「あなたが盗んだのね!」ジェシルは叫び、手にした女神像を振り回す。「アルミーシュ!」
アルミーシュは、ベアトレイトスの入って行った部屋から、全く違う人物が出て来たので、全裸のままで呆然と立ち尽くしてた。
「わたしは、宇宙パトロール捜査官のジェシル・アン!」ジェシルはオビに挟んであった身分章を取り出した。「メルーバ教団から盗まれた女神像は、アルミーシュ、あなたが持って来たものだったわ!」
「……あの、ベアトレイトスは? ベアトレイトスは何処ですか!」
アルミーシュはジェシルの話を全く聞いていないようだ。ジェシルの肩越しに、ベアトレイトスが入りジェシルが出て来た部屋を、開け放たれた扉から覗く。デスクに二体の像が置かれているのが見えるだけだった。
「お願い…… ベアトレイトスに会わせて……」
アルミーシュは、両手で顔を覆い、泣きながら座りこんだ。
「すっかり、ベアトレイトスにイカれちまったようね」ジェシルはにやりと笑う。「さあ、顔を上げて、良く見て!」
アルミーシュは、ジェシルの言うままに、座ったままで泣き腫らした顔を上げる。
ジェシルは、女神像と身分章を傍のタークック材のサイドテーブルに置いた。それから、アルミーシュを見つめたままオビを解き、宙で二三度振り回してから手を放した。オビは、生き物のように身を捩りながら高く舞い上がると、急に命を失ったかのように床に落下した。オビの無くなったフリソデは、前が大きく開いた。ジェシルが両肩を交互に揺すると、フリソデは肩から滑り、床に落ちた。
「おお、おお、おお……」アルミーシュは口元を両手で覆う。目はジェシルに釘付けになっている。「あなた、まさか……」
ジェシルは胸と腰回りだけを白い下着で包んでいた。
「そうよ!」
そう言うと、ジェシルのからだが膨れ上がり、髪の毛も短くなり、顔つきも変わって行く。伸縮する素材でできているのだろう、白い下着も体型に合わせて伸びて行く。しばらくすると、アルミーシュを迎えた時のベアトレイトスが、そこに居た。
「わたしは、どんな体型にも、顔にも変化できるのよ。あんたの愛しいベアトレイトスちゃんはね、わたしの創作だったのよ」
ジェシルは腕を曲げて、二の腕に大きな力瘤を作って見せた。
「やめて! 嘘よ!」アルミーシュは叫びながら、目を閉じ、耳を両手で塞ぐ。「ベアトレイトスはそんな……子供染みた声じゃないわ! もっと低くて太いのよ!」
「貴様! 信じないと言うのか! わたしに逆らうつもりなのか!」ジェシルは、アルミーシュの知っているベアトレイトスの声で言った。「逮捕する」
「あああああ……」アルミーシュは床に突っ伏して泣き出した。「ベアトレイトス、ベアトレイトス、ベアトレイトス……」
ジェシルは床からフリソデを拾い上げると、震えるアルミーシュの滑らかな白い背中に、放り投げるようにして掛けてやった。
つづく
アルミーシュは、ベアトレイトスの入って行った部屋から、全く違う人物が出て来たので、全裸のままで呆然と立ち尽くしてた。
「わたしは、宇宙パトロール捜査官のジェシル・アン!」ジェシルはオビに挟んであった身分章を取り出した。「メルーバ教団から盗まれた女神像は、アルミーシュ、あなたが持って来たものだったわ!」
「……あの、ベアトレイトスは? ベアトレイトスは何処ですか!」
アルミーシュはジェシルの話を全く聞いていないようだ。ジェシルの肩越しに、ベアトレイトスが入りジェシルが出て来た部屋を、開け放たれた扉から覗く。デスクに二体の像が置かれているのが見えるだけだった。
「お願い…… ベアトレイトスに会わせて……」
アルミーシュは、両手で顔を覆い、泣きながら座りこんだ。
「すっかり、ベアトレイトスにイカれちまったようね」ジェシルはにやりと笑う。「さあ、顔を上げて、良く見て!」
アルミーシュは、ジェシルの言うままに、座ったままで泣き腫らした顔を上げる。
ジェシルは、女神像と身分章を傍のタークック材のサイドテーブルに置いた。それから、アルミーシュを見つめたままオビを解き、宙で二三度振り回してから手を放した。オビは、生き物のように身を捩りながら高く舞い上がると、急に命を失ったかのように床に落下した。オビの無くなったフリソデは、前が大きく開いた。ジェシルが両肩を交互に揺すると、フリソデは肩から滑り、床に落ちた。
「おお、おお、おお……」アルミーシュは口元を両手で覆う。目はジェシルに釘付けになっている。「あなた、まさか……」
ジェシルは胸と腰回りだけを白い下着で包んでいた。
「そうよ!」
そう言うと、ジェシルのからだが膨れ上がり、髪の毛も短くなり、顔つきも変わって行く。伸縮する素材でできているのだろう、白い下着も体型に合わせて伸びて行く。しばらくすると、アルミーシュを迎えた時のベアトレイトスが、そこに居た。
「わたしは、どんな体型にも、顔にも変化できるのよ。あんたの愛しいベアトレイトスちゃんはね、わたしの創作だったのよ」
ジェシルは腕を曲げて、二の腕に大きな力瘤を作って見せた。
「やめて! 嘘よ!」アルミーシュは叫びながら、目を閉じ、耳を両手で塞ぐ。「ベアトレイトスはそんな……子供染みた声じゃないわ! もっと低くて太いのよ!」
「貴様! 信じないと言うのか! わたしに逆らうつもりなのか!」ジェシルは、アルミーシュの知っているベアトレイトスの声で言った。「逮捕する」
「あああああ……」アルミーシュは床に突っ伏して泣き出した。「ベアトレイトス、ベアトレイトス、ベアトレイトス……」
ジェシルは床からフリソデを拾い上げると、震えるアルミーシュの滑らかな白い背中に、放り投げるようにして掛けてやった。
つづく
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