1.経緯_小説ルービックキューブの揃え方_船旅編
一人暮らしをはじめて数ヶ月が経ち、部屋で独りマッタリ過ごす日常にやすらぎを覚えつつあるうら若き乙女である彼女(以下、乙女)は唐突な連絡に驚きながら記された内容に従い指定のチャットへ胸の高ぶりを抑えつつアクセスすると高揚は見事なまでに抑えつけられてしまった。それは、これからチャットでするやりとりの目的がルービックキューブの揃え方を教えて欲しいという依頼で淡い展開を予感させるものではなかったから。そして、不自然な頼み事でもなかったから。
ただし、乙女の方も基本、疎い人種である。何事も真面目に取り組むこの乙女のトランス状態が冷たい水を掛けられた如く萎んでいったのは彼女自身がチャットで立体パズルの六面の揃え方を伝える難しいだろう予測したせいである。彼女の方も恋心そっちのけで、数年前の乙女の言葉を借りると「ルービックキューブの揃え方一次元伝達」に思考が囚われてしまったのである。
というのは乙女もかつてルービックキューブの揃え方を文章に起こそうと思ったことがあるからだ。思った程度である。乙女自身がルービックキューブを揃えるようになったのは独力によるものではない。(人並みに頭が良くみられた方がうれしいという感情はあるので、)いきなり購入したキューブに付随していた六面の揃え方の説明書に目を向けたりはしなかったが、何が何でも自力で揃えたいという強い意志があったわけでもないので、買った翌日には、あまり親切とはいえない説明書に手を出す。付録だけあって?、なかなか分かりにくい説明書であったが表記のルールを理解すべくしばらく格闘の末、1週辺りで何もみないで揃えるようになったと記憶している。この期間を早いととるか時間が掛かったとみなすかは大した問題ではないが図入りの説明書の内容を理解するのに苦しんだ事実はきっかり覚えている。しかし、 揃えることができるようになってから説明書をみると不親切に思えた説明が、とても妥当に見えてきた。
ルービックキューブ売上の実数、普及率を知っているわけではないが知名度と言うかその存在を知らぬ人は多くはない印象がある。しかし、その割にこのパズルを揃えれる人口は少ない気がする。揃え方は分かってしまえば難しくないのだ。だから、乙女も六面揃えるようになる前は揃えられる人口が多くない印象に違和感はなかったが、揃え方が難しいのでなく、揃え方の説明が容易でないと考え方は変わった。なお、30手未満の数秒で揃えてしまうような方法は別物で容易ではない(と思うので手を出していない)。仮に難しくないとしても相当な暗記を擁する手間暇を伴う。それらの瞬殺系揃え方と比較して、立体パズル商品付録の説明書など方法は覚える量は多くなく、かつきちんと頭に叩き込めば揃える時間は10分20分というところなので乙女は揃えれる人口は少ないと感じているのだろう。
説明が易しくない大きな理由は図ではなかろうか。パズルが立体である故、2次元である平面に描かる図が表現しきれないのは地球儀と世界地図の関係と同様であり、何らかの工夫を擁する。この工夫が表記のルールだったりするわけである。当時、揃えられなりたての乙女は瞬間的であるが多くの人に揃え方を知ってもらい、パズルのおもしろさを共有したい願望にかられた。だから乙女は考えたのだ、図なしで揃え方を伝えられないかと。言葉だけ、すなわち、「ルービックキューブの揃え方一次元伝達」である。
学校を休学して世界中を回っていた乙女のサークルの先輩である青年(以下、先輩)はひょんなことから洋上の大きな船に乗り、旅を続けていた。船旅は忙しい時もあれば、暇な時もあり。読書用の本も切らしている。船内には新たな本を獲得する方法がないわけではないが、やる気がでない。同様に一人旅といえば、行く先々、初めて見るものや新しい出会いの連続であるが、気力が低下して行動に移れない故の暇も存在する。陸路を進むより洋上のが暇頻度は顕著になるかもしれない。などと考えても時間があっという間に過ぎる内容ではないので甲板に行って眺めでも楽しもうかと。どんな景色も初めてのはずであるが労せず目新しさを感じられるものは見つけれず、遂にというのであろう、旅行に出る前に所属するサークルで面識程度であまり会話した記憶のない後輩からもらったキーホルダータイプのルービックキューブを先輩は初めて取り出した。
同学年(と言えど復学したら上の学年になるだろう)のサークル仲間が送り出す会を設けてくれたのだが、楽しく飲み食い喋りの機会として当然のように学年ゴチャ混ぜの宴になった。ということで、いろんな人から餞別なのであろう、旅のお供にどうぞ系のグッズをくれたりもする。そもそも、必要な物などは自分で用意するし、必要頻度の低い物は荷物になるし、それこそ飲み会の話題になるだけで役目を終えるふざけた物をわざとくれたりもするので、餞別の選別の結果、頂戴した品々で実際持っていく物は多くはならない。キーホルダーの立体キューブは狭き門をくぐり抜けたわけだ。
パズルの類は好んでやる方ではない。だから、置いていく候補としても有力であったがキーホルダーだけあって、本体部分は3cm立方に収まるコンパクトさ。くれた後輩の子は簡単に揃えられる口ぶりだったけど、こちらはそうではないので案外、よい暇つぶしになるか考え、手提げ鞄の内ポケットのファスナーに付け旅に同行させた。たまたま、手提げを持って甲板に出たのでファスナーから外して手に取ってみたのだ。貰った時のまま、六面揃った状態。やってみようかどうか、ボーっとしていたときに少年が6つのカラーが混在している揃っていない状態のルービックキューブを差し出しつつ、船旅青年に声を掛けて来たのだ。
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小説ルービックキューブの揃え方_船旅編のインデックス
