平成最後の夜が明け新元号令和が始まった。報道などでは概ね歓迎お祭りムードであるが現状はそうは思えないことばかりであろう。上皇になられた明仁様のご退位の年齢を考えれば即位された徳仁天皇の時代はおよそ30年ほどと推察される。これからの330年がどういう時代かを考えれば少し現状を知っている人なら苦難の時代となることは容易に推察される。
昨日にも記事にしたが現在出生数は年間100万人を割り込んでいる。令和に20歳になる世代の出生数は117万人、令和に35歳になる世代(つまり30年後に現在の規定ならリタイアする世代)が123万人だ。一方現在65歳の世代人口は177万人、この出生数が10年ほど続きそのあと第2次ベビーブームの世代人口200万人の時代が6年ほど続く。その後は緩やかに150万人程度から減少する。
この人口ピラミッドは大規模な疫病や戦争あるいは大災害でも起こらない限りその予想から外れることはない。もしそれらが起これば少子高齢化問題以前に苦難の時代となる。そしてそれらがなく平穏に時が流れても多くの高齢者が健康で長生きを願う今の社会ではバブル以降に生を受けた世代の背中に負われることとなる。彼らはバブルでいい思いをすることもなく平成という災害と景気減速の中を育ち、そして私たちより上のバブル期を謳歌した世代の物欲や好奇心旺盛な世代を支えることとなる。
いわゆる2040年問題・2050年問題といわれる問題は早くから警鐘を鳴らし続けられている。これは不可避の問題だ。人口構造が変わることが判っている以上必要なのはその時代を見据えた政策であった。だがいまだその問題は解決されていないことは多くの記事で散見される通りだ。
まず第一義的に問題となるのは労働人口の減少だ。AIの進化などで人材の省力化は図られるであろう。そして令和の時代は機械でも出来るようなことには人間は仕事にありつけない時代となっていくことが容易に想像される。現在問題のコンビニの24時間問題も結局無人化のキャッシュレス決済などと顔認証で乗り切ろうとしている。
では人間の力はどこに向けられるのだろうか、それは医療介護の分野になるであろう。これは機械では出来ない。もちろん機械的補助器具を使用する時代にはなるとは思う。だがヒトとヒトとの対応は機械には出来ない。また現在外国人材の受け入れを図っているが宗教や文化の異なる間で交流するのは受け入れる日本側に相当な寛容さを要する。高齢になればそういう寛容さが発揮できない人が少なからずいる。
安倍首相は国会演説などで毎回自分の成果として有効求人倍率の向上を力説する。だが安倍政権発足実質1年目の2013年の22歳出生数は122万人、一方この年に定年退職する60歳の世代人口は187万人だ。乳幼児死亡率は1955年から1985年の30年間で40%から5.5%に下がっている。つまり2013年から定年を迎える人の数はどんどん増え続け一方で出生数が減少し続ける新社会人は減り続けていく。
もちろん民主党政権時代もその傾向はあっただろうがリーマンショック直後に東日本大震災という2つの経済的打撃を受けたことは看過できない。だが有効求人倍率の上昇の主因はあくまでも人口構造の変化によるものであり景気拡大の側面による政策の成果という首相の主張は全てが真実ではない。実際現在言われているのは人材不足による経済停滞が先のコンビニなどで生じている。
次に問題となるのは社会保障の問題だ。現在医療費は年1兆円づつ増加すると言われている。これから高齢者が増加すればその増大幅は拡大する。さらに年金受給者の割合が増える。介護保険もかなり厳しいと言われているが増え続けるだろう。
医療に関しては昨日の記事に書いたようこれからの生き方を考え直さない限り減ることはあり得ない。ガン治療の発展、臓器の再生医療など人間の寿命を延ばす技術は進歩し続ける。そのなかで働く世代と支えられる世代のバランスが歪み続けるのが令和の時代だ。我々以上の世代が死滅する時代が来ればまたそのバランスは正されるのだろうがこの令和の時代はそれはない。
