形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

富山の薬売り

2013-09-30 14:39:12 | Weblog

富山の薬売りが東京の家々を廻っていたのは、小学生の頃。
年に1回ぐらい来ただろうか。 背中に柳ごおりの入った、
黒皮の大きな荷物を、重たそうに背負って、いつもきまった
おじいさんが訪ねてくる。 薬売りが来るのは、子どもたちの
楽しみの一つだった。 それは、お土産の紙風船を何個か
くれるのと、縁側に降ろした荷物から出される、色とりどりの、
にぎやかに入っている薬袋を見る楽しさだった。



家には前に薬売りが置いていった、厚紙でできた引き出し式の
薬箱があった。 その中の箱から、使った分だけお金を払い、
減った分を補充していく。 粉薬はみんな薬包紙で三角形に
包んだものに入っていた。 中には「クマノイ(熊の胃)」という、
黒っぽい小さな塊を紙に包んだのもあって、一度だけ飲まされたそれは
とても苦かった。

「カゼ薬はどうします?」
「置いてって」
「これは新しい胃の薬だけど、よく効くよ」
「じゃそれも」 などと、
薬売りとオフクロのやりとりを聞いているのも面白かった。

                        
からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/


[ 警告]当ブログ内に掲載されているすべての文章の無断転載、転用を禁止します。すべての文章は日本の著作権及び国際条約によって保護を受けています。Copyright shinso koisikawa. All rights reserved. Never reproduce or replicate without written permission.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする