その中の一編、「きりぎりす」を読んだ時、私が最も心に残ったのは、一人称で語る主人公の女性が、貧乏な生活が苦痛ではなく、節約しながらの生活が楽しかったと独白する部分だった。
貧乏な生活は誰だって嫌なはず、という認識しか無かった当時20代の私にとっては、それは強烈な印象となって記憶に残った。
それから20年後には、正に「貧しいながらも楽しい我が家」といったような4人家族となっていた。
下の子が小学校に入ったのを契機に、パートで働くことにしたが、共働きではあっても、先を見据えると、子供達の進学費用が足りなくなるのは明らかだった。
独身の頃から浪費するタイプでは無かったが、未来の為に、節約することで家計をやりくりしなくてはならない状況となった。
とは言え、私なりの節約道なので、人によってはこんなのは“ぬるすぎる節約”と思われるかも知れないが…
一般的に節約の基本の「き」はだいたいクリアしていると思うが、順にあげてみたい。
[節電]
・使わない照明は消す。
・長らく使用しない家電のコンセントは抜く等
[節水]
・お風呂の残り湯は洗濯の時に再利用する。
・食器を洗うときは、水道を極力出しっぱなしにしない。
・お湯は、必要な量だけをヤカンで沸かす。
コーヒーならコーヒーカップ一杯分のみ。
カップ麺ならそのカップに必要な量だけ(カップ型なら約300ccドンブリ型なら350cc)
沸かして使ったあとはヤカンに残るものは無い状態にする。
・電気ポットは我が家では使用しない。
[手作り]
・料理
私はお料理する事がどちらかと言うと好きな方なので、基本は手作り。その方がやはり節約できると思う。
おやつ作りは大好きなので、子供が小さい内はプリンやマドレーヌは頻繁に作っていた。市販で購入するよりはかなり安上がりだ。
パン作りも同様。
高級食パン流行りだが、主食に高額のお金を使う事に私自身は抵抗があり、買った事はない。
高級食パン一斤を3本購入する代金で、米10キロ買えると思うと…買えない。
・衣料品、小物など
幼児期は子供のズボンなど作ったりしたが、その内、手作りで色々作れるとわかった子供達にキャラクターのクッションや編みぐるみを作ることをねだられ、困った。結局作らされたが…。
[有料ゴミ袋の節約]
時折ごみ捨て場で10リットルのゴミ袋にちょっぴりゴミを入れたゴミ袋を見かける。お金持ちなんだなぁと思う。
我が家は基本5リットルのゴミ袋に、全体重をかけて圧縮したゴミを極限まで詰め込み、かろうじて持ち手をギリギリで結んで捨てている。
いつも「これだけ大量のゴミがこの小さなゴミ袋に入るのだろうか」と思いながら、結局ひとまとめにして悦に入っている。
徹底したゴミの分別も、最終的には節約につながる。
日本各地のゴミに関する決まり事は、地域によって異なる場合もあると思うが、私の住む札幌市では、「ビン、缶、ペットボトル」「紙類」「容器包装プラスチック」「枝·葉·草」が無料となっているので、こまめに分別すれば有料のゴミを減らすことが出来る。
台所の生ゴミ等はコンポストで堆肥にすれば更にゴミを減らす事ができるが、私の場合残念ながら園芸に興味がなく、栽培する土地のないマンション暮らし…おまけにベランダが西向き…ミニトマトを栽培してみたが、やはり西日しか浴びない植物は実の成りが悪かった、ざんねーん。
[ポイ活]
最近は皆さんも様々なカードを利用してポイントを貯めていると思う。
基本、私もクレジットカードが使えるものは、全てカード払いにしている。
分割は手数料のかからない2回払まで。
ポイントの交換は、あくまで等価交換重視。つまり1ポイント(カード会社により1ポイントの価値が違う場合があるが、この場合は1ポイントが1円の場合)が1円の価値になるギフトカードか電子マネーにしか交換しない。
時々キャッシュバックにする人がいるが、レートが下がるので実質目減りするので要注意。
[髪の毛のセルフカット]
ここ10年間の内、美容室に行ったのは、2回か3回。私は髪を自分で切っている。
子供が小さい時は、皆さんもやってる方は多いと思うが、ほとんど私が散髪していた。
一冊ヘアカットの本を買い、切り方の基本を知ってからは、自分の髪も切り始めた。
見えない後ろ側の髪も、合わせ鏡で確認しつつ、指に挟む髪の毛の長さを均等にしていくと、意外とちゃんとなるものだ。
会社の同僚にセルフカットだとこちらから明らかにしない限り、気づく人はいない程度の出来上がりにはなっている。結構この節約は大きいと思う。
[ティッシュの代用品]
着なくなった木綿のTシャツや下着を手のひら大の大きさに切り、ティッシュ代わりに利用。
これは用意して置くと、とても便利。元々要らないものなので、心置きなく大量に使うことが出来る。
[ネットフリマの利用]
皆さんもやっている方は多いと思うが、不用品の処分はこれが1番。
これを始めてから、特に私の場合は、小さな元手で多くの書籍を手に入れられるので、夢のシステムだ。
だが、これが出版界不況の要因の一つだとしたら、大変申し訳無い気はするのだが…やめられません。
[何でも最後まで使い切る]
至極当たり前のことだが、我が家では最後まで使い切るこの技を「伊東家の食卓方式」と言っている。
以前放送していた、生活の知恵を披露するテレビ番組「伊東家の食卓」から得た方法で、ケチャップやマヨネーズの容器の内側に付着した残りを、最後の最後まで使い切る方法なのだ。
ご存知の方もいると思うが、やり方は容器の底を持ったまま、腕を上から下へ振り下ろすという方法だ。
内側に残った調味料が振り下ろした勢いで、容器のフタの方向へ溜まるというもの。何度も振り下ろすと、容器内の殆ど99%は使い切る事が出来る。
但し、容器のフタがしっかり締まっていることを確認しないでやると、台所の壁一面が現代アートのキャンバスみたいになるのでご注意を。
ちなみに歯磨き粉のチューブでもこの方式やるのだが、フタが取れやすいので、気がつくと我が家の洗面台の天井には、やっぱりハミガキペーストが付いてる。
こうして大げさに言えば、水一滴、1円たりとも無駄にしない、言わばサバイバルの様な生活をしていけば、お金はジワジワ貯まるのだ、と信じている。
また、節約を続けることは、最近良く耳にする「持続可能でより良い世界を目指す国際目標SDGS」の17項目の中のいくつかにも通ずる事であると思う。
節約を極めた方々なら、もっと色々な節約術もお持ちのことと思う。
私はやっていて辛くなる節約は無理にしない。自分にあった節約術を続けて行こうと思う。
貧乏ながらも、壁のケチャップやマヨネーズに家族で笑い、「ゴミの圧縮ひとまとめ」に達成感を感じたり、と節約は楽しくやっている。
太宰治の「きりぎりす」。
主題とは外れたところで、主人公の女性にいたく共感した次第だ。