今日、当ギャラリーにて展示する作品も初公開で、『背中の肖像』という基本顔が見えない写真で構成されている。
私の『撮人家』としてのキャリアは21歳で写真学校に入学した時より始まりますが、『モノクロ』&『人間』を主題とする・・・
を原則に35、6歳までなんだかんだ撮影していましたが、2度目の禅修行以降、スイスに在住し、安定した会社(引越屋)に就職するまでの
約25年間ほど写真活動を休止していました。
この期間は、写真のアナログ銀塩写真からデジタル化への移行の真っ最中の時期で、25年の歳月を経て写真界に戻ってきた時、
私は浦島太郎の心境でした。
2003年にMacを買い、2006年に最初のデジイチ・キャノンを買った時からPhotoshopで現像するようになり、曲りなりに写真活動再開となりましたが
スマートフォンやコンピューターの発達に比例して、昔のように街なかの人々を勝手気ままに撮影することが憚れる世の中になっていました。
何が驚いたかと言って『自由に人を撮影出来ない状態』・・・になった世の中の変化ほど『撮人家』としての私を驚かせ、嘆かせた事はありませんでした。
しばらくショック状態で・・・猫などを撮ってましたが・・・。
友人のスイスの禅僧、道海さんのこの写真を撮った時、私は『背中の肖像』を撮ろうと閃きました。
最初は肖像権に対する抵抗運動としての気分が大きかったのですが、だんだん『後ろ姿』も主張している事に気づき始めました。
4年に一度、Veveyの街ぐるみの写真展がり、広場で見かけた『老人の背』の写真
違う年の、同じVevey街の女性写真とそれを見上げる男の後ろ姿
この写真は今住んでいる街、モルジュの駅での一幕
年配の女性の背中には『イエスの再来』のメッセージを掲げて駅周辺をうろついている人の姿。
なんと、川の中にベンチを設置して川の流れ音を鑑賞する・・・という知人アートディレクターの企画
数年前まで住んでいたローザンヌでの街の風景・・・日本で言う『ネズミ捕り』ではなかったよう・・・。
スイスアルプス地方では年一回『デザルプ祭り』といって、夏の間アルプの草を食べていた牛たちが
秋になって、群れになって降りてくる行事の際のワンシーン。民族衣装の牛飼い。
こちらもスイス・ウルネッシュ村での祭りのワンシーン
パリで毎年行われる写真フェス『パリ・フォト』での会場でみかけた風情
夏の間、2〜3ヶ月スペインの島で過ごす義父の後ろ姿
スイスの田舎で見かけたシーン・・・『今どきの若いもんヮ…』と言っている老婆の声が聞こえるようだ。
まぁ、こうして観ると『人の後ろ姿』も色々物語って面白い・・・ものだなぁ〜と思う。
私の若き日には考えもしなかった『背中の肖像』、場合によっては顔の見える写真よりも心情が読み取れる『背中』の表情は案外『表現』豊かであった。