会っていなかった。
わたしは6年生の時その街に引っ越して、彼女と同じクラスになった。特に親しかったわけではなく、同級生の一人という間柄だった。それに、彼女は私立の中高一貫校に進学し、地元の中学に進学したわたしとは接点がなくなった。お互いの家まで歩いて10分ほどの距離だったが、あえて連絡を取ろうとも思わなかった。
ところが、その日彼女はわたしの顔を見るなり嬉しそうに近寄ってきて、とても親しげに話しかけてきたのだ。???となりながらも、わたしも笑顔で応じる。彼女は立ち話もなんだから近くの公園へ行こうと提案し、そこでわたしは彼女の身の上話を聞くことになる。
彼女は、職場の上司と道ならぬ恋をしていた。彼と一緒に撮った写真も見せてくれた。彼がどんなに魅力的な人か、わたしに話してくれるうちに、彼女は涙目になった。そして、こう言った。
「あの人とお日様の下で手をつないで歩きたい。」
ああ、そうだったのか・・・。彼女の切なる願いに、わたしの心も大きく揺さぶられた。
不倫。日陰の恋。人の目を偲び、密会をするしかない関係って、辛いものなんだな。友達と言える間柄ではないわたしにこんな赤裸々な告白をするとは驚いたが、逆に普段接点のないわたしだからこそ、話せることだったのかもしれない。
そして、彼女に、「ねえ、一緒に旅行に行かない?彼のことを忘れて、思い切り夏を楽しみたいの」と誘われた。
その時、何故かわたしは彼女の誘いを断れなかった。旅をするなら一人で、という考え方のわたしだったのに、不思議だ。しかも、仲の良い友達でもない彼女と一緒に?今思い返しても、自分がどうして彼女と旅をすることにしたのか、よく分からない。
その日のうちに2人で旅の計画を立て、7月末にはフェリーに乗って佐渡島へと向かっていた。佐渡島へ行こうと提案したのは彼女。そこに何か深い理由があるのか、わたしはあえて聞かなかった。
海は穏やかでフェリーはほとんど揺れることなく、船酔い知らずの快適な旅だった。わたし達が甲板で海を眺めていると、数人の男性グループに声をかけられた。面白半分の若い男女たちのやり取りだったが、彼女は「新しい恋をしちゃおうかしら」といたずらっぽく笑った。
佐渡島に着いてわたしが一番驚いたのは、日本海の美しさだった。
それまでわたしが行ったことのある日本の海といえば太平洋ばかりで、日本海というとなんとなく暗くて冷たい、というイメージがあった。それが、まったくの思い違いだったことを知る。目の前には美しく透き通った青い海が広がっているのだ。もうそれだけで、わたしは佐渡島が大好きになった。
週末を利用した1泊2日の旅だったと思う。旅の間、一度も雨に降られず、2人で喧嘩をすることなく、気疲れすることもなく、いくつかの観光名所を周って有意義な時間を過ごせた。
旅先で友情が深まったかといえばそうでもなく、旅が終わって日常に戻った後、また彼女とわたしは音信不通になった。だから、その後、彼女の日陰の恋がどうなったか、知る由もなかった。
でも、佐渡島への旅が彼女の心に素敵な思い出を刻んだであろうと、信じたい。旅の間中、彼女は常に笑顔でいたから。心から楽しんでいる様に見えたから。新しい恋を見つけたのか、それとも上司と太陽の下を堂々と手をつないで歩ける関係になれたのか。どちらにしても彼女には好きな人と幸せになってほしいな、とわたしは思った。たぶんそれはその当時、わたし自身が幸せな恋愛をしていたからかもしれない。
彼女と2人で佐渡島を旅したことは、夢のような現実のような不思議な思い出として、心の引き出しの奥にしまってある。
今晩は=(^.^)=
袖ふれあうくらいのご縁でも、何故か?
旅行!
私もあります。
断れず😅
でも大抵、浅いご縁で終わりますね🔚
不思議ですが笑
私も1人で旅、好きなんです〜
気疲れしなくていいし!
佐渡島
好きです〜
20年くらい前に?イベントで行きました!
お店、出店のために
テント持って!港でお湯沸かし、コーヒー飲んでいると、地元の方に話しかけられ一緒にコーヒー飲んだり、ビール飲みながら品物売ったりして楽しかったなあ〜
自然が豊かで良いところですね❣️
また行ってみたいなあ(*^^*)
ひいこ
知人程度の人との旅行、ひいこさんもあるのですね~。
なんか不思議ですよね、成り行きというのか。
なんでわたしと?って感じで。
でも、彼女に誘われなかったら佐渡島へ行ってみようと
思わなかったので、結果オーライかな。
佐渡は良いですね。海がきれいだし、自然豊かなのどかなところで。
出店は、インド雑貨かな?なんか楽しそう。
わたしもひいこさんのお店のぞいてみたかったわ~。
コメントありがとうございました♪
>旅の間中、彼女は常に笑顔でいたから~
空間だけでなく心理的にも、佐渡で解き放たれたのでしょうね。storytellerさんにとっても「夢のような現実のような不思議な思い出」、というのも分かる気がします。彼女は、そのあときっと幸福になっていますよ。
私にとっての佐渡の思い出。内陸をぽとぽと歩いていたら、おじさんが私を見て「どこから来たの?ウチに寄らないかい?」。基本的に一人旅が好きでそれに馴れている私は、断ってしまいました。今から思うと佐渡の方がせっかく声をかけてくれたのにと悔やみます。佐渡に渡っても、それまでの生き方から自由になれない私でしたね(笑)。
一人旅がお好きとのこと、わたしも同じです。
若い頃は国内外、ほとんど一人で旅してまわっていました。
バックパッカー全盛時代でもありましたし 笑。
だから、この佐渡への旅は数少ない二人旅の一つでした。
佐渡が独立した感じの島、というのもよくわかります。
新潟県の佐渡島、というより、佐渡島ですね。
わたしの思い違いで無ければ、旅人さんは男性ですよね?
もし、声をかけてくださったのが「おじさん」ではなく
若い女性だったら、違った展開になったのでしょうか。気になります 笑。
いつもユーモアあふれる旅の記事、楽しく読ませていただいてます。
これからも楽しみにしています!
そりゃあ、もちろん男ですから・・
storytellerさん、話をそらさないでください。問題はそういうことではないでしょ(笑)。
つい男女の話に方向転換してしまう悪い癖が出てしまいました 苦笑。
一人旅をしていると、団体旅行では出来ない現地の人との出会いがありますよね。
そういうのも貴重な経験だな~と感じています。
懐かしいなあ。また一人旅がしたくなりました♪
コメントありがとうございました♪