東京から、千葉県佐倉に引っ越してきた頃、平地のわりに樹木の
豊かな丘陵がとても多いのに驚いた。 ところが、幾重にも重なる
帯状の丘陵と思っていたのが、ずっと後になって、北総台地が侵食
されて残った台地だったのを知った。
台地や侵食されたこの谷のような低い地形を、谷津(やつ)、谷地(やち)と
いい、そこに作られた田んぼを谷津田という。(私の故郷、山形にも地名に
「谷地」がつくところがある。) この「津」という字はどういう意味なのか、
興味があって白川静の"字解"を調べてみた。 しみ出る、という意味がある
ようだ。 (他にも、渡し場、の意味がある。)
北総台地は、海底が隆起したところに、富士を起源とする火山灰が
積もり出来ているという。 赤土で有名な関東ローム層だ。
この地層は保水性が高く、その下の谷津は台地からの湧水が豊富で、
谷津田はそれを利用している。
時折話題になる里山と同じく、多くの生物が豊かな生態系をつくり、
さまざまな生物を見ることができる。 この入江のような谷に沿って
小道があり、私もいろいろな野草や樹木、昆虫、そして幾度か親子
連れのキジやカルガモ、タヌキ、イタチなどを見ている。
ところがこの谷津田が、最近は荒廃が進んでいるそうだ。
一つの大きな原因は、細長い入り江のような地形のために、
今の農業の大型機械が入らず、その維持は人手によるしかない。
そのため、人手不足に悩む農家の手が回らなくなったためという。
もう一つの原因は土地の開発による。 残念ながら佐倉でも、荒廃した
谷津田や、開発のために建設機械でつぶされた谷津田を見ることがある。
最近はこうした豊かな生態系をもつ谷津が見直され、これを保存する
ために活動する人たちも増えてきているようだ。
からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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