ミディアンとアマレクまた東の者たちすべてが一つに集まり、ヨルダン川を渡って来てエズレルの低地平原に宿営を張った。
そこはイッサカルの都市エズレルから南東方向に19キロメートル近く伸びており、幅は3キロメートルほどあり、ヨルダン渓谷の西の端にあるベト・シェアンに至る低地平原だ。
「いよいよ、このカナンの地が征服される」
「奇襲攻撃ではなく正面攻撃を仕掛ける気だ」
「神は我々をお見捨てになったのだ」
大陣営を見聞きしたイスラエルの民は口々に落胆の言葉を漏らしていた。
ギデオンもこの話を耳にした。ここオフラからエズレルまでは5キロメートルほどだ。
今すぐにでも飛び込んで行って討ち倒してやりたい! 真の神はオレにミディアンを倒すように命じられたんだ! オレが負けるわけがない!
「ギデオンよ。今こそ救い人として立ち上がる時だ」
声が聞こえた。聞き覚えがあった。
……神の声だ!
そう思った時、全身に力が漲った。からだが倍くらい大きくなったように感じた。今まで以上に神が身近にいると確信できた。……神の霊がギデオンを包んだ瞬間だった。
ギデオンは角笛を吹き鳴らした。オラフのアビ・エゼル人が誘われるように集まった。
「真の神は言われた!」ギデオンが集まった者たちに言った。「イスラエルを救う、と!」
歓声が上がる。
「マナセの全土に使者を送るのだ! アシェルとゼブルンとナフタリにも送れ! イスラエルを救うと約束された真の神と共に戦えと伝えるのだ!」
使者の伝える神に言葉に応じた民が続々とギデオンのもとに向かった。
ギデオンのもとに戦さ支度をした無数とも思える民が集まった。
その前でギデオンは天に向かって言った。
「神よ、あなたが約束なさった通り、わたしによってイスラエルを救われるのでしたら、わたしは一頭分の羊毛を脱穀場にさらしておきます。もし露がこの毛の上にだけ降りて、地がすべて乾いているなら、あなたが約束通りわたしによってイスラエルをお救いになると言う事を、わたしは知るのです」
神はきっと、こんな他愛もない願いでも聞き届けて下さる! オレが選ばれた者だからだ! ギデオンはそう思った。
彼は次の日早く起きて毛に触った。濡れていた。絞ってみた。大きな宴用の鉢を水で満たすほどの露をその毛から絞り取ることができた。民から驚嘆の声が漏れる。
ギデオンはその羊毛を持ち、天を見上げた。
「わたしに対して怒り立たれることはありませんように。あと一度だけお話しさせてください。どうか、もう一度だけこの毛で試させてください。どうかこの毛だけを乾かしておき,地の全面に露を生じさせて下さい」
子供じみたことを言ったけど、神は聞き届けて下さるさ。聞き届けてくれたなら、オレと神との間に親子の情みたいなものが芽生えたってことかな。我が神にして偉大な父ってわけだ! ギデオンはそう思った。
神はその夜その通りに行なわれた。その毛だけが乾いており、地の全面に露が生じた。
翌朝、ギデオンは乾いてる羊毛、露に濡れた地を直に触り、確かめた。
「我が偉大な父よ!」
ギデオンは天に向かって叫んだ。民からどっと歓声が上がった。
ギデオンとその民は、その日早く起きて,ハロドの井戸のところに陣営を敷いた。そしてミディアンの陣営は彼の北、低地平原の中のモレの丘にあった。
ハロドの井戸と呼ばれているが、敵陣のあるエズレルの近くにあるギルボア山の北西の山脚にわき上がる泉の事だ。
幅5メートル弱、深さ60センチメートルほどの流れとなって噴出している。
この流れの川床は深く、土手の地盤が緩いため、攻め込みにくい。そして、他には左にも右にも後方にも流水がなかった。泉を制する者が優位となった。しかし、その流れが優位をもたらす半面、その水を用いる際には注意が必要だった。なぜなら、敵の前で水を飲むことになるからだ。その水路の目印となる葦やかん木は敵の伏兵の隠れ場所ともなったからだった。
「ギデオンよ……」
神の声がした。ギデオンは片膝を付いて頭を垂れた。
「あなたと共にいる民は、わたしがミディアンをその手に与えるには多すぎる。イスラエルはわたしに向かって自慢し『自分のこの手がわたしを救ったのだ』と言うかもしれない。それで今、民の聞くところで呼ばわり『だれか恐れ慄いている者がいるか。その者は引き下がれ』と言いなさい」
それでギデオンは彼らを試してみた。それによって民のうち二万二千人が退き、一万人が残った。
「ギデオンよ……」
神の声がした。ギデオンは立ったままで頭を垂れた。
「民はまだ多すぎる。彼らを水のところに下らせよ。あなたのためにわたしがそこで彼らを試すためである。そして,だれでも『これはあなたと共に行く』とわたしが言う者、その者はあなたと共に行くが、すべて『これはあなたと共には行かない』とわたしが言う者、その者は一緒に行かない者である」
それで彼は民を水の所、泉から流れる川の岸へ下らせた。
「ギデオンよ……」
神の声がした。ギデオンは天を見上げた。
「全て犬が舐めるように舌で水を舐める者、あなたはその者を別にする。また、全て屈み込んで膝を付いて飲む者を別にする」
ギデオンが見ていると、手を口に当てて舐めた者の数は三百人となった。残りの全ての民は屈み込んで膝を付いて水を飲んだ。
「舐めるようにした三百人の者によってわたしはあなた方を救い、ミディアンをあなたの手に与える。他のすべての民は、これをそれぞれ自分の所に行かせよ」
対岸の葦やかん木は敵の伏兵の隠れ場所に打って付けだ。そんな中で水を飲むのだから、注意を怠る者は命を失うだろう。神は民の無駄死にを避けておられる。しかし、三百人とはな。ま、その方が、神と共に戦うって気分が高まるってもんだぜ。ギデオンはそう思った。
ギデオンはその三百人を引き留め、残りの者たちから兵糧と角笛を取り、帰らせた。
一方ミディアンの陣営は、低地平原の中、ちょうど彼の下方にあった。
(士師記 6章33節から7章8節までをご参照ください)
そこはイッサカルの都市エズレルから南東方向に19キロメートル近く伸びており、幅は3キロメートルほどあり、ヨルダン渓谷の西の端にあるベト・シェアンに至る低地平原だ。
「いよいよ、このカナンの地が征服される」
「奇襲攻撃ではなく正面攻撃を仕掛ける気だ」
「神は我々をお見捨てになったのだ」
大陣営を見聞きしたイスラエルの民は口々に落胆の言葉を漏らしていた。
ギデオンもこの話を耳にした。ここオフラからエズレルまでは5キロメートルほどだ。
今すぐにでも飛び込んで行って討ち倒してやりたい! 真の神はオレにミディアンを倒すように命じられたんだ! オレが負けるわけがない!
「ギデオンよ。今こそ救い人として立ち上がる時だ」
声が聞こえた。聞き覚えがあった。
……神の声だ!
