記念館を出て、周辺を散策した。
この辺は、シカもよく通るようで、そこかしこに“落とし物”があった。真新しい物もあり、今しがたここをシカが通ったのだと考えると、それだけで何だか楽しくなるのだった。
森林資料館でいただいた地図。
こういう地図や資料は、いただいた時こそ見るべきなのに、現地にいる時は景色に目を奪われ、帰宅してから見るという事が多い。
自然の中に身を置くのは楽しく、心地よい。家族と一緒なら、より楽しいというものだ。
かわいい野イチゴ発見。
息子が池の畔にたたずみ、ここからの景色を眺めながら、感慨深げに呟いた。
「ここにシカでも現れたら、シシ神の森だね」と。
正にそんな景色に感じられた。森と水と空と太陽、自然は美しく尊い。
本日一番の絶景ポイント。
川のせせらぎと小鳥の声。時折私を脅かすブーンという大きな昆虫の羽音。
川を覗き込みながら「何かいるのかな?」と息子が言った。私は子供の頃よくやった様に、足で思い切り地面をドン!とやってみた。効果てきめん、カエルが草むらから飛び出てきた。驚かしちゃって悪かったな。
息子が写した恐らく心臓バクバクのカエル君。
これは、エゾアカガエルだろうか?
川沿を歩いたり、芝生を横切ったりしながら歩き回り、小道の脇にあった木に目がいった。
私にとって見たことが無い珍しい物だったので、写真に収めた。恐らく生えているのはキノコだとは思うが、ちょっとザワッとする不気味な倒木だった。
のんびりとお昼すぎまで散策を楽しんだ。
帰りには車で去る私たちをシカが見送ってくれた。
お昼は移動の途中で見つけたイタリアンレストランへ。
単品を頼もうとしていたのだが、ランチコースしかないという。二人ともあまりお腹が空いていなかったので、コースを1つ頼み2人で分けた。
後から知ったのだが、苫小牧では人気のお店だったようだ。確かにフォカッチャは焼き立てで美味しかったし、羊のミートボールパスタもこれまで味わったことの無い旨さだった。
カウンター席に座っていたので、オープンキッチンの中のシェフの手際の良い調理がよく見えた。
コースにはデザートとドリンクも付いていて、デザートが美味しかったのは言うまでも無い。
食後に一度息子のアパートに帰り、一息ついた。
日はまだ高い。
「何かやりたい事とかないの?」と息子に問われた。
やりたい事?
ある!
それは、息子とサシでお酒を飲むこと。これが秘かな念願だった。
夕方になって、息子の案内で少し離れた焼き鳥屋へと足を運ぶ。
懐かしい感じの焼き鳥屋だった。
小上がりの座卓へ。
隣の卓では、すでに6人ほどのオジサン達が出来上がり、楽しげだった。
息子とジョッキのビールで卓を挟んで乾杯。ビールはよく冷えていて美味しかった。
息子の2杯めは梅サワーだったろうか?私は冷酒を1合。
酔う前から私は何だか気持ちがフワフワしていた。
焼き鳥もお酒も美味しく、息子とのサシ飲みは夢心地だった。
私はお酒の好きだった父といつかサシ飲みをしてみたいと考えていたが、結局それは叶わなかった。けれど、ふとした瞬間に父と似た表情が現れる息子とのサシ飲みは、「楽しかった一日」を締めくくる最高の思い出となった。
ほろ酔い気分で夜風に吹かれ、息子のアパートへ戻った。
明日は穂別博物館だ。
つづく