年金も問題であろう。現在年金は物価スライド制が採用され賦課世代の物価に合わせて支給額がスライドされる。だから破綻がないと政府は言う。だが年金本体は現在株式や債券で資産運用をしている。160兆という国家予算の1.5倍以上の規模の額を投じている。うち4分の1が国内株式である。
株式というのは資産価値が変動する。ということは現在運用益が幾らと報道されてもその資産は確定したものではない。つまり運用益を年金として機能させるためには当然株式や債券を売るということが前提になる。
現在年金運用機構(GPIF)が保有する国内株式は約40兆円である。これは日本の株式市場640兆円の6%強にあたる。これは日銀の保有する株式とほぼ同等だ。両者を合わせれば日本国ともいえる機関が1割以上を保有することとなる。これらのどちらか片方が株式を大量に売るという行為は株式の下落を生じさせどちらかの資本が大きく棄損されることとなる。
日銀が大量に売れば年金の運用益が大きく損なわれ積立金が減少する。逆に年金が支払い捻出のために売り払えば日銀の資産が減少する。これは紙幣の発行額に見合う資産がないと海外から判断されれば通貨の暴落を引き起こす。それが国債に及べば保有するGPIFも多大な損害が発生する。それだけでなく生損保金融機関も多大な損害が発生する。国債の発行に国家予算の3割を依存する日本政府も影響を免れ得ない。
つまり資産として株式を当てにすることは現実難しいということだと私は考える。日本株式市場の2大株主である年金と日銀が株式を買うというのはそういうことである。彼らが筆頭株主として保有するのは日本の名だたる企業だ。売却は彼らの業績にも影響するだろう。当然景気への影響は不可避だ。
年金機構の株式売却が日本株式市場に影響を与えるということが判りながらなぜそういう策に出たかを考えれば現在の政権の目論見が見えてくる。株価は最も身近な経済指標である。これを日銀と年金で買い支えれば当然株価は上昇する。それにNISAや日銀黒田との異次元金融緩和で株式市場への資金流入を続けてきた。これが景気が良くなっていることの証拠としたいのである。
過去株価は景気の先行指数として機能した。それは企業業績が上昇し賃金が上昇しGDPの8割以上を占める内需が拡大することが期待されそして実際そういう結果を示してきたからであろう。だが株価の上昇分と実質賃金を比べれば相関があるとは言えない。名目賃金は上昇しているのだろうが物価上昇分を相殺しているとは言えない。
物価上昇は日銀が目標としたもので当初から想定済みだ。というかその目標値に届いてもいない。だが異次元の金融緩和は民主党政権末期130兆円だったものを2019年3月時点で500兆円を超えるマネタリーベースとなっている。その差370兆円は日銀の当座預金残高の増加分340兆が引き受けている。つまり民間銀行に流れているのだ。実際に紙幣貨幣の流通残高は30兆程度しか増えていない。30%程度の増加だ。そして物価上昇はもっと低い(5%程度)。ということは銀行がその金融緩和のほとんどを引き入れ、市中にその1割程度を回したが、実際の流通はさらに偏在的になり景気実感のない状態が生じたということだ。
本来はそこから民間に融資をし、市中の資金流通量を拡大して景気拡大と物価上昇(市中の金融流通量増大のため)を図っていたはずだ。だが人口動態からの人口減など景気拡大に懐疑的な企業はそれに反応しなかった。またバブル期の銀行の無理やり貸付貸し剥がしする悪行も念頭にあったかもしれない。とにかく資金が市中に流れることはなかった。
そのかわりに国債などの債権を買い日銀との間でループさせて収益を図った。さらに不動産や株式などの投資に運用した。株式と同様地価の上昇がよく報道されているのは実感されるところであろう。そして手数料収入とで銀行はしのいでいる。
