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日本一わかりやすい国立大学法人・独立行政法人の会計の話

2016-05-31 | 公会計

 公会計の仕事をしていると、よく公的機関の会計がわからないと言われます。特に、国立大学法人・独立行政法人の会計では、「運営費交付金」の会計がわからないようです。

 「運営費交付金」は、国が各国立大学法人・独立行政法人交付している一種の補助金です。各組織は、主にこの「運営費交付金」をもとに業務を運営しています。では、早速「運営費交付金」の会計処理について説明しましょう。

 一般的に、民間企業でも公的機関でも、その組織の現金預金(キャッシュ)が増える理由は、おおざっぱに言って2つ考えられます。金融機関等からの借入れによって現金預金(キャッシュ)が増える場合、売上によって現金預金(キャッシュ)が増える場合です。複式簿記の場合、常に取引を二面性で捉える必要がありますが、前者の場合は借入という「負債」の増加と現金預金という「資産」の増加が生じ、後者の場合は売上という「収益」の増加と現金預金という「資産」の増加が生じることになります。両者では、将来の返済義務があるかないかの違いが生じます。

 では、運営費交付金を国から受入れた場合はどうでしょうか。実は借入金の会計処理と同じなのです。「運営費交付金」を受け入れた際に、「運営費交付金債務」という科目を「負債」に計上し、一方、同額の現金預金が「資産」に計上されることになります。

 このように、借入金と「運営費交付金」の会計処理は同じなのですが、ここで、運営費交付金は借入金と違い返済義務がないのに、なぜ借入金と同様に負債に計上するのかという疑問が生じるかもしれません。しかしながら、「運営費交付金」も次期の中期目標期間に繰り越すことはできず中期目標終了後に原則として国庫に納付しなければならないという点において、借入金と同様に返済義務があるのです。但し、国への返済義務は、「業務の履行」により解除されます。これが、借入金と「運営費交付金」の違いです。

 「運営費交付金」における返済義務の解除は、会計上は「運営費交付金債務の収益化」という独立行政法人特有の会計処理を行うことで対応しています。独立行政法人会計では、業務の履行により返済義務が解除され、その時点で会計上は「負債」である「運営費交付金債務」から「運営費交付金収益」つまり「収益」に化けるのです。民間企業では「負債」から「収益」に化けることは考えられませんね。

 この結果、業務未履行分に相当する「運営費交付金債務」だけが負債として残り、中期目標期間終了後に原則国庫に納付されることになります。


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