先日ジョニー・デップ主演、クリストファー・ノーラン製作総指揮、 ウオリー・フィスター監督の映画『トランセンデンス(超越)』を観た。
2014年公開の映画の内容はまるで、ユヴァル・ノア・ハラリ著の本『ホモ・デウス』を基にしたのか?と思わせるような内容・・・AIの研究者の脳をスーパーコンピューターにインストールしてナノテクノロジーとバイオテクノロジーなどを駆使し、地球の環境破壊を回復したり彼ら夫婦が理想とする世界を構築しようという話であるが、本が出版されたのが2016年であるから、もしかしたら著者がこの映画を参考にした・・・のかもしれない?
『ホモ・デウス』では人間が将来、寿命も身体機能も自在にコントロール可能な神的存在…になるであろう、という予測を書いたものであるが、映画はそれを実現しながらも、そういった状況を恐れる反テクノロジー過激派グループや、それまで信頼のおける仲間と思っていた研究仲間でさえも『あまりにも絶大な能力を持ったコンピューターに支配されるのでは…』という疑心暗鬼から彼の妻の体内に『コンピューター・ウイルス』注入して夫の電脳スーパーコンピューター破壊に手を貸す…といった内容であった。
『インターネットで世界は狭くなった・・・だが、ない方が狭く感じる…』という意味深なセリフはこの破壊工作から5年後の回想でこの映画が始まった。
ジョニー・デップ演じる博士が講演する場面で
『自我を持つAIがネットでつながれば人類を超える・・・これを一般に特異点(シンギュラリティー)と呼ばれるが、私はこれを超越(トランセンデンス)と呼ぶ』と言う。
質問者から『あなたは神を創りたいのですか?』と問われ、『人類はむかしからそうしてきた…』と答えた。
博士は過激派から発砲を受け死ぬが、彼の脳はスーパーコンピューターにインストールされる。
博士の古き友人であり、師匠的存在の黒人俳優モーガン演ずる博士がモニターに映るジョニー・デップの顔を観て驚嘆しながら『自我を証明できるかね?』と尋ねると、『難しい質問だ、タガー博士。君はできるか?』と逆に尋ねた・・・これはこの映画の中の重要な場面だったと思う。禅の公案そのものであったと思う・・・。
映画は、人間の意識+AIという人智を超えた力を持った存在に対して『ウイルス』を持って対抗し、そのために人類はそれまで構築したネットワークすべてを喪失し、世界中のすべてのコンピューターは完全に機能を停止され、コンピューター制御にたよっていた全ライフラインはストップし世界は大停電に見舞われ文明は崩壊する。
それって、2020年に我が地球上に起きた『新型コロナウイルス』が我々の生活全般において『万事休す』を思わせる状況…に似ていないだろうか?そしてそれは天からの令で?『万事休す』することで聞くことができる太陽(コロナ)からの『音信』メッセージではないのか。
映画の中で起ったと思ったAIによる『超越』はいまだ真の『超越』ではなく、自分を破壊するコンピューター・ウイルスと知りながら、『妻のウイルス』を『妻の愛』と共に受け入れた博士の行為こそが『超越』であり、同僚のタガー博士の質問『自我の証明』の答えであったということがわかる。