株価の上昇はこういったもの反映であり実体経済の拡大ではないのだ。企業の収支は金融緩和などで改善している。だがその多くは過熱した株式市場に対応すべく配当や内部留保に向かった。実際これらの拡大が報道されている。給与の増大分はそのため抑制され、その結果多くの皆様が実感する通り収入が物価上昇を超えて増加しなかった。そして各種アンケートで生活実感を調べても7割近くが不景気と答える。
ただこの株価や国債の市場価格が維持されると確信できるならばそう問題はない。実際はまだ円高傾向を示すことがあるし、国債の利率もほぼゼロ金利で安定している。それは現状の日本がまだ危険視されていないからだ。だがこの先はどうであろうか。
2013年石原慎太郎と安倍晋三は福島はアンダーコントロールと嘘をついて東京オリンピックを招致した。だがオリンピック開催国のその後を皆様は考えたことがあるだろうか?ソウルオリンピックから8年後韓国はIMF管理下に入る通貨危機が訪れた。ギリシアもイタリア(トリノ)もイギリス(EU問題)もブラジルも経済危機が訪れている。アメリカでさえソルトレイクの7年後にリーマンショックがあった。中国は成長こそすれその減速がしばしば報道されている。
それは何故か。景気の先食いだからだ。祭りのような騒ぎで景気を先食いしてオリンピックを迎え、過ぎると熱が冷めたかのように景気減速する。もっとも昭和の東京オリンピックやシドニーのようにインフラがまだ貧弱な場合はそう減退もしない。中国などもその部分で助かっている部分があるだろう。
だが日本の現在は消費増税や不景気感の蔓延した消費動向だ。4kテレビなどを消費起爆にしたいのだろうが思惑どおりにはならない。東京開催でなければインフラ整備による景気拡大もなされたのだろうが今更東京に新しい道路やインフラが増えたところで何の影響もない。ただでさえ東京の人口一極集中で地方が疲弊化しているのを加速させているだけだ。
そのうえに少子高齢化による労働力減少が不可避となる。さらには日本の学術研究の凋落が著しい。これから先の科学研究や技術革新の面でおそらく大きく影響を与えてくるだろう。人口が減少し、単純労働は機械化され、先進技術からの遅れが出る。さらに日本の国土資源を考えれば輸入は不可避だろう。そんな状態でオリンピック後の不況が訪れればどうなるだろうか?
日本は円高になると憂鬱な報道がされる。だが日本は韓国と異なり内需が8割を占める。ということは円高であるからこそエネルギー食料鉱物などを経済的に輸入を可能にする。円安になれば輸出企業の利益や海外での運用益などは上昇するだろう。だが国内的には物価の上昇が避けられない。企業が増大した利益を国内で還元しないのは配当や内部留保など上述した通りだ。
さらに消費増税でオリンピック前のお祭り効果もないことが判っている。さらに東京オリンピック開催で当初予算から異常に膨大したインフラ整備などの開催費用が国民のツケとして残る。そして東日本大震災後に発行された国債の償還が2021年にも訪れる。このオリンピック騒動で得をしたのは誰か考えればいかに危険な選択をしたか想像できるものだと思う。
日本は海外の評価次第ですぐに絶望の底に落とされる危険性を孕んでいる。アメリカもEUも日本と同様金融緩和を行い景気回復を図った。だが両者とも今出口戦略を見ている。アメリカは気が触れた大統領の独裁政治のため躊躇しているがあくまでも時期待ちである。だが日本の緩和というのは黒田日銀総裁も言っているよう異次元の量だ。
日銀の収支に世界が危機感を覚えば通貨安や国債暴落は一挙に津波のように襲い掛かるだろう。そうなれば年金の破綻・生損保金融機関の破綻などが起こる危険性を認識できるはずだ。これが絶対ないといううえでの年金機構や日銀の政策ならば安心したらいい。だが取り巻く状況はそうではないと思うのだ。
