「またトラ」で思うこと
トランプ氏の米国大統領への返り咲きが現実のこととなってしまった。
米国民もそこまでは馬鹿ではあるまいと思っていたが、やはり馬鹿だったと思わざるを得ない。
そして無知な単細胞ほど恐ろしいものはないということを思い知らされた感じがする。
(当方がトランプを嫌っている理由については「「もしトラ」について」のところで述べているが)
トランプの勝因、というかハリスの敗因についてはいろいろと言われているが、やはり「インフレ」や「移民問題」が大きな要因だったと言える。これらはバイデン政権の負の遺産とも言えるものだが、これは何も米国に限ったことではなく世界共通の問題でもあり、トランプならこうはならなかったとは言えない。しかし現政権下で生活が苦しくなったと言う人たちが増え、トランプの言動に否定的な人たちも変化への期待からトランプ支持に傾いたようである。
どうも一般的なアメリカ人特有の短絡的な考え方が今回の結果を生んだとしか思えないが、あれこれ後先のことを考えるより、まずは経済優先で自分たちの生活が大事だということなのだろう。
*民主党の主要支持層である黒人、ヒスパニック、若者のハリスへの支持率がバイデン政権が誕生した前回の大統領選よりも減っているということが(この層がインフレにより最も生活が困窮している)、このことを如実に物語っている。
この他ハリス氏の敗因については、知名度が低かった、準備期間が足りなかった、経済問題に詳しくなかったなどいろいろと言われているが、やはり何よりもバイデンの撤退表明が遅すぎたことが致命的だったと思われる。
*近年米国の一般的な労働者階級の人たちは民主党のインテリ臭さが鼻について嫌っているようである。例えばハリスの言っていることが何のことかよく分からず、英語で喋っているのに通訳がいるほどだと言われているが、一方トランプは単純な言葉で短く話し、例えば「素晴らしい」ということを「Wonderful」「Excellent」「Splendid」とは言わずに「Very,Very,Very Good」と言うということを聞いたことがあり、これが彼らに親近感を感じさせているとのこと。
ともかく今回の結果を踏まえて、まず目に付いたのは11月8日付の朝日新聞の記事である。
『「米の「穴」埋める、日本外交を」
「米国が歴史的に抱いてきた価値観は、もはや当てにできない。日本はそうした環境に備えなければならない」。著名な米国際政治学者、イアン・ブレマー氏は先月、東京で講演し、地域で「日本がより大きなリーダーシップを発揮しなければならない」と訴えた。
自由貿易や民主主義、法の支配――。米国が牽引(けんいん)してきた価値観外交が瓦解(がかい)し、国際秩序を主導するリーダー不在の時代にある。ただでさえ、日本を取り巻く環境は厳しい。米中が対立を深め、中国や北朝鮮に囲まれ、安保環境は悪化している。
そこに同盟軽視で米国第一を振りかざすトランプ前大統領が再登板し、日本は同盟の維持・強化にも苦心するだろう。政府内からは「4年間耐え忍ぶしかない」(外務省幹部)との声も漏れる。
国際情勢を俯瞰(ふかん)することなく、対米投資拡大や防衛費増、米国製装備購入などを求めるだろう。日本経済界からも過度な保護主義に警戒の声が上がる。
奔放で忠誠心を求めるトランプ氏と、理詰めでへつらうのが苦手な石破茂首相の首脳外交には不安もある。だが、米国の背中だけを見て追従する時代は終わりつつある。
対米投資は日本が世界1位で胸を張れる。米国の孤立化は米国自身の国益を損ねると友人として地道に説く。日本は同盟維持に腐心する一方で、地域の秩序形成の主体的プレーヤーを演じる必要がある。日本単独では難しくとも、豪州や韓国など有志国と「価値」への共感を高め、米国にそれを促せる。
シンガポールのシンクタンクによる4月の東南アジア諸国10カ国対象の意識調査では、米中選択を迫られれば「中国を選ぶ」が過半数を占めた。
