今回の目的地は、1日目が北海道大学苫小牧研究林の森林資料館と、2日目はカムイサウルスの全身骨格を見に穂別博物館へ行くことだ。
息子と二人きりの小旅行に、何だかドキドキした。
7月13日土曜日早朝に、近くの千歳空港行きのバス亭に向かう途中。グレーの歩道に鮮やかな花一輪。
アサガオの花が落ちている。誰が手折って捨てたのか。そう思ってよく見ると、何と歩道の脇からツルが伸びていた。種がこぼれて歩道の隅で芽吹き、美しい花まで咲かせた。
早起きは三文の徳と言うけれど、今朝はとても素敵なものを見た。
息子との旅がきっと楽しいものになる、良い兆しだと感じた。
バスに揺られ、ほぼ午前9時半に千歳に到着。
息子と合流し、彼の車で本日目的の苫小牧研究林へと向かう。
北大苫小牧研究林は私が苫小牧の高校生だった頃は「北大演習林」と呼んでいた。
当時バトミントン部に所属していた私は、部活で高校から演習林までを走った事があった。新入部員へのシゴキじゃないかと思った。ひーひー言いながら、部長の背中を必死に追って走った懐かしい青春の日々。
その日から1週間ほどはトイレに行くたび、太ももの筋肉痛に悶絶した。
そんな思い出の場所だが、半世紀も前の一度きりの事だけに、記憶など何もない。
息子の車は次第に緑深い道へと入り、ほぼ資料館を目前に池の畔に差し掛かった。息子が車を止め、「散策してみない?」と声をかけられた。
美しい池の畔なのだが、よく見てみると、蚊柱のような小さな虫の大きな塊が目に入った。駄目だあ。飛び交う羽虫に私は恐れをなし、取り敢えずそこはスルーして、先ずは森林資料館へと向かう事にした。
日差しの強い日だった。
息子が広い駐車場に車を停めるのを見計らって、私はおもむろに「喉、乾かない?」と尋ねた。あらかじめ密かに用意していた、保冷バッグの中の冷え冷えの「さんぴん茶」を息子に差し出した。数日前に札幌のわしたショップで購入したものだ。
息子は今年1月、日本の最西端と最南端を目指し沖縄旅行に行っていた。そこでのさんぴん茶が美味しかったと聞いていたので、ささやかな息子へのサプライズだ。
「渇いた喉に、これが美味しんだよね〜」と言って喜んでくれた。さんぴん茶買ってきて良かった~。
私はさんぴん茶を飲むのは初めてだった。
「さんぴん茶はジャスミンティーと同じだよ」と息子から聞いていた。ジャスミンティーはそんなに好んで飲むことは無かったが、この「元祖さんぴん茶」は、飲んだ後にかすかに鼻に抜ける香りが控えめで、飲みやすく美味しかった。
さて、喉を潤し、車から出ると、駐車場の傍らに現在では使われなくなった黄色い古い重機が3台並んでいた。北大でかつて使用していた物と思われる。
車好きで、古いもの好きの息子は、それを見るなり気分がかなり上がったようだ。「ウニモグがある」と言って、早速写真に収めていた。
ウニモグは、私も知っていた。幼い頃から車好きの息子に、乞われるままに買った働く車の本に載っていた。三つ子の魂百まで、息子の車への興味は相変わらずだ。
私は駐車場の水たまりに飛び交う珍しいトンボに気を取られていた。
黒い体の真ん中に白く太い線。これは、昨年家族で大阪へ行った時、大阪城で初めてみたコシアキトンボではないか?北海道にも生息していたのか…北海道では初めて見た。
息子は古い重機、私は昆虫、それぞれがそれぞれに楽しみ始めながら、目的の森林資料館へと連れ立って向かった。
森林資料館は1977年に建築されたというから、私が高校生の時には無かったものだ。
入口から樟脳の強い香りが漂う。
スリッパに履き替え中へ入ると、木の標本が大量にあった。
最近、樹皮と葉を見て木の名前がわかったならどんなに素敵な事だろうと思っていたので、興味深かった。若い頃なら見向きもしなかった木の展示物だ。年齢と共に興味の対象も少しずつ変わって行く。
しかしながら、やはり何と言っても剥製である。息子が剥製の量が凄いらしいと言っていたが、1箇所でこんなに多くの哺乳類と鳥類の剥製を見たことはない。
つづく