政府は小渕政権以降国債の乱発をし景気浮揚を図ったが潤ったのはその財政出動から還流される政治家の懐に過ぎなかった。その結果膨大な債務を持つに至っている。国の借金はすなわち税金で償却するしかない。政府は営利企業ではないからだ。ということは税金を上げ社会保障などの政府事業を縮小し債務返済をするしかない。
そのなかで民主党政権も含めてだが政府予算を拡大し続けてきた。そのなかには加計学園の獣医学部など怪しい案件も多々あった。本来は国民に見える形で政府予算の優先順位をつけ、国債の発行額を決めたうえでその中でやりくりする予算編成が必要だったはずだ。だが今までの政権は全てそれをしなかった。
私が心配するのはこれから5年先10年先だ。おそらく景気は後退しているだろう。だがマネタリーベースは減らない。減らそうとするなら金利を上げるしかない。だが金利上昇は財政のための国債発行をさらに増やす必要性が生じる。さらに不景気化での金利上昇は恐慌を引き起こしかねない。だが日銀あるいは日本政府の金融政策や財政にマネタリーベース量に資する信頼を世界が失ったら日本の思惑と別にそういう状況は起きるだろう。
ちなみにアメリカのマネタリーベースは3兆3400万ドルだ。1ドル110円で日本円に換算すれば370兆円程度になる。日本のGDPが約5兆ドル(550兆円)、アメリカが20兆ドルということを考えればいかに異次元な状態かが想像できる。アメリカがGDP比6分の1の金融緩和を議論している中、日本ではほぼGDPに匹敵する金融緩和を今も継続すると公言している。安倍首相も出口戦略と言いながらも具体的な話は一切出てこない。というかおそらく理解できないのだと思う。
金融緩和をまだやり続け、日本の現状では金利上昇が実質不可能ということを考えれば、この令和の時代がいかに悪寒の走る状態であるかが想像できよう。日本は資産があるから借金があっても大丈夫という意見がよくあるが米国債を売る勇気のある政治家はいるのだろうか?国有地を一斉放出して地価の暴落はどうするのか?道路や公共施設のインフラなどは不況下で買い手がつくのか?恐慌覚悟で株を売っぱらえば相場はどうなるのだろうか?
そのつけは全て国民にくる。道路がもし外資に買われたら通行料金が跳ね上がるかもしれない。役所が外資に家賃を払えばそれだけ税金は搾取される。もし中国のアジアインフラ投資銀行の管理下に入ったらどうなるのだろうか?
今目の前に日本はこれだけの危険要素をはらんでいる。もしこれが私の誤解ならばいいなと思う。だがそう思わせてくれる記事は見たことがない。アメリカは日本のパートナーだから決して日本が潰れるようなことをしない、という人がいるならおめでたい人たちだ。
かなり悲観的な内容を書いてきたが私はもうそれを回避するのは困難だと考えている。なにかあるとすれば日本が世界を震撼させるぐらいの特殊な技術や開発を寡占することだが現状の日本の研究開発はその世界順位を落とす一方だ。
金融緩和、オリンピック全て現政権が推進してきたものだ。政権復帰の自民党政治を国民は看過し続けた。民主党政権発足時6700万人の有権者が選挙に行った。だが現在は5000万人程度しか行かない。これが日本国民が自国の未来に無関心になった証拠だ。自民党支持者が増えたわけではない。ただそれに警鐘を鳴らそうとする人たちが減ったのだ。京阪神の人口と同じくらいの有権者がだ。
選挙に行かない5000万人がこの状態に置いた。残念ながらその結果は日本国民すべてが甘受せねばならない。そしてこれからもこの政権が続くだろう。そしてオリンピックが終わったところでお腹が痛いと辞めるに違いない。大勲位を頂いて。
そして政権交代しようがしまいがその立て直しは困難を極める。それを安倍首相はほくそ笑みながら見ているだろう。下関のパチンコ豪邸でかどうかはわからないが。政治家はおそらくその責任は取らない。そして歴史に残る経済愚策とこの金融緩和はいわれるであろう。