有志国と連携し、影響力が陰る米国の「穴」を埋める努力も必要だ。日本にはその実績もある。米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)は、日本が創設に奔走した。イスラエルをめぐる国連決議では、日本は度々米国と異なる対応をとり、「法の支配」堅持の姿勢を世界に発信している。
様々な枠組みを日本が率先して形成し、対中外交でも紛争回避のための対話を働きかける。そうした外交に奔走する日本の姿が求められる。(編集委員・佐藤武嗣)』
当方がこの記事を取り上げたのは、これまで私が注目してきた(危惧してきた)ことがそのまま織り込まれていたから。
それは「民主主義の崩壊」ということと「中国の台頭」ということ。
以前は米国は「自由・民主主義」の旗手であったが、最早その面影は無くなってしまっている。
そして、「自分たちの価値観の押しつけ」や「ガザ問題にみるイスラエル支持のダブルスタンダード」などは、他諸国の顰蹙(ひんしゅく)を買っている。
トランプの「米国第一主義」や「ディール(取引)外交」は益々これらの国々の米国離れを招くと思われる。
欧州諸国でも近年移民問題に端を発し右傾化が進んでおり「自国第一主義」に傾きつつある。
この傾向は発展途上国でも見られるようになり、これらの国々は「権威主義化」しつつある。
この点、日本は先の衆議院の総選挙でも見られたようにまだ健全と言えるかもしれない。
しかし社会的には近年「緊縛強盗」なるものが出始めており、実行役とされるのはほとんどが若者たちのようである。お金が欲しくて手を染めてしまうということのようだが、この世代はSNS中心で新聞やTVは見ないようなので、やはり無知からきたものと言わざるを得ない。
これらの犯行は自己中心的で他人を顧みないということから、どうやら日本でも社会的に不安定な要素が芽生えつつあるということだろうか。
他との協調、他に対する思いやり、敬意という日本的な良さは失いたくないものである。
(参考)
トランプ氏は激戦7州で全て勝利を収めたとのこと。
(選挙人数は最終的に312人を獲得し、ハリス氏の226人を大きく上回る見通し)
また総得票数でもハリス氏を上回り過半数を獲得したようである。
(2016年の大統領選挙では民主党のヒラリー・クリントン氏が得票数では共和党のトランプ氏を上回っていたものの、選挙人獲得数ではトランプ氏が過半数を占めヒラリー氏は敗北している)
(参考)
「米国大統領選挙の選挙人制度について」
米国大統領選挙では各州で選挙人制度が採用されており、ほぼ全州(2州を除き)で1票でも多い票を得た大統領候補が選挙人を「総取り」する制度となっている。
選挙人制度を定めるのは米国憲法だが、選挙人の選び方は州に委ねられている。
なぜ「総取り」などという非民主的な方法が採られているかと言うと、これは州の政治的な影響力を高めるため、18世紀に導入されたもので、大統領の決定に際して州単位でまとまって「票の力」を行使できるためとのこと(ハーバード大、アレキサンダー・ケイサー教授)。
このことにより、激戦7州と言われているように、一部の州だけが大統領選の結果を左右するような状況を生み出しているが、これについて朝日新聞(11月4日付)に次のような説明があった。
「制度改正の動きは絶えず、憲法改正案が700回以上提案されたが、実現していない。「制度が有利に働く側の人々から、改正を阻む動きが常にあった」とケイサー氏は分析する。
改革の機運が最も盛り上がったのは1960年代。連邦最高裁が「一人一票」の原則を打ち出して下院の選挙区の人口をなるべくそろえることを求め、米南部で実質的に投票が制限されていた黒人が、公民権運動の成功によって自由に投票できるようになったころだ。
69年には選挙人制度を廃止する憲法改正案を下院が圧倒的多数で可決した。だが、上院では南部の選出議員を中心に「州の影響力が失われる」と反対の声があり、採決に至らなかった。」
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