中国、薬でも不買運動 製薬各社の決算会見で明らかに
日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化に反発する中国の日本製品不買運動が、患者の生命にかかわる医薬品にまで波及していることが、13日までに行われた製薬各社の平成24年4~9月期決算会見で明らかになった。国際常識では考えられない中国の強硬措置は“チャイナ・リスク”を改めて浮き彫りにした形だ。
「南京などの一部病院は医師に対して、日本製品を買わないように指示を出した」
大日本住友製薬の多田正世社長は10月末の決算会見で、こう打ち明けた。同社の中国事業は感染症治療薬が中心で、同治療薬納入先の3~4%でこうした不買運動を確認したという。ただ、不買運動が始まったのが9月中旬以降だったことから、4~9月期の中国売上高は前年同期比17・7%増の39億円と好調だった。
多田社長は「当社の薬は効能が評価されている。医師からの信頼が厚く、病院の指示を(医師が)覆す努力もしてくれたようだ」と説明した。
同様に武田薬品工業やエーザイも記者会見で、社長らが一部医療機関での不買運動に言及したが、業績への影響はほとんど出なかった。
製薬各社は、中国を成長市場と位置づけており、参天製薬は反日デモが激化した9月、12億5千万円の資本金で江蘇省に販売会社を設立することを決定。黒川明社長は、一部の病院から営業訪問を控えるよう求められたことを明らかにしたが、「(医師や患者)個人からは応援をいただいている。点眼薬メーカーとしてのブランドも浸透し、これまでの方針通り販売を続ける」とした。