「フランシスコ・サレジオという人も言っていましたわ。
『純粋なものは、天国と地獄とにしかない』と。
ということは、現実のこの世界にはありえないのかもしれませんわね。
完全な純粋なものなど」
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「パスカルのパンセの一句にもこういうのがあったな。
『人間は天使でもなければ禽獣でもない。
天使になろうとする人間は、かえって禽獣に堕ちる』って。
自分こそが正義と思う人間が、悪魔にもなりうるということだろう。
そんな人間は簡単に他人を差別し裁いてしまう。
そもそも人間の感じてやまない孤独感が厄介なんだ。
孤独が人を恐ろしい犯罪へと誘うが、反対に、他人への優しさにも変われる。
最も扱いにくく処理に困る感覚だ」
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「犯罪の影には常に人間の悲しみ、疎外感が沈んでいると言われます。
何となくわかるような気がしますけど、私はそんな言い訳卑怯だと思いますわ。
自分の弱さや犯した罪を、他人のせいにするなんて、どうしても納得できませんの。
もっと強く生きるべきで、誰かに甘えるべきではありませんわ」
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小説「羊の群」
God Bless You ❣