「わああああああ!」さとみは悲鳴とも怒声ともつかない声を上げた。「ポシェット! ……ポシェット!」
引きちぎった肩ひもを持ち上げ、ポシェットをつついていた楓が驚いたように振り返る。
「何だい、うるさいお嬢ちゃんだねえ!」
楓がいら立った声を出しソファから降りた。そして、ポシェットの肩ひもを持ってぐるぐると振り回しながらさとみの方へ歩く。
「文句があるんなら、さっさと身体にお戻りよ!」
さとみは立ち上がった。頬をぷっと膨らませている。
「嬢様! お待ちを!」
「さとみ殿! 落ち着かれよ!」
豆蔵とみつが声をかけたが間に合わなかった。さとみの霊体がさとみの身体に飛び込んだ。
さとみは跳ね起きるようにソファから降り、楓の手からポシェットを奪い返した。
「な、何しやがんだ!」楓は振り返る。突然の出来事に楓はうろたえた。しかし、急に凶悪な笑みを浮かべる。「……おやおや、お嬢ちゃん、あんた自分の置かれた立場を分かっているのかい?」
「何がよ!」
「豆蔵たちの援護は期待できなくなったってこったよ。あいつら、生身には手も足も出ないから……」
「それが何よ!」
さとみは、はだけたブラウスの前を隠すように、ポシェットを胸元に抱きしめている。目だけはきっと楓をにらんでいる。
「何だい、その面ぁ! 文句があるんならお言いよ!」
「わたしの、おばあちゃんの、ポシェット……」さとみは怒りで声が震えている。「よくも、壊してくれたわね……」
「何だい、お嬢ちゃんは、ばあちゃんっ子だったのかい?」楓がからかうように笑う。「そうだねえ、豆蔵たちは助けになんないから、おばあちゃんにでも助けてもらうといいんじゃない?」
言い終わると楓の顔から笑みが消えた。豆蔵とみつが手を大きく動かして外へ出るようにとさとみを促している。
「さあ、お遊びはおしまいだ。約束通り、お前をギッタンギッタンにしてやるよ! お前が死んじまったって、罪はこの身体の娘が負うんだ。わたしゃ、さっさと逃げるだけさ!」
「そんな事したって、豆蔵やみつさんが容赦しないわ!」さとみは一歩も引かずに言い返す。「わたしだって、霊体になったら、あなたを許さないわ!」
「おお怖い……」楓がわざとらしく身を震わせる。そして、残忍な笑みを浮かべる。「でもね、この楓姐さんはお前らとは格が違うんだよ! 返り討ちにされるのがオチさ! 試してみるかい?」
楓はさとみに向かって腰を低くして身構えた。
さとみはポシェットをさらに強く抱きしめた。
つづく
引きちぎった肩ひもを持ち上げ、ポシェットをつついていた楓が驚いたように振り返る。
「何だい、うるさいお嬢ちゃんだねえ!」
楓がいら立った声を出しソファから降りた。そして、ポシェットの肩ひもを持ってぐるぐると振り回しながらさとみの方へ歩く。
「文句があるんなら、さっさと身体にお戻りよ!」
さとみは立ち上がった。頬をぷっと膨らませている。
「嬢様! お待ちを!」
「さとみ殿! 落ち着かれよ!」
豆蔵とみつが声をかけたが間に合わなかった。さとみの霊体がさとみの身体に飛び込んだ。
さとみは跳ね起きるようにソファから降り、楓の手からポシェットを奪い返した。
「な、何しやがんだ!」楓は振り返る。突然の出来事に楓はうろたえた。しかし、急に凶悪な笑みを浮かべる。「……おやおや、お嬢ちゃん、あんた自分の置かれた立場を分かっているのかい?」
「何がよ!」
「豆蔵たちの援護は期待できなくなったってこったよ。あいつら、生身には手も足も出ないから……」
「それが何よ!」
さとみは、はだけたブラウスの前を隠すように、ポシェットを胸元に抱きしめている。目だけはきっと楓をにらんでいる。
「何だい、その面ぁ! 文句があるんならお言いよ!」
「わたしの、おばあちゃんの、ポシェット……」さとみは怒りで声が震えている。「よくも、壊してくれたわね……」
「何だい、お嬢ちゃんは、ばあちゃんっ子だったのかい?」楓がからかうように笑う。「そうだねえ、豆蔵たちは助けになんないから、おばあちゃんにでも助けてもらうといいんじゃない?」
言い終わると楓の顔から笑みが消えた。豆蔵とみつが手を大きく動かして外へ出るようにとさとみを促している。
「さあ、お遊びはおしまいだ。約束通り、お前をギッタンギッタンにしてやるよ! お前が死んじまったって、罪はこの身体の娘が負うんだ。わたしゃ、さっさと逃げるだけさ!」
「そんな事したって、豆蔵やみつさんが容赦しないわ!」さとみは一歩も引かずに言い返す。「わたしだって、霊体になったら、あなたを許さないわ!」
「おお怖い……」楓がわざとらしく身を震わせる。そして、残忍な笑みを浮かべる。「でもね、この楓姐さんはお前らとは格が違うんだよ! 返り討ちにされるのがオチさ! 試してみるかい?」
楓はさとみに向かって腰を低くして身構えた。
さとみはポシェットをさらに強く抱きしめた。
つづく
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