私はおそらく令和の終わりごろに生きていれば晩年を過ごすことになる。その頃にはおそらく姥捨て山の社会が待ち構えているのではないかと想像している。だがそれも日本人の選んだ総意だ。付き合うしかない。令和はそんな覚悟の時代になる。身構えながらも冬ごもりの準備をしておこうと思う。
昨日にも記事にしたが現在出生数は年間100万人を割り込んでいる。令和に20歳になる世代の出生数は117万人、令和に35歳になる世代(つまり30年後に現在の規定ならリタイアする世代)が123万人だ。一方現在65歳の世代人口は177万人、この出生数が10年ほど続きそのあと第2次ベビーブームの世代人口200万人の時代が6年ほど続く。その後は緩やかに150万人程度から減少する。
この人口ピラミッドは大規模な疫病や戦争あるいは大災害でも起こらない限りその予想から外れることはない。もしそれらが起これば少子高齢化問題以前に苦難の時代となる。そしてそれらがなく平穏に時が流れても多くの高齢者が健康で長生きを願う今の社会ではバブル以降に生を受けた世代の背中に負われることとなる。彼らはバブルでいい思いをすることもなく平成という災害と景気減速の中を育ち、そして私たちより上のバブル期を謳歌した世代の物欲や好奇心旺盛な世代を支えることとなる。
いわゆる2040年問題・2050年問題といわれる問題は早くから警鐘を鳴らし続けられている。これは不可避の問題だ。人口構造が変わることが判っている以上必要なのはその時代を見据えた政策であった。だがいまだその問題は解決されていないことは多くの記事で散見される通りだ。
まず第一義的に問題となるのは労働人口の減少だ。AIの進化などで人材の省力化は図られるであろう。そして令和の時代は機械でも出来るようなことには人間は仕事にありつけない時代となっていくことが容易に想像される。現在問題のコンビニの24時間問題も結局無人化のキャッシュレス決済などと顔認証で乗り切ろうとしている。
では人間の力はどこに向けられるのだろうか、それは医療介護の分野になるであろう。これは機械では出来ない。もちろん機械的補助器具を使用する時代にはなるとは思う。だがヒトとヒトとの対応は機械には出来ない。また現在外国人材の受け入れを図っているが宗教や文化の異なる間で交流するのは受け入れる日本側に相当な寛容さを要する。高齢になればそういう寛容さが発揮できない人が少なからずいる。
安倍首相は国会演説などで毎回自分の成果として有効求人倍率の向上を力説する。だが安倍政権発足実質1年目の2013年の22歳出生数は122万人、一方この年に定年退職する60歳の世代人口は187万人だ。乳幼児死亡率は1955年から1985年の30年間で40%から5.5%に下がっている。つまり2013年から定年を迎える人の数はどんどん増え続け一方で出生数が減少し続ける新社会人は減り続けていく。
もちろん民主党政権時代もその傾向はあっただろうがリーマンショック直後に東日本大震災という2つの経済的打撃を受けたことは看過できない。だが有効求人倍率の上昇の主因はあくまでも人口構造の変化によるものであり景気拡大の側面による政策の成果という首相の主張は全てが真実ではない。実際現在言われているのは人材不足による経済停滞が先のコンビニなどで生じている。
次に問題となるのは社会保障の問題だ。現在医療費は年1兆円づつ増加すると言われている。これから高齢者が増加すればその増大幅は拡大する。さらに年金受給者の割合が増える。介護保険もかなり厳しいと言われているが増え続けるだろう。
医療に関しては昨日の記事に書いたようこれからの生き方を考え直さない限り減ることはあり得ない。ガン治療の発展、臓器の再生医療など人間の寿命を延ばす技術は進歩し続ける。そのなかで働く世代と支えられる世代のバランスが歪み続けるのが令和の時代だ。我々以上の世代が死滅する時代が来ればまたそのバランスは正されるのだろうがこの令和の時代はそれはない。