そう思った時、全身に力が漲った。からだが倍くらい大きくなったように感じた。今まで以上に神が身近にいると確信できた。……神の霊がギデオンを包んだ瞬間だった。
ギデオンは角笛を吹き鳴らした。オラフのアビ・エゼル人が誘われるように集まった。
「真の神は言われた!」ギデオンが集まった者たちに言った。「イスラエルを救う、と!」
歓声が上がる。
「マナセの全土に使者を送るのだ! アシェルとゼブルンとナフタリにも送れ! イスラエルを救うと約束された真の神と共に戦えと伝えるのだ!」
使者の伝える神に言葉に応じた民が続々とギデオンのもとに向かった。
ギデオンのもとに戦さ支度をした無数とも思える民が集まった。
その前でギデオンは天に向かって言った。
「神よ、あなたが約束なさった通り、わたしによってイスラエルを救われるのでしたら、わたしは一頭分の羊毛を脱穀場にさらしておきます。もし露がこの毛の上にだけ降りて、地がすべて乾いているなら、あなたが約束通りわたしによってイスラエルをお救いになると言う事を、わたしは知るのです」
神はきっと、こんな他愛もない願いでも聞き届けて下さる! オレが選ばれた者だからだ! ギデオンはそう思った。
彼は次の日早く起きて毛に触った。濡れていた。絞ってみた。大きな宴用の鉢を水で満たすほどの露をその毛から絞り取ることができた。民から驚嘆の声が漏れる。
ギデオンはその羊毛を持ち、天を見上げた。
「わたしに対して怒り立たれることはありませんように。あと一度だけお話しさせてください。どうか、もう一度だけこの毛で試させてください。どうかこの毛だけを乾かしておき,地の全面に露を生じさせて下さい」
子供じみたことを言ったけど、神は聞き届けて下さるさ。聞き届けてくれたなら、オレと神との間に親子の情みたいなものが芽生えたってことかな。我が神にして偉大な父ってわけだ! ギデオンはそう思った。
神はその夜その通りに行なわれた。その毛だけが乾いており、地の全面に露が生じた。
翌朝、ギデオンは乾いてる羊毛、露に濡れた地を直に触り、確かめた。
「我が偉大な父よ!」
ギデオンは天に向かって叫んだ。民からどっと歓声が上がった。
ギデオンとその民は、その日早く起きて,ハロドの井戸のところに陣営を敷いた。そしてミディアンの陣営は彼の北、低地平原の中のモレの丘にあった。
ハロドの井戸と呼ばれているが、敵陣のあるエズレルの近くにあるギルボア山の北西の山脚にわき上がる泉の事だ。
幅5メートル弱、深さ60センチメートルほどの流れとなって噴出している。
この流れの川床は深く、土手の地盤が緩いため、攻め込みにくい。そして、他には左にも右にも後方にも流水がなかった。泉を制する者が優位となった。しかし、その流れが優位をもたらす半面、その水を用いる際には注意が必要だった。なぜなら、敵の前で水を飲むことになるからだ。その水路の目印となる葦やかん木は敵の伏兵の隠れ場所ともなったからだった。
「ギデオンよ……」
神の声がした。ギデオンは片膝を付いて頭を垂れた。
「あなたと共にいる民は、わたしがミディアンをその手に与えるには多すぎる。イスラエルはわたしに向かって自慢し『自分のこの手がわたしを救ったのだ』と言うかもしれない。それで今、民の聞くところで呼ばわり『だれか恐れ慄いている者がいるか。その者は引き下がれ』と言いなさい」
それでギデオンは彼らを試してみた。それによって民のうち二万二千人が退き、一万人が残った。
「ギデオンよ……」
神の声がした。ギデオンは立ったままで頭を垂れた。
「民はまだ多すぎる。彼らを水のところに下らせよ。あなたのためにわたしがそこで彼らを試すためである。そして,だれでも『これはあなたと共に行く』とわたしが言う者、その者はあなたと共に行くが、すべて『これはあなたと共には行かない』とわたしが言う者、その者は一緒に行かない者である」
それで彼は民を水の所、泉から流れる川の岸へ下らせた。
「ギデオンよ……」
神の声がした。ギデオンは天を見上げた。
「全て犬が舐めるように舌で水を舐める者、あなたはその者を別にする。また、全て屈み込んで膝を付いて飲む者を別にする」
ギデオンが見ていると、手を口に当てて舐めた者の数は三百人となった。残りの全ての民は屈み込んで膝を付いて水を飲んだ。
「舐めるようにした三百人の者によってわたしはあなた方を救い、ミディアンをあなたの手に与える。他のすべての民は、これをそれぞれ自分の所に行かせよ」
対岸の葦やかん木は敵の伏兵の隠れ場所に打って付けだ。そんな中で水を飲むのだから、注意を怠る者は命を失うだろう。神は民の無駄死にを避けておられる。しかし、三百人とはな。ま、その方が、神と共に戦うって気分が高まるってもんだぜ。ギデオンはそう思った。
ギデオンはその三百人を引き留め、残りの者たちから兵糧と角笛を取り、帰らせた。
一方ミディアンの陣営は、低地平原の中、ちょうど彼の下方にあった。
(士師記 6章33節から7章8節までをご参照ください)
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