パイプの香り

昔のことを思い出しながら、こんな人生もあったのだ、ということを書いてみたい。じじの「自分史」ブログです。

昔、昔、或る所に・・・/その二十七

2007-03-02 12:17:30 | 自分史
 前出のマミイのママの『噂の彼氏』と拙者が言われていたそうな…。本物でない、つまり噂だけの彼氏と言う事で、まあ本気で口説こうと思ったことは無かったのだから、まあ、良しとしなければなるまいねと。
でも、一度だけキスをしたことがあったんだけど、彼女が煙草をのんだ後だったモンで、その味は煙草臭くて、ちょっとロマンチックでなかったちゅことやね、こっちはあまいキスを期待してたけんね、煙草臭いと言った訳。

 その事を、数年後に彼女が東京へ帰って、札幌に遊びにきた時に、当時の常連たちとススキノへ繰り出して、道路を渡りながら彼女が披瀝したのだったが、その時には本物の彼氏がいて、複雑な顔をしていた。その彼氏は北大の講師で(当時)、常連たちが牽制しあって、だれもが手を出さなかった時に口説かれたので、タイミングがバッチシだったようだ。

 で、直ぐに妊娠したり、それを処置したり、ススキノの新宿仲町に開店(移転)しようとして、大工に足元を見られて手付金を編し取られたり、彼氏に逃げられて、夜逃げ同様に着の身着のまま汽車に飛び乗って東京へ帰ったりと、まるで小説のような出来事だったが、噂だけの彼氏はそれを『海峡』という題で、彼女が青函連絡船の中で札幌の生活を回想するという構成で書いてみた。海に関する小説や戯曲を募集する雑誌があって、応募したが入選しませんでした。スンマセン。

 さて、その『マミイ』から西へ道路を渡ると、東向きに東映劇場があって(つい先年に閉館した)そこから二条通りを渡った向かい側に二軒のバーが並んでいて、一つは『サブリナ』、もう一軒が『ブラック』という。

 サブリナのママは小柄な人で、いつも和服を着て、控え目に振る舞っていた。で、控えめでなく、派手めだったのが、キョウコさんといって、すらりと背が高く、髪は軽くカールしていて、笑うと鼻に皺が寄って、高い声で笑うので、とってもチャーミングであった。(後日分かるのだが、愚妻と帝国座で一緒に働いていたことがあるそうな…)
ブラックのほうはというと、ママは黒いベレー帽に黒いスーツという出で立ちで、なんか芸術家風に装っていたっけ。
 サブリナの方はキョウコさんしか目立たず、だから他の女性は印象に残っていなかったが、ブラックの方はヨウコさんやアキコさんや、有象無象が4、5人いて、いつもワアワアと賑やかであった。だから、しっとりとした雰囲気で飲みたい時はサブリナで、陽気にやりたいときはブラックでと、使い分けができるのだった。

 そのブラックにどういう風の吹き回しか、小柄で小さい(ダブッテルヨ)可愛い女の子が入った事があって、レコードに合わせて、可愛いベイビー…などと歌って受けていた。閉居後に誘ってみると着いてくるので、遂に行くとこまでいったのだが、家まで送っていくと、これが二条の東五丁目で、 余りにも近すぎるので、それっきり付合いを止めてしまった。

 ブラックでは、白竜、銀竜など京花紙を買ってくれたりしたが、ママの家が近いらしく、店に電話を借りにきては、私の声で男性を呼び出させて、相手が出るとママに替わって、飲み代の ツケを催促することもやっていた。貸すときは簡単に貸すけど、これの回収が大変なようであった。

 東映劇場の南隣りの角に薬局があって、南に行くと、喫茶店シャトオやラーメン屋などが並んでいて、さらに下がるとバー『峠』があった。
そこのマスター宮崎さんは目が大きく鼻筋が通って、なかなかの渋い良い男だった。そこに連れられていくとH井慶子がいた。


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