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書評「さわり」(鶴田錦史の生涯)

2015-05-12 05:08:45 | 日記

日常「ビワ」なんて食い物としか認識していない方でも、世界のタケミツが作曲した
「ノヴェンバー・ステップス」の初演の栄に浴した演奏家といえば、ははんと思いだして
いただけるのが、「ミス・ツルタ」こと鶴田錦史である。
彼女が世に出るきっかけを作ったのが邦楽界の泰斗・吉川英史先生であるが、
私も何度かお目にかかったことがある。
彼女の破天荒な生き方は本書に詳しいが、私はここで考古学者「シュリーマン」を
連想した。
両者は前半生でわき目も振らず稼ぎまくり、そのカネで後半生好きなことに没頭したという
共通点がある。
いかな彼女とてずっとプロの邦楽師であったなら、そうそう無茶なことはできなかったろう。
宗門のシバリや家族のくびき、それに生活の心配など考えたら、革命的な行動は
なかなかとれないものだ。
それがタケミツをも驚倒させる「芸術」にまで昇華されえたのは、良い意味でのアマチュアリズム、
生活の心配なしにやりたいことをやる、必要とあらば楽器の改造すらいとわないこの迫力、
そのあたりに起因するのではと考えさせられた。
まさに理想的な生き方の一つといっていい。
今や琵琶の愛好家など1000人いるかどうかの世界だが、良いものは必ず評価され、伝承される。
彼女の周辺の細部を丹念に掘り起こされた著者に感謝するとともに、本書が琵琶の再評価に
繋がることを期待したい。(2012.3.9記)



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