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ポジティブな私 ポジ人

快晴の日の出来事

部屋の中から窓の外を見ると、久しぶりにとても良い天気だった。
それで、思い出した事がある。

随分前の事だ。

その日も天気の良い日だった。

私は、日頃ほとんど戸外の天気などに関心を払わないたちなのだが、その日のお天気はこんな私が「わぁー、いいお天気」と驚くほど、雲一つない快晴だった。

それからおもむろに窓に背を向けて、さぁて何をしようかと、部屋の中を見回していた時のことだ。

「ドーン!!」と言う大きな音が響いた。

その音は、以前古くなった我が家のガス給湯器が、不完全燃焼を起こして小爆発を起こしていた時の音によく似ていた。

あれだけ大きな音なら、マンションのどこかでガス爆発が起きたに相違ないと思った。

耳をすましてみる。

シーンと静まり返ったままだ。

その内、大勢の人のざわめきが周囲に広まるだろうと、ベランダの戸を開けてみた。

やっぱりシーンとしたまま…。

あんなに大きな音がしたのに…。

しばらくベランダの戸から身を乗り出して様子を伺っていたが、ただ気持ちの良い青空が広がっているだけで、何も変わった様子はなかった。

あれは、一体何だったんだろう…。

不思議に思いながら、べランダの戸を締めた時、窓ガラスの私の目の高さの位置に赤い汚れが付いているのが目に入った。

こんな汚れ、いつ付いたのだろう?

そう思って、再び戸を開けて周囲を見回した時、足元に中型の野鳥の姿が目に入った。

全然動かずに、倒れている。

直ぐに、窓にぶつかったのだと気づいた
先程の大きな音は、この野鳥がぶつかった音だったのだ。

雲一つない青空が、我が家のベランダの窓に映り、空がそのまま続いている様に見えたのだろう。

よく郊外の建物の大きな窓に、野鳥の天敵であるタカ等のシルエットの黒いシールが貼られていることがある。

このような野鳥の衝突事故が多いため、天敵の影(黒いシール)を見て野鳥自らが、ガラス窓を避けるよう、そのような工夫がしてあるのだ。

まさか、我が家の窓にこの様な悲劇的事故が起こるとは…。

助けられるものなら、助けてあげようと思ったのだが、体に触れても全く動く様子はなかった。

あの勢いでぶつかったのだ。

首の骨でも折ったに違いない。
体を持ち上げるてみると、首がダラリと垂れた。
きっと、即死だろう。
何が起こったのか知る間もなく、痛みを感じる暇もなかったことだろう。それがせめてもの慰めかも知れない。
可哀想に…。

小鳥の口元辺りに、真っ赤な木の実が一粒落ちていた。

木の実をくわえて空を飛んでいたようだ。

どこかへ持っていって食べるつもりだったのだろうか、それとも誰かに届けるつもりだったのだろうか。

ベランダに転がった、あざやかな赤い木の実が、更に深い悲しみを誘った。

私は、布で小鳥を包み、園芸用のスコップを手にマンションの外へ出た。

マンションのすぐ脇を小さな小川が流れている。
その側に穴を掘り、私は小鳥の亡き骸をそっと葬った。

あんな悲しい事故が起こったのに、空は相変わらず抜けるような青空だった。
天気が良過ぎたのだ。

あまり見たことのない野鳥だったので、後から図鑑で調べてみると、“シメ”と言う鳥だった。


シメの魂は、あれから天国の青空を自由に飛び回っているだろうか。そうである事を願って止まない。

晴天の日に、ふと思い出してしまう悲しい思い出だ。
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