「今日、家にいるかな?」ちょっとした用を伝えるため長女に電話した。
「何時頃になる?」「そうだな、1時過ぎあたりかな」
「あら困った。その時間、病院に行っているわ」「どこか悪いのか」
「肩、肩が痛いのよ」「どうした?」
「五十肩」「何とまあ。そんな年になったんかい」─笑い声と一緒にそう言ってやった。
「54です」「それはそれは、どうぞお大事に」
そう言えば、東京に勤務する孫娘(長女の長女)が夏休みで帰省した際、
「私もうアラサー、27歳なのよ」と言うものだから「ええっ」となった。
ということは会うたびに「まだまだ子供だな」と思う
一つ違いの弟も、もう26になるのか。
それと、次女も8月で50歳になったのだったな。その一人娘も21だ。
小さく、愛らしかった3人の孫たちが皆一人前の振る舞いをするようになっている。
あちらもこちらも、いつの間にやらである。
子や孫がそうであれば、こちらも年を取るはずだ。
日本人男性の平均寿命をクリアして82歳になった。
幸い、かかりつけ医は「80歳を超えられたにしては、大変お元気」と言ってくれる。
もちろん悪い気はしない。
確かに病院で行き交う同年配と思しき人と見比べると
「足取りもまだ確かだし、そうなのかな」と思う。
だが、「ああ、衰えたなあ」というのが本心だ。
ウオーキングに出かけると以前は18分で歩けた同じ道が20分かかる。
スマホの歩行計を見ると歩数はほぼ同じだ。
歩く速度が遅くなったということだろう。ひどく情けなくなる。
日本人の健康寿命は男性72歳、女性75歳。
つまり80歳を前に寝た切りや要介護になる人が多いということだ。
幸いここは乗り越えた。今度は80歳代をどう無事に過ごしていくかだ。
敬老の日に3人の孫たちが「これからも長生きしてください」とLINEしてくれ、
「はいはい、ありがとうさん」と爺らしく返信した。
さてさて、どう生き長らえようか。
高齢者専門の精神科医・和田秀樹さんは
『80歳の壁は高く厚いが、壁を乗り越える最強の方法がある。
それは嫌なことを我慢せず、好きなことだけすることだ』という。
なるほど。要するに、「衰えたなあ」などとネガティブにならず、
前向きに明るく生き抜けということか。
少しばかり、励まされたような気がしないでもない。