工作で折り紙を切ったり貼ったりするのはいいのだが、折って作る作品には、ハサミを入れたり、糊付けするのは抵抗があった。あくまでも折る事だけで作品を完成させたい思いがあった。だからどんな素敵な折り紙の作品でも、一部をハサミで切って形を作ったりしていると、ちょっとガッカリしてしまうのだった。
でも、「折りバラ」に出会って、あの複雑な形を「折り」のみで成形していることに、とても感動した。
蕾のようなバラである。
三種の折りバラの内、最も複雑なカワサキローズは、老いのバロメーターにもなるのではないかと思っている。もし私がカワサキローズを折れなくなったら…。その時は認知症かも。
これまで私にとっての一番複雑な折り紙は「折り鶴」だったが、今では、「カワサキローズ(福山ローズ)」に取って代わった。
だがこのカワサキローズ、
「もうスッカリ覚えた。12分位で簡単に折れちゃうもんねー」
などと軽々しい気持ちで折り始めると、不思議なことに何処かで行程を誤り、中々完成にたどり着けないという時がある。
薔薇の呪い。
やがて、迷宮へ入り込み、「あれ?何で?あれ…」とややしばらく格闘することになる。
薔薇の迷宮。
悪戦苦闘の末、迷宮から抜け出し、いびつなカワサキローズが出来上がる。
そんな事があると、「二度と侮らずに、ちゃんと折ります」と心に誓うのだ。
思い一つでそんな事になるとは不思議なものだ。折る時の心構えが、折りに出る。
折りバラは、私にとって一種の“瞑想”かも知れない。
折る時は、ズレが出ないように行程に集中して無心だ。
美しく折り上がると嬉しいし、楽しい。出来上がったバラの花びらに、竹ひごを使って表情をつける。出来上がりを眺め、本物に近い美しさにうっとりする。
ハサミも糊も使わない、一枚の折り紙から出来たリアルなバラ。
一分ローズ
それが楽しくて、折りバラがどんどんたまっていく。空の菓子箱の中は、何箱も折りバラだらけだ。
ごく最近覚えたJAローズ。
蕾のようなバラである。
JAローズは行程が簡素で、キッチリと折り上がる。コロンとした形が手の平に収まりやすい。
手の平に乗せたまま、花びらにバラらしい形を付ける時、指先で折り曲げながら表情を付けるのだが、その時が正に手遊び(てすさび)という言葉にふさわしい。バラが可愛くなるように、と心を込める。
三種の折りバラの内、最も複雑なカワサキローズは、老いのバロメーターにもなるのではないかと思っている。もし私がカワサキローズを折れなくなったら…。その時は認知症かも。
ああ、折れなくなったら心が折れる。
いつまでもバラが折れますように。