年金も問題であろう。現在年金は物価スライド制が採用され賦課世代の物価に合わせて支給額がスライドされる。だから破綻がないと政府は言う。だが年金本体は現在株式や債券で資産運用をしている。160兆という国家予算の1.5倍以上の規模の額を投じている。うち4分の1が国内株式である。
株式というのは資産価値が変動する。ということは現在運用益が幾らと報道されてもその資産は確定したものではない。つまり運用益を年金として機能させるためには当然株式や債券を売るということが前提になる。
現在年金運用機構(GPIF)が保有する国内株式は約40兆円である。これは日本の株式市場640兆円の6%強にあたる。これは日銀の保有する株式とほぼ同等だ。両者を合わせれば日本国ともいえる機関が1割以上を保有することとなる。これらのどちらか片方が株式を大量に売るという行為は株式の下落を生じさせどちらかの資本が大きく棄損されることとなる。
日銀が大量に売れば年金の運用益が大きく損なわれ積立金が減少する。逆に年金が支払い捻出のために売り払えば日銀の資産が減少する。これは紙幣の発行額に見合う資産がないと海外から判断されれば通貨の暴落を引き起こす。それが国債に及べば保有するGPIFも多大な損害が発生する。それだけでなく生損保金融機関も多大な損害が発生する。国債の発行に国家予算の3割を依存する日本政府も影響を免れ得ない。
つまり資産として株式を当てにすることは現実難しいということだと私は考える。日本株式市場の2大株主である年金と日銀が株式を買うというのはそういうことである。彼らが筆頭株主として保有するのは日本の名だたる企業だ。売却は彼らの業績にも影響するだろう。当然景気への影響は不可避だ。
年金機構の株式売却が日本株式市場に影響を与えるということが判りながらなぜそういう策に出たかを考えれば現在の政権の目論見が見えてくる。株価は最も身近な経済指標である。これを日銀と年金で買い支えれば当然株価は上昇する。それにNISAや日銀黒田との異次元金融緩和で株式市場への資金流入を続けてきた。これが景気が良くなっていることの証拠としたいのである。
過去株価は景気の先行指数として機能した。それは企業業績が上昇し賃金が上昇しGDPの8割以上を占める内需が拡大することが期待されそして実際そういう結果を示してきたからであろう。だが株価の上昇分と実質賃金を比べれば相関があるとは言えない。名目賃金は上昇しているのだろうが物価上昇分を相殺しているとは言えない。
物価上昇は日銀が目標としたもので当初から想定済みだ。というかその目標値に届いてもいない。だが異次元の金融緩和は民主党政権末期130兆円だったものを2019年3月時点で500兆円を超えるマネタリーベースとなっている。その差370兆円は日銀の当座預金残高の増加分340兆が引き受けている。つまり民間銀行に流れているのだ。実際に紙幣貨幣の流通残高は30兆程度しか増えていない。30%程度の増加だ。そして物価上昇はもっと低い(5%程度)。ということは銀行がその金融緩和のほとんどを引き入れ、市中にその1割程度を回したが、実際の流通はさらに偏在的になり景気実感のない状態が生じたということだ。
本来はそこから民間に融資をし、市中の資金流通量を拡大して景気拡大と物価上昇(市中の金融流通量増大のため)を図っていたはずだ。だが人口動態からの人口減など景気拡大に懐疑的な企業はそれに反応しなかった。またバブル期の銀行の無理やり貸付貸し剥がしする悪行も念頭にあったかもしれない。とにかく資金が市中に流れることはなかった。
そのかわりに国債などの債権を買い日銀との間でループさせて収益を図った。さらに不動産や株式などの投資に運用した。株式と同様地価の上昇がよく報道されているのは実感されるところであろう。そして手数料収入とで銀行はしのいでいる。
