7年前、仙台に向かう東北新幹線にあった旅のパンフレット、
トランベールにディーゼル機関車で行く、みちのくの旅の特集をしていた。
山深くを1、2両でのんびり走るこの鉄道の旅に惹かれ、
そのパンフレットをとっておいた。
7月の夏休み、この鉄道で一人旅に行った。
盛岡まで新幹線で行き、そこからディーゼル2両の花輪線に乗り替えた。
ディーゼル機関車は電気を動力としないので、電線もパンタグラフもない。
また単線なので線路の幅は狭く、左右に迫る木々の枝が当たらないかと
思えるほどだった。
田園地帯からやがて山の中へ入り、花輪線は奥羽山脈を越えていく。
いつかどこかで見たような、懐かしい風景が次々にあらわれた。
流れていく風景を、私は飽くことなく眺めていた。
退屈かもしれないと、旅行カバンに入れておいた数冊の本は、
一度も開くことはなかった。 一人旅もいいものだ。
花輪線の3時間の旅はあっという間に終った。
終点の大館から奥羽線の鷹巣まで行きそこに泊った。
翌朝、鷹巣駅が始発の秋田内陸縦貫鉄道に乗り、角館(かくのだて)に向かった。
この鉄道は1両だけのディーゼル機関車で、花輪線よりさらに山奥をいく。
森の中を走り、多くの沢を越え、鉄橋を渡っていく。
素晴らしい風景がつづいた。
だが秋田内陸縦貫鉄道は利用者が減り、廃線の危機にさらされているそうだ。
地元の人たちはこれを懸命に守ろうしている。 このたった1両の電車の中で、
小さな手押し車での車内販売があり、沿線の名産品を売っている。
たいへんな山奥に鉄路を切り開いた人たちの苦労がしのばれる。
その日は翌日に秋田駒ケ岳に登るため、田沢湖畔のローズガーデンホテルに泊った。
ホテルに着くと平日のためか、中規模のホテルなのに、客はまだ私一人だった。
チェックインするとき支配人がいて、一番眺めのいい部屋を用意しておいたという。
広々としたレストランでの食事も私一人だけで、素晴らしい席を用意してくれた。
湖の向こうの山々は、青味がかった薄墨色の山のシルエットが、影絵のように重なりあった。
やがて暮色が深まり、山のシルエットは空と溶けあっていった。
からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/