王様の耳はロバの耳

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ネタバレありです。閲覧注意。

『ルビンの壺が割れた』 感想

2024-03-27 00:58:27 | 読書
こんにちは、サニーです。


今日の記事は読書感想文。

『ルビンの壺が割れた』



公式あらすじを簡単にまとめると、
30年近く前に結婚の話が出ていた男女がフェイスブックを通じて久しぶりにやりとりを交わし…といったもの。

地の文がなく、終始一組の男女の往復書簡形式(フェイスブックのDM)で話が進んでいきます。

いわゆるドンデン返しもので、終盤でガラリと印象が変わります。


感想も、
序盤
中盤(というか最初と最後以外)
終盤(ドンデン返し)

の3つに分けて感想を書こうと思います。
ネタバレ有りなので未読の方はUターン推奨です。















⚠ネタバレ有り⚠























【感想】

序盤

この物語は主人公(水谷一馬)が、結婚式当日に音信不通になった女性(未帆子)をフェイスブックで見つけてDMを送るところから始まるのですが、

ぶっちゃけ主人公めちゃくちゃキモい

「歌舞伎関連のページをチェックしてたらたまたま見つけた」とか言ってるけど、
特定への執念が凄い。
名字も変わってて写真もないのに、友達欄や他の人とのコメントのやりとりをチェックした後、友達の1人が乗せていた写真から本人と確定。しかも顔加工してあるのに、写真の中の窓ガラスに顔が写っているのを発見したという…。
お手本のようなネットストーカー

そんで「私の中のあなたは数十年前に亡くなったのです」(死んでない)、「返事は期待していません」っつってるのにまたメッセージ送りつけてる😇😇
しかも未帆子の娘のことに触れながら。公開していた娘さんをモデルにした絵を勝手にプリントアウトして部屋に飾ってますとか言うし。きめぇきめぇ。

2通送って無視されて3通目は「前のアカウントを消して新しく作り直しました。特に意味はありません」って新アカウントからDM送ってるんだけど
もしかして前のアカウントブロックされた???

根負けしたのか、ガンになったと書いてあって安心(?)したのか、3通目にしてようやく未帆子から返信が来ます。


中盤

主人公と未帆子のやりとりは一見丁寧な文で和やかなんだけど、
過去の栄光に酔ったオッサンと、時に相手に花をもたせながら当たり障りなくやりすごすホステス感

主人公と未帆子は基本的にずっと大学時代の話をしてるんだけど、
2人は同じ大学の演劇部の先輩と後輩という間柄で、最初はぱっとしない印象だった未帆子が演劇の才能を開花させてから2人の距離が縮まった…というのがなれそめ。
けれど主人公は中学生の頃に両親を亡くしてから親戚の家に身を寄せ、その家の娘(優子)を許嫁としていたらしい。
この優子との関係も主人公がDMで語るんだけど、
正直信憑性薄いんだよなぁ…。
演劇部や未帆子との関係は2人の共通の思い出だから、嘘や思い込みが混ざってても概ね語られていることが事実なんだと思う。
だけど、優子については未帆子も会ったことがないから、どんな人なのか何を考えていたのかは主人公の主観や語られることのみでしかわからない。
作中で語られていることは全部主人公の都合のいいように捻じ曲げられている可能性もある。
「優子の名誉のために伏せていましたが…」的なこと言ってるけど超詳細に梅毒のことや叔父との関係について語ってるのがなんとも。しかも元婚約していた相手に。
「俺は悪くないんだよ、被害者なんだよ」スタンスだけど、実際のところは厄介になっている家の娘に遊び半分で手を出しているのがバレて責任とらされた…っていうのが真相だったりして。そのことを逆恨みしていて数十年たってから相手を貶める悪口を言っているとか。憶測だけど。

演劇部時代の栄光、優子や未帆子との関係を生々しくあけすけに語りながら、話はどんどん不穏になっていく。




終盤
※重大ネタバレあり!












劇団立ち上げの話が出たものの部員が金を持ち逃げして立ち消えたこと、優子が叔父と関係があったこと、そして
未帆子がソープ勤めをしていて演劇部の何人かとも肉体関係があったこと
こういった事実が立て続けに発覚して精神が不安定になったから、自分の人生はめちゃくちゃになったんだ、こうなったのは未帆子や優子のせいだ、などとDMで糾弾したところ、

未帆子から返ってきたのは衝撃の事実。

なんと、
主人公は幼女殺人事件の犯人としてお縄になっていて最近までずっと収監されていた
そもそも未帆子が結婚をぶっちしたのは、
主人公が行方不明になっている女児の持ち物を所持していたことを未帆子が知ったから
知り合いに相談して警察に届けたあと、身の安全のために出奔。遠くの土地でソープ勤めをしながらしばらく息を潜めていたとのこと。

未帆子の密告後(兼、結婚式後)から半年後に捕まり、主人公には無期懲役の判決が出たらしいが30年ちょっとで仮釈放。
主人公は自分の人生を壊した(と本人が思っている)女たちに復讐するためにフェイスブックで近づいた
これがわかったときゾッとしたわ…
「もう過去のことだから」と言いつつ未帆子に住所や今の名前を聞いたのも、未練タラタラだからじゃなくて御礼参りに行くため。
優子にもフェイスブックから近づいたらしく、彼女はちょっと前に急に行方不明になったということ。
きっと優子は主人公をかわすことも拒み切ることもできずに…
主人公がアカウントを変えたのも、優子に近づいた痕跡を消すためらしい(ブロックされたからではないらしい、多分)

というか、主人公曰く「強いストレスを感じると精神のタガが緩んで抑制が効かなくなる」とのことだけど、それって両親をなくしたときも当てはまるよね。その時近くにいた女の子って、優子だよな…。
絶対手ぇだしてるよな、小学生の優子に。
本当のところどうかはわからないけど。

恨み言を粘着質に言ってくる主人公に毅然と言い返したあと、最後に一言
「とっとと死にやがれ、変態野郎!」

未帆子さん、丁寧なやりとりしながらもずーっとこれ心のなかで言ってたんだろうな…
お疲れ様です。

やっと記憶が薄れてきた黒歴史の相手に数十年ぶりに連絡がきて、迂闊だったとはいえ自分の個人情報探ってきた相手とやりとりするのは相当怖かっただろうな。
正直やりとなんかしないでさっさとフェイスブック閉鎖したほうがよかった気もするけど、ほっとくのも怖かったんだろうな…
でも気をつけないと優子の二の舞いになるところだったんよな…

ネットリテラシーって大事だね


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