狭い世界で生きているんだね、と言われてしまった。
自分と家族だけ、家の中だけ。
外部と交流しない。
それでは一人と同じ、だって。
外国に行ったことがない。
国内でも旅行には行かない、外食もしない。
スキーもテニスもダンスもやったことない。
ブランドの名前も全然知らない。
髪を染めたことも、エステサロンに行ったこともない。
恋をしたこと、はあったけど
数えるのに、指を一本か二本折ったら終わりだった。
あらためて考えたら、何にも経験がないんだ!私って
でもね、毎日の食べる物の事や、子供を育てる事を考えるだけで
本当に精一杯だったの。
一生懸命やっている間は、余計な事考える暇はない。
それはそれで、幸せだった。
本のページの中や、映画のスクリーンの向こう側を想像した。
違う言葉や、違う民族、違う習慣。
小さな部屋の中で、想像力だけを広げて暮らしてきた。
一生独身で、
最後はお医者さんにもかからずに死んでいったエミリー・ブロンテ。
家の中に篭って、風の吹き荒れる丘を毎日眺めていたのだろうか。
彼女は、奇跡のような小説『嵐が丘』を残した。
素晴らしいね。
沢知恵さんが歌う『私がいちばんきれいだった時』
曲の最後が物凄くステキなんだ。
「だから決めた
長生きすることに
年取ってから
すごく美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのように、ね」
私、一生に一つでもいいから
胸の中に何か綺麗なものを残したい。
たとえ「狭い世界」だって、そこから拡がるかもしれないよ。