我が家の前の坂道を散歩コースにしている,“おじいさん”がいます。
“おじいさん”の散歩は毎日ではありません。
「坂がえらいのによう歩いてじゃなぁー」(坂がしんどいのによく歩いて来られますね)
会う度に私はいいます。
“おじいさん”の家は川沿いに有ると,以前教えてくれました。
ここまで上がるのには,かなり急な坂を登らなければいけません。
返ってくる答えはいつも決まっています。
「ちょうしのええときにゃーなぁー」(体調がいい時には)
「たまにゃー,えらいこともせにゃーなぁー」(たまにはしんどい事もしなければ)
「あるきょうらにゃー,動けんようになるけーなぁー」(歩いてないと歩けなくなる)
“おじいさん”の名前も年齢も知りません。
私が見ておじいさんですから,たぶん80歳前後だと思います。
脚立に登って,玄関先の松を剪定しています。
少し高いところにいるだけですが,わが家に通じる坂道がよく見通せます。
“おじいさん”が坂を登って来ているのに気づきます。
今日の私は“職人”ですから,わき目も振らず仕事に集中しなければいけません。
“おじいさん”に気づかないふりをして,声をかけてくれるのを待ちます。
ですが,“おじいさん”は坂道を歩くのに精一杯のようです。
ずっと下を向いて歩きます。
いっこうに高いところで,“職人”をしている私に気がつく様子が有りません。
高齢者になっても,気持ちは子どもと同じです。
“職人で頑張ってる私を見て,褒めて”です。
このままでは,気づかずに通り過ぎるかもしれません。
そうなると,何となく面白くありません。
一計を案じます。
剪定した松の小枝を,“おじいさん”の歩く前にワザと落とします。
“おじいさん”はびっくりした様に上を見上げます。
「やりょうてじゃなぁー」(やっていますね)
やっと気がついてくれました。
「下手に摘んでも来年5月に芽が出りゃあー,誰が摘んでも同じじゃけぇー」
松を剪定する時にいつも“謙虚”に言うセリフです。
“おじいさん”にも言います。
「そうよなぁー,下手でもええんでぇー摘んどきさえすりゃー,ええんじゃけぇー」
(そうです,下手でも剪定さえしておけばいいんです)
期待した答えと違う言葉が返ってきましたが,仕方ありません。
「落ちて怪我したもんもおるけえなぁー,気を付けにゃーいけんで」
(落ちて怪我した人もいるから,気を付けて)
そう言って“おじいさん”は,又坂道を登って行きました。
やれこら やれこら
“おじいさん”の散歩は毎日ではありません。
「坂がえらいのによう歩いてじゃなぁー」(坂がしんどいのによく歩いて来られますね)
会う度に私はいいます。
“おじいさん”の家は川沿いに有ると,以前教えてくれました。
ここまで上がるのには,かなり急な坂を登らなければいけません。
返ってくる答えはいつも決まっています。
「ちょうしのええときにゃーなぁー」(体調がいい時には)
「たまにゃー,えらいこともせにゃーなぁー」(たまにはしんどい事もしなければ)
「あるきょうらにゃー,動けんようになるけーなぁー」(歩いてないと歩けなくなる)
“おじいさん”の名前も年齢も知りません。
私が見ておじいさんですから,たぶん80歳前後だと思います。
脚立に登って,玄関先の松を剪定しています。
少し高いところにいるだけですが,わが家に通じる坂道がよく見通せます。
“おじいさん”が坂を登って来ているのに気づきます。
今日の私は“職人”ですから,わき目も振らず仕事に集中しなければいけません。
“おじいさん”に気づかないふりをして,声をかけてくれるのを待ちます。
ですが,“おじいさん”は坂道を歩くのに精一杯のようです。
ずっと下を向いて歩きます。
いっこうに高いところで,“職人”をしている私に気がつく様子が有りません。
高齢者になっても,気持ちは子どもと同じです。
“職人で頑張ってる私を見て,褒めて”です。
このままでは,気づかずに通り過ぎるかもしれません。
そうなると,何となく面白くありません。
一計を案じます。
剪定した松の小枝を,“おじいさん”の歩く前にワザと落とします。
“おじいさん”はびっくりした様に上を見上げます。
「やりょうてじゃなぁー」(やっていますね)
やっと気がついてくれました。
「下手に摘んでも来年5月に芽が出りゃあー,誰が摘んでも同じじゃけぇー」
松を剪定する時にいつも“謙虚”に言うセリフです。
“おじいさん”にも言います。
「そうよなぁー,下手でもええんでぇー摘んどきさえすりゃー,ええんじゃけぇー」
(そうです,下手でも剪定さえしておけばいいんです)
期待した答えと違う言葉が返ってきましたが,仕方ありません。
「落ちて怪我したもんもおるけえなぁー,気を付けにゃーいけんで」
(落ちて怪我した人もいるから,気を付けて)
そう言って“おじいさん”は,又坂道を登って行きました。
やれこら やれこら