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ステロイド(カンフル剤) ~ その2 「スピードを上げる」

2007年01月31日 | 中級テクニック
 調子が悪いときに服用するもう一つの特効薬が「スピードを上げる」ということです。前の記事で紹介したのが「スピードを落とす」ですから、全く矛盾した表現に聞こえますが、実はスピードを上げることによって、小さくしっかりと回れるようになるのです。

 スピードが不足しているということは、色々な悪さをもたらします。
 スピードが足りないので、バイクを倒せない。つまり遠心力が足りない。倒せないのでハンドルが切れず、曲がっていかない。
 スピードが足りないので、ブレーキを使えなくて、そのためにフロントサスペンションが縮まず、セルフステアが利いてこない。
 スピードが足りないので、コーナリングの途中に失速してしまう。倒れるのが怖いので、アクセルを開けるとギクシャクし、膨らんでいく。

 スピードを上げるためには何をしたら良いのでしょうか?
 まずは、そのコーナーに向かう時に「アクセルを開ける」ことです。次のコーナーにアプローチするスピードを作るためには、何が何でも加速してスピードを作る必要があります。
 次に、ブレーキの開始を遅らせることです。ブレーキをコーナーの手前からかけ始めると、その分加速の時間が短くなり、かつ、コーナーへのアプローチのスピードが落ちます。
 さらにブレーキをかけ過ぎないことです。ブレーキを長い時間かけることによって、スピードが落ちて行きます。
 こうしてスピードを保ってコーナーにアプローチすることは、とても怖いのですが、そこは頑張ります。ただし、注意するべきことは、ブレーキを強く残してハンドルを突っ張るような体勢にならないようにすることです。スピードを残そうとするとブレーキを強く短くかけて、短い距離で減速しようとしがちなのですが、そうするとハンドルを突っ張るような体勢になって、結果としては速いスピードで突っ込んでいるのですが、バイクが曲がっていかない状況に陥ってしまいます。
 スピードを上げるという観点からすると、最後のブレーキングは緩めて、その結果、いつもの自分から考えるとオーバースピードだと思えるようなスピードを残してコーナーに入っていくということです。
 そうすると、事前に考えるとスピードが高い分、大回りになる筈なのですが、実際にやってみるとフロントフォークが縮んですっと小さく回れるという結果が得られることがあるのです。



 実際のラインで考えてみます。まずは初級クラスの人で、スピードが落ちすぎてバイクが倒せなくなって、その結果、回れなくなるパターンです。バイクが倒せないので、セルフステアも利かず、大きく回ることになってしまいます。この場合、上図の黒いラインから緑のラインに差し掛かった時点でスピードが遅いので、倒れるのが怖くて車体を倒せないのです。
 初級クラスの人は、倒すのが怖いのですが、スピードを出すことを同時に怖がる傾向があります。実はそれが錯覚で、スピードをあげないから倒せなくなるといううことに気が付いていません。ブレーキをかけ終ってから倒すのではなくて、ブレーキを引き摺ったままバイクを倒すという概念を身に付けないといけません。減速し切ってしまってからは倒すのは難しくなるのです。そうなると速度を落としてハンドル操作だけで旋回することになってしまいます。



 次に、こちらはスピードが落ちたところで倒し込む技量を持っているひとの場合です。スピードが落ちてから倒すと、ハンドルはカクンと小さく切れ込み、旋回半径はうんと小さくなります。従って、本来あるべきアプローチスピードよりもスピードを落とし過ぎていて(ブレーキが早過ぎるorブレーキが強過ぎる)しかもセルフステアを妨げないような操縦をしているならば、目標とする青いラインに対してもっと小さい旋回に「なってしまう」のです。
 上級者であっても、例えばエンジンブレーキの効き易い車両に乗り換えると、直後、減速の強さが読めなくて、思ったよりも小さく回ってしまうことがあります。上級者の場合は、「小さく回ってしまう」のではなくて「失速してしまった」と表現するべきなのですが、理屈は一緒です。

 こうして減速に引き摺られて旋回半径が小さくなってしまうとパイロンに当たらないようにバイクを起こすか、もしくはアクセルを開けてスピードを回復しなければならなくなります。このアクセルコントロールはたいへん微妙で難しいので半端に開けると赤い線で描いたようにラインが崩れてしまいます。
 このアクセルコントロールに挑戦するよりも、まずは進入の速度を高めることが早道なのです。進入速度が高くなると曲がり終わりかける時の速度が上がっていて、エンジン回転も高いので、アクセルがあけやすくなるのです。そこでパーシャル・スロットルに合わせ易くなるので、コーナーからの脱出がスムーズになります。

