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ポジティブな私 ポジ人

ネタバレ無念 

I’ll be back
この一語を聞いただけで、ファンなら誰しもわかる映画、「ターミネーター」
(1985年公開)

日本人にはシュワちゃんの愛称で親しまれているアーノルド・シュワルツェネッガーが、悪役で出演する事でも話題となったSF映画だ。

この‘I’ll be back’のシーン、“殺し屋シュワちゃん”がヒロインを追いつめる緊迫した雰囲気の中、最も意外で大胆でちょっと笑える見せ場となっている、とても印象的な一場面だ。

言うまでもないが、何度見ても面白い傑作中の傑作映画だ。

今から35年以上前の事。まだ公開前に映画雑誌などの事前情報で凄い映画だと知った私は、試写会情報を見て、直ぐに応募した。

その頃私は、より多くの映画を見る為に、せっせと試写会の応募ハガキをあちこちのポストへ投函していた。

ターミネーターに関しては、複数の試写会情報を得ていた為、大量のハガキを応募していた。

ある日郵便受けを覗くと2枚の試写状が届いていた。
見てみると1枚は念願の「ターミネーター」もう一枚は「白と黒のナイフ」。
試写日はどちらも同じ日。体が2つ欲しいと思った。

どちらの試写状もせっかく当たったのだから、無駄にしたくない。
そう思って、特に映画ファンという訳ではない夫に行ってもらう事にした。
行ってもらうのだから、より面白い方、絶対ハズレのない作品「ターミネーター」の試写状を渡した。
自分は「白と黒のナイフ」を見に行った。

「白と黒のナイフ」は当時人気のあったグレン・クローズとジェフ・ブリッジス共演のサスペンス映画。
「白と黒のナイフ」は、まあまあ楽しめた。

その夜、お互い別々の試写会場から自宅へ戻った。

私が先に帰宅して、まもなく夫が帰宅した。
居間に入ってきた時から、夫が興奮しているのは感じられたが…。

「映画が凄く面白かった。」と始まった夫の話。日頃は無口な人なのだが、鼻息荒く、話はどうにも止まらない。

夫の話によると、映画が終わって場内が明るくなると、一人の男の子が開口一番「あー、面白かったぁー」と言い、その声が会場内に響いたと言う。その場にいた会場内の人達の気持ちを正に代弁するかの様な一言であったらしい。

それから、ストーリーのあらすじと、どれだけ面白かったか、事細かに全て、全部、漏れなく私に話してくれた。

普段は無口な男である。それが、「ターミネーター」の面白さに珍しく饒舌になってしまったのだ。

元々映画ファンと言う程映画を見ている人では無い。だから、映画ファンなら絶対に気遣うネタバレについても、気遣いは皆無。
それより、今見てきた映画の面白さを映画好きの私に伝えようと必死だったのだと思う。

全て1から10まで聞いてしまった。
夫に悪気は無い。それはわかっているけど。

それから数日後の事、郵便受けにもう一通の「ターミネーター」の試写状が到着した。
まさか、そんな事になるとは。

夫はその試写状を見て、初めてネタバレの事を悟り謝ってくれたのだが。

試写会に行った。
全て夫が話した通りの内容。それをただただなぞる観賞となった。
嗚呼、あゝ、あぁ、無念!
ストーリーを知らずに見れたなら…。

会場全員が興奮の渦の中。
最高に面白い映画。

それなのに、現在の自分より数倍記憶が良かった為に、明かされたストーリーがまるごと記憶に残っていた。だから“一度見た感”が半端なく、無念さを抱き会場を後にしたのだった。

「記憶が良くて残念だった」とは何とも皮肉な事である。

現在の私はと言えば、直近で一度見た映画すらも、クライマックス位になってからやっと「この映画見たかも…」と気付く有様。
情けないけど、同じ作品が何度でも初見の状態。何度でも楽しめるけど、これは喜ぶべきか悲しむべきか…。

この今持っている“直ぐに忘れる能力”があの時あったなら、もっと「ターミネーター」をタノシメーターのかな…と思わずにはいられない。残念。




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