株価の上昇はこういったもの反映であり実体経済の拡大ではないのだ。企業の収支は金融緩和などで改善している。だがその多くは過熱した株式市場に対応すべく配当や内部留保に向かった。実際これらの拡大が報道されている。給与の増大分はそのため抑制され、その結果多くの皆様が実感する通り収入が物価上昇を超えて増加しなかった。そして各種アンケートで生活実感を調べても7割近くが不景気と答える。
ただこの株価や国債の市場価格が維持されると確信できるならばそう問題はない。実際はまだ円高傾向を示すことがあるし、国債の利率もほぼゼロ金利で安定している。それは現状の日本がまだ危険視されていないからだ。だがこの先はどうであろうか。
2013年石原慎太郎と安倍晋三は福島はアンダーコントロールと嘘をついて東京オリンピックを招致した。だがオリンピック開催国のその後を皆様は考えたことがあるだろうか?ソウルオリンピックから8年後韓国はIMF管理下に入る通貨危機が訪れた。ギリシアもイタリア(トリノ)もイギリス(EU問題)もブラジルも経済危機が訪れている。アメリカでさえソルトレイクの7年後にリーマンショックがあった。中国は成長こそすれその減速がしばしば報道されている。
それは何故か。景気の先食いだからだ。祭りのような騒ぎで景気を先食いしてオリンピックを迎え、過ぎると熱が冷めたかのように景気減速する。もっとも昭和の東京オリンピックやシドニーのようにインフラがまだ貧弱な場合はそう減退もしない。中国などもその部分で助かっている部分があるだろう。
だが日本の現在は消費増税や不景気感の蔓延した消費動向だ。4kテレビなどを消費起爆にしたいのだろうが思惑どおりにはならない。東京開催でなければインフラ整備による景気拡大もなされたのだろうが今更東京に新しい道路やインフラが増えたところで何の影響もない。ただでさえ東京の人口一極集中で地方が疲弊化しているのを加速させているだけだ。
そのうえに少子高齢化による労働力減少が不可避となる。さらには日本の学術研究の凋落が著しい。これから先の科学研究や技術革新の面でおそらく大きく影響を与えてくるだろう。人口が減少し、単純労働は機械化され、先進技術からの遅れが出る。さらに日本の国土資源を考えれば輸入は不可避だろう。そんな状態でオリンピック後の不況が訪れればどうなるだろうか?
日本は円高になると憂鬱な報道がされる。だが日本は韓国と異なり内需が8割を占める。ということは円高であるからこそエネルギー食料鉱物などを経済的に輸入を可能にする。円安になれば輸出企業の利益や海外での運用益などは上昇するだろう。だが国内的には物価の上昇が避けられない。企業が増大した利益を国内で還元しないのは配当や内部留保など上述した通りだ。
さらに消費増税でオリンピック前のお祭り効果もないことが判っている。さらに東京オリンピック開催で当初予算から異常に膨大したインフラ整備などの開催費用が国民のツケとして残る。そして東日本大震災後に発行された国債の償還が2021年にも訪れる。このオリンピック騒動で得をしたのは誰か考えればいかに危険な選択をしたか想像できるものだと思う。
日本は海外の評価次第ですぐに絶望の底に落とされる危険性を孕んでいる。アメリカもEUも日本と同様金融緩和を行い景気回復を図った。だが両者とも今出口戦略を見ている。アメリカは気が触れた大統領の独裁政治のため躊躇しているがあくまでも時期待ちである。だが日本の緩和というのは黒田日銀総裁も言っているよう異次元の量だ。
日銀の収支に世界が危機感を覚えば通貨安や国債暴落は一挙に津波のように襲い掛かるだろう。そうなれば年金の破綻・生損保金融機関の破綻などが起こる危険性を認識できるはずだ。これが絶対ないといううえでの年金機構や日銀の政策ならば安心したらいい。だが取り巻く状況はそうではないと思うのだ。
政府は小渕政権以降国債の乱発をし景気浮揚を図ったが潤ったのはその財政出動から還流される政治家の懐に過ぎなかった。その結果膨大な債務を持つに至っている。国の借金はすなわち税金で償却するしかない。政府は営利企業ではないからだ。ということは税金を上げ社会保障などの政府事業を縮小し債務返済をするしかない。
