その孫のウィンズローとその家族の生活などがNHKの「ターシャの森から」で放送されている。
ウィンズローの娘、エリーとケイティはのびのびとバーモントの山奥で、動物たちと触れ合ったり、庭仕事を手伝ったりする中で色々なことを学んでいるようだ。
ゆったりとしたウィンズローはきっと良い父親なのだろう。娘たちとの会話を聞いていると、考えるヒントを与えながら、様々なことを教えている。教育者としても優れているようだ。
そんな中で時折、ターシャのレシピを見ながら色々なお菓子を作るのだが、大きな体躯のウインズローはお菓子作りにおいては、そんなに器用ではないようだ。出来上がったお菓子は、けっこう不格好だったりする。でも、そんなお菓子を見ていると、私でも作れそうという気を起こさせてくれる。
以前見た放送では、チョコサンドクッキーを娘たちと作っていた。
クッキー生地を薄く伸ばして型抜き、焼いたクッキーに溶かしたチョコレートを塗って挟むだけ。
クッキー生地はバターをたくさん入れたものだと、気温が高いとダレて扱いづらくなるものだ。ウインズローが型抜きしたクッキー生地は調理台にくっついたりして、私はテレビを見ながら心の中で「生地が冷えているうちに、手早くやらないと…」などと思ってしまう。
のんびり屋のウインズローは、全く気にすることなく、多少歪んだクッキー生地もそのまんま天板へ並べて焼いてしまう。
それで良いんだと思う。
小さな事は全く気にしないおおらかさ。大自然の中で育まれたからだろうか。素敵なことだ。
都会育ちの私は、小さいことをいちいち気にしてしまう。
出来上がった少々いびつなクッキーに、ケイティとウインズローが溶かしたチョコを思い思いの量を挟んでいく。
ケイティに好きなようにやらせてあげながら、はさむチョコレートの適量をウィンズローは示唆していく。
出来上がったチョコサンドクッキーは家族みんなで、戸外で楽しくつまんでいた。
クッキーの形も見た目もどうでも良いことだ。みんなで楽しく食べるということが大事。
私も作ろう。
2月のバレンタインデー過ぎに、スーパーのワゴンで安く買い求めた大きな製菓用チョコレートが手つかずのままだ。
早速、自分の気に入っているクッキーレシピで生地を作り、薄く伸ばして型抜きし天板に並べて焼いた。
チョコレートの湯煎に取り掛かっていたとき、いつも気まぐれなオンボロオーブンの温度がなぜか急上昇。匂いで気付いたときには、“まっくろくろすけ”になっていた。
薄いクッキーはこれまで焼いたことがなかった。すぐに焼けるが焦げやすい。
天板2枚目は慎重に焼け具合を伺いながら、何とかちゃんと焼けた。その後、3枚目、4枚目と順調に焼いていった。
チョコレートを挟む作業は楽しかった。小麦粉200グラムの量で25個位出来上がった。焦げなければ、30個は出来たかも。
味は悪くなかった。2日目のほうが味が馴染んだのか美味しく感じられた。
溶かしたチョコが50グラムぐらい残ってしまい、翌日、辻口博啓さんのレシピで、バター、卵、ココア、砂糖を加えてフォンダンショコラを焼いてみた。
このレシピでは小麦粉を使わないので、印刷ミスではないかと心配しながら焼いてみたが、ちゃんと形になり、味も上々だった。
2つとも初チャレンジ。失敗もしたけど楽しかった。
出来上がったクッキー半量とフォンダンショコラ1個を息子に持たせた。
私がターシャ・テューダーのファンであることを息子は知っている。一時期、私が「ターシャが素晴らしい」と騒いでいた事があるからだ。
私の退職後、息子に「これからは、ゆっくりとお菓子を焼いたり、絵を描いたりしたら。〇〇・テューダーとして」と冗談めかして言われた。〇〇の部分には私のファーストネーム。そう言われた瞬間、ちょっと嬉しかった。
とはいえ、ターシャは自分の洋服を機織りで布から作るような人。絵本作家で挿絵画家であり、園芸家、人形作家などなど、才能の塊のもはや伝説の偉大な人だ。
「ターシャの森から」で、ターシャの遺伝子が引き継がれたエリーやケイティ、ウィンズロー一家の生活を眺めながら、もの作りを刺激され、自然の中の生活の良さを再認識する。
テレビ画面越しに見るターシャの森は、都会の現代人に人間らしさを思い起こさせてくれる。