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コブシ

2014-04-01 01:36:50 | フラワー・園芸

野山に純白の花を咲かせ春の訪れを告げる花木、コブシ“Magnolia kobus

 

08 07

シデコブシ

福岡県直方市ふくち山麓はな公園にて(以降の写真すべて)

 

福岡では、だいたい春の彼岸前後に野山で一斉に花を咲かせる。

この花が咲くと、本格的な春の訪れ。

そのため、日本各地で古くから、この花の開花を合図に、

農作物の種まきや植え付けなど、農作業の開始合図にされる。

福岡では、残念ながらそろそろ花は終わり。

 

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シデコブシ。

奥に見える鈴なりの花はアセビ(馬酔木)。 

 

Photo_2

シデコブシの花のアップ。

 

モクレン科モクレン属の植物で、

同じ時期に咲く、ハクモクレンとそっくり。

だが、花が完全に開くかそうでないかで容易に見分けられる。

花が完全に開くのがコブシ。

また、ハクモクレンの方はコブシよりもずっと花が大きい。

 

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ハクモクレン。

パッと見、コブシにそっくりだ。

 

コブシの名前の由来は、夏に実るその果実が、ごつごつしたいびつな形状に育ち、

その見た目が人の握り拳に見えることから。

だが漢字にすると、“拳”ではなく、“辛夷”と当て字になる。

これは中国から伝わった漢字で、本来はモクレンを指す。

 

Photo 02

コブシの実

写真は7月半ばに撮影した、まだ未成熟の実。

秋に熟した実は真っ赤に色づくらしい。

 

果実は熟すると真っ赤に色づき、鳥たちの格好のエサになる。

このデコボコの実の中は白い糸で実が連結されていて、

果肉を食べる鳥たちが、この糸を引っ張ると、

内部から種子が引っぱり出されるという構造になっているそうだ。

こんど秋に完熟した果実を観察してみよう。

 

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シデコブシ

 

コブシは枝に芳香があるらしく、油も採取される。

花にも芳香があり、こちらは香水の原料にされる。

さらに漢方で、鼻炎に効く生薬にもされる。

古くから人々に利用されてきた花木だ。

 

Photo_4 06_2

シデコブシ

 

コブシと言って思い出すのが、

中学だったか高校だったか、国語(現代文)の教科書に載っていた、ある文学作品。

文中に“コブシ”が印象的に出てきたのを覚えている。

大人になって、コブシの花を初めて認知したときにも、

この教科書に載っていた文章を思い出した。

作家名も、その内容もうろ覚えだったのだが、

今回この記事を上げるのに際して、調べてみた。

堀辰雄 著 “辛夷の花”。

タイトルにそのまんま“コブシ”って入ってたのか・・・。

 

>「いま、向うの山に白い花がさいてゐたぞ。なんの花けえ?」

>「あれは辛夷の花だで。」

>「むかうの山に辛夷の花がさいてゐるとさ。ちよつと見たいものだね。」

>「あら、あれをごらんにならなかつたの。」

>妻はいかにもうれしくつてしやうがないやうに僕の顔を見つめた。

>「あんなにいくつも咲いてゐたのに。……」
 

ああ・・・これだこれだ間違いない。

あの頃はコブシなんて花、全然知らなかったなあ。

まず花に興味がなかった。

それがどうしてこうなった?

 

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コブシの蕾

 

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ほんのりピンク色したシデコブシ。

八重咲きだ。

 

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コブシの木。

見事な逆光だ。

 

 


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