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痛みとは何か

2015-05-10 20:34:33 | 日記

先日、遺伝学の教授との酒席で、「歴史的」?な対談がかわされた。
「痛みとは何か」につき、議論が盛り上がったのだ。
教授によれば、学問的にはこれは未解決な問題だという。
要するにメカニズムがよくわからないのである。
確かに、客観的に痛みを測定するキカイはない。
医療の現場ではあくまで自己申告の世界だ。
だから、交通事故の被害者など、「痛い痛い」と何ヶ月も言い続けて、治療費や休業
補償費を騙し取ろうという不逞のやからが現れても、これを阻止できない。
保険会社のブラックリストに載せて、再発防止を図るのがせいぜいで、
診断書にはもっともらしいことが書かれてあっても、要するに「本人が痛いと言っている」
ことの証明書に過ぎないのである。
これだけ文明が進んだ(と思われている)現代社会において、何たる不合理であるか、
という点において両者の認識は一致した。
じゃあ、「痛みとは何か」をどうやって説明すればいいのだ。
教授によれば、これを学問的に解明したらノーベル賞モノだという。
あまりに問題が大きすぎて、誰も手がつけられないのだと。
そこで私は演説した。
「物理学の法則なんて、ほとんどが単純明快なものだ。
『エネルギーは質量に比例し、距離の二乗に反比例する』なんて、実に数学的で美しい」
「なるほど」
「痛みも同様に説明できないか。こんな仮説はどうかね。痛みとは体内における『温度差』である」
「理由は?」
「だって、痛みの原因はたいてい炎症だろう。他の部所より温度が高いところは激痛として、
また温度が低いところは鈍痛として感じられる。これでいいじゃないか」
「ずいぶん簡単だな」
「そうだ、自然界はメチャメチャわかりやすいんだ。人間がそれにもっともらしい理屈をつけて
難解にしているだけさ」
「でも温度差はどうやって生じるんだ」
「そこが厄介なところだけど、こう考えるとどうかね。温度が高いというのは、
酸素が燃焼するスピードが速いということだろう。
言い換えると、温度が高いところでは時間が速く進行する。
両者は同じことの表と裏で、時間が高速で進行することと
物質が高温になることはイコールだ。
とすれば、痛み=温度差=時間差 ということになるね。
体内のわずかな時間差が痛みとして感知される。そして時間差が限度を超えると、人は死ぬんだ」
「でもどうやって証明するんだよ。こんな実験、試験管の中じゃできんだろが」
「仮説だよ、仮説」
ま、酒が入ると、両者とも怪気炎!
「わかった、俺が論文を書いてやる」
「めでたくノーベル賞にありついたら、賞金は半分よこせ」
と約束して別れたが、あいつ翌朝にはケロリと忘れてるんだろうな。
せっかく、「地動説」や「大陸移動説」なみの世紀の新説が生まれたというのに。
(2012.3.6記)



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