娘が幼稚園の年少さんの頃の話だ。
幼稚園から帰宅し、同じ年頃のお友達数人と遊ばせていると、「まぬけや…」「まぬけや…」と、会話の中に頻繁に聞こえてくる。
「まぬけや?」何の事だろうか?
確かめたいのだが、こっちはこっちで少し離れたところで、ママ友達と話をしている最中なので、中断する訳にもいかず、気になりながらも確かめることが出来なかった。
家に帰ると、慌ただしい日常に紛れてその言葉も忘れてしまっていた。
別の日、ママ友から子供を預かり、娘と遊ばせているとまた、かの不可思議な言葉「まぬけや」が聞こえて来る。
よくよく聞いてみると、「こっちのまぬけやの方が素敵」とか「このまぬけやかわいいね」などと話している。
子供達が何をしているか覗いてみると…。
子供用のマニュキュア(マニキュア)を指に塗って遊んでいるのだった。
なんの事はない。「まぬけや」は「マニュキュア」だった。
まだ口の良く回らない3歳児には確かに発音が難しい言葉。それで「マヌケヤ」となっていたのだった。
マニュキュアが“まぬけや”とはねぇ。
小さくお洒落な女の子達の遊びを眺めながら、可笑しくも可愛いなと思った。
その2
小学生の息子とお笑い芸人の話をしていた時のこと、話の流れで調度
「私は芸が好きなの」と言った時だ。
話の途中から娘がその部分だけを聞きかじり、真面目な顔で「お母さんはゲイが好きなの?」と心配そうに聞いてきた。
そっちのゲイの話じゃ無いよ。
好きとか嫌いとか偏見はないけど、娘の誤解は解いておいた。
その3
お昼にお蕎麦を用意した。
「今日は山菜蕎麦にしたよ」と私。
それを聞いた娘が神妙な顔をして、
「4歳だけど食べても良いの?」
と聞いてきた。
山菜蕎麦…3歳そば?だと思ったかな?
食べても良いよ、何歳でも。
可愛い勘違い。
その4
私は体が丈夫な事が自慢なのだが、息子が幼稚園の時に、珍しく体調を崩したことがあった。
友人と電話でその話をしていた時の事だ。
「体調崩したって?どうしたの」と友人。
私は友達に病名を告げた。
「膀胱炎」
話を短めに終え、受話器を置いたとき、息子が突然
「僕も行きたい」と、突然言い出した。
えっ?どこへ?と聞くと「その公園」と言う。
公園…?「ぼうこうえん?のこと?」
“こうえん”違い。
息子に公園の名前じゃなくて病名である事を告げた。
公園じゃ無くて、残念だったね。
この話、後日、新聞の“子話”欄に投稿した所、採用されて、3,000円頂きました。息子に感謝。
その5
学研の科学と学習という学習雑誌があった。
子供が小さい頃、それらの雑誌を普及、販売する「学研のおばちゃん」をやっていた。
私自身、かつては小学校で扱っていたそれらの学習雑誌に親しみ、楽しくて大好きだった。
教材は、子供が楽しみながら自然と学習が身に付くよう、良く工夫されたもので、自分の子供にも体験させたいと言う思いもあった。
1年生の教材だったと思うが、魚釣りセットがあった。
先端に磁石が付いた小さな釣り竿と、様々な魚が描かれた台紙があり、切り抜いて魚の口にそれぞれ、ゼムクリップを付ければ、セット完了。
磁石の先端をゼムクリップに近付け魚を釣り上げるという物。
実際にやってみると、釣り糸の先端の磁石が揺れて目標に定まらず、コントロールが要求されるゲームである。
釣り竿が1つしかなかったため、自宅にあった磁石と古いお箸、木綿糸を利用し、下の子の釣り竿も作った。
魚も色々な種類を紙に描いて、自作の魚達も切り抜いて数を増やした。
ソファーに寝そべっている夫のすぐそばの床に魚をばらまき、子供達が釣りを始めた。
私は台所で家事をこなしながら、時々子供達を覗いていた。
しばらくすると夫の大きな声で、
「つったー。つったー。」
まるでクジラでも仕留めた様な、大げさな声である。
やれやれと思いながら、
「何釣ったの?」と聞きながら側へ行ってみると
「足!足がつった!」
と、苦渋に満ちた顔で足をさすって痛がる夫。
夫には悪かったが、「つり」違いにみんなで大笑いした。