そのなかで民主党政権も含めてだが政府予算を拡大し続けてきた。そのなかには加計学園の獣医学部など怪しい案件も多々あった。本来は国民に見える形で政府予算の優先順位をつけ、国債の発行額を決めたうえでその中でやりくりする予算編成が必要だったはずだ。だが今までの政権は全てそれをしなかった。
私が心配するのはこれから5年先10年先だ。おそらく景気は後退しているだろう。だがマネタリーベースは減らない。減らそうとするなら金利を上げるしかない。だが金利上昇は財政のための国債発行をさらに増やす必要性が生じる。さらに不景気化での金利上昇は恐慌を引き起こしかねない。だが日銀あるいは日本政府の金融政策や財政にマネタリーベース量に資する信頼を世界が失ったら日本の思惑と別にそういう状況は起きるだろう。
ちなみにアメリカのマネタリーベースは3兆3400万ドルだ。1ドル110円で日本円に換算すれば370兆円程度になる。日本のGDPが約5兆ドル(550兆円)、アメリカが20兆ドルということを考えればいかに異次元な状態かが想像できる。アメリカがGDP比6分の1の金融緩和を議論している中、日本ではほぼGDPに匹敵する金融緩和を今も継続すると公言している。安倍首相も出口戦略と言いながらも具体的な話は一切出てこない。というかおそらく理解できないのだと思う。
金融緩和をまだやり続け、日本の現状では金利上昇が実質不可能ということを考えれば、この令和の時代がいかに悪寒の走る状態であるかが想像できよう。日本は資産があるから借金があっても大丈夫という意見がよくあるが米国債を売る勇気のある政治家はいるのだろうか?国有地を一斉放出して地価の暴落はどうするのか?道路や公共施設のインフラなどは不況下で買い手がつくのか?恐慌覚悟で株を売っぱらえば相場はどうなるのだろうか?
そのつけは全て国民にくる。道路がもし外資に買われたら通行料金が跳ね上がるかもしれない。役所が外資に家賃を払えばそれだけ税金は搾取される。もし中国のアジアインフラ投資銀行の管理下に入ったらどうなるのだろうか?
今目の前に日本はこれだけの危険要素をはらんでいる。もしこれが私の誤解ならばいいなと思う。だがそう思わせてくれる記事は見たことがない。アメリカは日本のパートナーだから決して日本が潰れるようなことをしない、という人がいるならおめでたい人たちだ。
かなり悲観的な内容を書いてきたが私はもうそれを回避するのは困難だと考えている。なにかあるとすれば日本が世界を震撼させるぐらいの特殊な技術や開発を寡占することだが現状の日本の研究開発はその世界順位を落とす一方だ。
金融緩和、オリンピック全て現政権が推進してきたものだ。政権復帰の自民党政治を国民は看過し続けた。民主党政権発足時6700万人の有権者が選挙に行った。だが現在は5000万人程度しか行かない。これが日本国民が自国の未来に無関心になった証拠だ。自民党支持者が増えたわけではない。ただそれに警鐘を鳴らそうとする人たちが減ったのだ。京阪神の人口と同じくらいの有権者がだ。
選挙に行かない5000万人がこの状態に置いた。残念ながらその結果は日本国民すべてが甘受せねばならない。そしてこれからもこの政権が続くだろう。そしてオリンピックが終わったところでお腹が痛いと辞めるに違いない。大勲位を頂いて。
そして政権交代しようがしまいがその立て直しは困難を極める。それを安倍首相はほくそ笑みながら見ているだろう。下関のパチンコ豪邸でかどうかはわからないが。政治家はおそらくその責任は取らない。そして歴史に残る経済愚策とこの金融緩和はいわれるであろう。
私はおそらく令和の終わりごろに生きていれば晩年を過ごすことになる。その頃にはおそらく姥捨て山の社会が待ち構えているのではないかと想像している。だがそれも日本人の選んだ総意だ。付き合うしかない。令和はそんな覚悟の時代になる。身構えながらも冬ごもりの準備をしておこうと思う。