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新月のサソリ

空想・幻想・詩・たまにリアル。
孤独に沈みたい。光に癒やされたい。
ふと浮かぶ思い。そんな色々。
(主・ひつじ)

2024-07-08 07:48:00 | Short Short
背中に猫が乗った。その重みで目が覚めた。
目が覚める前、そろりとなにかが腰に触れるのを感じていた。
はじめての予感に、体を動かさないようにと緊張した。
少しばかり爪を立て背中に登りきると、ぐっと力を込めた四肢でバランスをとり、よさ気な足場を決めるとすぐにそれは背中一面の重みとなった。
ぐるぐると小さく喉を鳴らすのを背骨で聞いた。
いくぶん重いがうれしくて動けなかった。

季節が巡りある夏の午後、彼女は珍しく物言いたげにしばらくぼくをじっと見つめたあと、いつもの窓から出かけて行き、それきり戻らなかった。

ねえ、あのときの温もりが今でも時々ぼくをなぐさめてくれているのを、君は知っているのかなぁ。


コメント
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