 スピードを落として小さく回り、早く回り切ってバイクを立てて(そこでエンジン回転は落ち切っているので)大きくスロットルを開けて一気に加速していくのがよいか、スピードを残して大きく回り、エンジン回転が残っているうちにスロットルをパーシャルにして、徐々にスムーズに加速するか。この二つの選択は、ライダーの技量、スタイル、好みと、車両の特性の組合せによって答えが変わります。また同じライダーと車両の組合せであっても、その日の調子やライダーが上達することによって時間軸上でも変わっていきます。
 ですから、自分が小さく回るタイプだと思っていても、それが行き詰ったなら「スピードを上げてみる」というトライアルが有効な可能性があります。逆に自分が高いスピードで回るタイプだと思っている人は時には敢えてスピードを落として小さく回る走り方を試してみると良いわけです。



 もう一つの例です。小さく回るタイプの人は、図のように小さく回る結果としてコーナーを分けて走っている場合があります。図に示された円弧がその人にとって、ちょうど気持ちよく回れる旋回半径なのです。もしくは人によっては「スピードを落として回る」のではなくて「スピードが落ちてしまった結果として小さく回っている」ということもあるでしょう。

 ライディングスタイルは本当に人それぞれですから、このようなラインが気持ちよければそれはそれで良いことです。しかし、それが「走らされ感」につながっているときには、進入速度を高めるというステロイドを試してみるとよいでしょう。



 敢えてスピードを残して大きく回ることによって、全体がスムーズになったら成功です。コーナリング後半の赤点線の部分でアクセルを徐々に開けることができると全体のスピードがあがり、またギクシャクしません。その瞬間に、もしかしたら今までと違う景色が見えるかもしれません。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
勇気とスキルと気候 (ZEL)
2012-11-13 22:08:27
管理人様 こんばんは。
現在中級に通っております。ZELと申します。

コーナーへの進入速度を上げる(=ブレーキを遅らせる)、というのは現在の最重点課題としており、私にとってはまさにタイムリーな記事でして、非常に有難く拝見させて頂きました。
先日の受講の際に、オフセットではこの練習の効果のおかげか、途切れることなく回れたのですが、記事の後半にもありました、大きな旋回半径のコーナーがてんでいけません。イントラさんからも、"オフセットと同じように回っちゃダメですよ"、と毎回のように指摘を頂いてしまっております。私の場合、まさにコーナーを分けて回ってしまうタイプで、結果として回り終わるまでに時間がかかり、常連の方々についていけない、という事態になっています。なんとか打破をと思うのですが、今日走行していて感じたのは、
1.進入速度を高めようとしてスピードを上げると怖くなって目線が遅れる
2.目線が遅れるので、ブレーキが強くなって結果として過剰に速度が落ちてしまいスピードが残らない
3.スピードを出した状態で大きく旋回しようとすると、傾けすぎてステップを擦ってしまい、とても怖い
4.スピードを出した時のバイクの捌き(ヒラヒラとパイロンをよけて行く)がそもそも出来ない
というのが分かってきました。
1だけは少し感触を掴めてきた感がありましたが、特に3、4が重症です。スピードを出しながら一気にバイクを傾けるという挙動が現在のところクリアできずにいます。気候的にも難しい時期なのでしょうが、次回のスクールでは是非挑戦してみようと思っております。
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>ZELさん、 (@sushi)
2012-11-14 21:16:46
こんばんは。
コメントありがとうございました。
進入スピードを高めるというのは本当に気持ちと技術のせめぎ合いというところがあって、レベルを上げていくことは本当に大変です。
私自身でも、失速(スピードの落としすぎ)をいかに克服するかというのは、今でも状況によって課題になります。

一つ経験から言うと、進入速度を高めるためにブレーキを遅らせることでブレーキが強くなり失速してしまうと感じている時には、逆に早めに弱いブレーキをかけて、それを引きずりすぎないように早めにリリースしてスピードを残して速い速度で大きく回るということを試してみるとよいです。そういう試みの中で、どれくらいまでコーナリングスピードを高められるかを探ります。
あとは、自分より少し速い人の後についてこれくらいのスピードでもこのコーナーは回れるのだということを確認するということも大切です。
色々と足掻いてみることがバイク道ですね(笑)

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ありがとうございます (ZEL)
2012-11-14 21:47:03
管理人様
私の拙い文章にコメントを頂きありがとうございます。

ブレーキの按配は初級からの課題で、特に前ブレーキの引きずりに苦労しております。スピーカーのボリュームを調整するようなアナログな操作を目指していますが、まだ時々ガツンとなってしまい、それが全体としての速度バランスを崩しているようです。次回は是非ともこの調整に挑戦してみたいと思います。
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