一人暮らしをはじめて数ヶ月が経ち、部屋で独りマッタリ過ごす日常にやすらぎを覚えつつあるうら若き乙女である彼女(以下、乙女)は唐突な連絡に驚きながら記された内容に従い指定のチャットへ胸の高ぶりを抑えつつアクセスすると高揚は見事なまでに抑えつけられてしまった。それは、これからチャットでするやりとりの目的がルービックキューブの揃え方を教えて欲しいという依頼で淡い展開を予感させるものではなかったから。そして、不自然な頼み事でもなかったから。
ただし、乙女の方も基本、疎い人種である。何事も真面目に取り組むこの乙女のトランス状態が冷たい水を掛けられた如く萎んでいったのは彼女自身がチャットで立体パズルの六面の揃え方を伝える難しいだろう予測したせいである。彼女の方も恋心そっちのけで、数年前の乙女の言葉を借りると「ルービックキューブの揃え方一次元伝達」に思考が囚われてしまったのである。
というのは乙女もかつてルービックキューブの揃え方を文章に起こそうと思ったことがあるからだ。思った程度である。乙女自身がルービックキューブを揃えるようになったのは独力によるものではない。(人並みに頭が良くみられた方がうれしいという感情はあるので、)いきなり購入したキューブに付随していた六面の揃え方の説明書に目を向けたりはしなかったが、何が何でも自力で揃えたいという強い意志があったわけでもないので、買った翌日には、あまり親切とはいえない説明書に手を出す。付録だけあって?、なかなか分かりにくい説明書であったが表記のルールを理解すべくしばらく格闘の末、1週辺りで何もみないで揃えるようになったと記憶している。この期間を早いととるか時間が掛かったとみなすかは大した問題ではないが図入りの説明書の内容を理解するのに苦しんだ事実はきっかり覚えている。しかし、 揃えることができるようになってから説明書をみると不親切に思えた説明が、とても妥当に見えてきた。
ルービックキューブ売上の実数、普及率を知っているわけではないが知名度と言うかその存在を知らぬ人は多くはない印象がある。しかし、その割にこのパズルを揃えれる人口は少ない気がする。揃え方は分かってしまえば難しくないのだ。だから、乙女も六面揃えるようになる前は揃えられる人口が多くない印象に違和感はなかったが、揃え方が難しいのでなく、揃え方の説明が容易でないと考え方は変わった。なお、30手未満の数秒で揃えてしまうような方法は別物で容易ではない(と思うので手を出していない)。仮に難しくないとしても相当な暗記を擁する手間暇を伴う。それらの瞬殺系揃え方と比較して、立体パズル商品付録の説明書など方法は覚える量は多くなく、かつきちんと頭に叩き込めば揃える時間は10分20分というところなので乙女は揃えれる人口は少ないと感じているのだろう。
説明が易しくない大きな理由は図ではなかろうか。パズルが立体である故、2次元である平面に描かる図が表現しきれないのは地球儀と世界地図の関係と同様であり、何らかの工夫を擁する。この工夫が表記のルールだったりするわけである。当時、揃えられなりたての乙女は瞬間的であるが多くの人に揃え方を知ってもらい、パズルのおもしろさを共有したい願望にかられた。だから乙女は考えたのだ、図なしで揃え方を伝えられないかと。言葉だけ、すなわち、「ルービックキューブの揃え方一次元伝達」である。
学校を休学して世界中を回っていた乙女のサークルの先輩である青年(以下、先輩)はひょんなことから洋上の大きな船に乗り、旅を続けていた。船旅は忙しい時もあれば、暇な時もあり。読書用の本も切らしている。船内には新たな本を獲得する方法がないわけではないが、やる気がでない。同様に一人旅といえば、行く先々、初めて見るものや新しい出会いの連続であるが、気力が低下して行動に移れない故の暇も存在する。陸路を進むより洋上のが暇頻度は顕著になるかもしれない。などと考えても時間があっという間に過ぎる内容ではないので甲板に行って眺めでも楽しもうかと。どんな景色も初めてのはずであるが労せず目新しさを感じられるものは見つけれず、遂にというのであろう、旅行に出る前に所属するサークルで面識程度であまり会話した記憶のない後輩からもらったキーホルダータイプのルービックキューブを先輩は初めて取り出した。
同学年(と言えど復学したら上の学年になるだろう)のサークル仲間が送り出す会を設けてくれたのだが、楽しく飲み食い喋りの機会として当然のように学年ゴチャ混ぜの宴になった。ということで、いろんな人から餞別なのであろう、旅のお供にどうぞ系のグッズをくれたりもする。そもそも、必要な物などは自分で用意するし、必要頻度の低い物は荷物になるし、それこそ飲み会の話題になるだけで役目を終えるふざけた物をわざとくれたりもするので、餞別の選別の結果、頂戴した品々で実際持っていく物は多くはならない。キーホルダーの立体キューブは狭き門をくぐり抜けたわけだ。
パズルの類は好んでやる方ではない。だから、置いていく候補としても有力であったがキーホルダーだけあって、本体部分は3cm立方に収まるコンパクトさ。くれた後輩の子は簡単に揃えられる口ぶりだったけど、こちらはそうではないので案外、よい暇つぶしになるか考え、手提げ鞄の内ポケットのファスナーに付け旅に同行させた。たまたま、手提げを持って甲板に出たのでファスナーから外して手に取ってみたのだ。貰った時のまま、六面揃った状態。やってみようかどうか、ボーっとしていたときに少年が6つのカラーが混在している揃っていない状態のルービックキューブを差し出しつつ、船旅青年に声を掛けて来たのだ。
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