今日も涼しかった。野菜が高くなったり、植生や生態系に影響が出たりするのは歓迎じゃないのだけど、自分のことだけ考えたらこのまま涼しい夏がいいなあ。暑いの苦手なのだ。
とても暑い、灼熱の土地を舞台にした小説を読んだ。月村了衛著「土漠の花」(幻冬舎)。
土漠の花 (幻冬舎文庫) | |
月村 了衛 | |
幻冬舎 |
舞台はアフリカ大陸のアフリカの角、ソマリア。
内戦が勃発しているソマリアで、日本人自衛官たちが現地の民族から逃走する。
最初はジブチの話から始まる。
ジブチ、昔行ったことがある。とても暑かった。冷房の利かないマイクロバスで移動したのをよく覚えている。だから今回、登場人物たちが車と徒歩で移動するのを読んでいて、なんとなく暑さがわかる気がした。とても暑い。逃げるの大変だけれど、逃げなくてもただいるだけでも暑い。
ところで土漠という単語、初めて知った。調べてみたら、
砂漠が砂の乾燥地帯のに対して、土漠は岩がちなごつごつとした乾燥地帯とのこと。
あたしに限っては、「あたしの心は砂漠のようです」じゃなくて、「あたしの心は土漠のようです」が正確な表現なんだなとおもった。
さて。
自衛官たちがなぜソマリアのある部族から逃走することになったのか。それは、たまたまソマリア内のある部族のトップの娘をかばったためだった。
彼女を連れて逃げているうちに、いつの間にか追う部族の目的が彼女の奪取ではなく皆殺しへと変化する。
石油が大きなカギになっていた。
調べてみたら、石油についての新聞記事を見つけたよ。
⇒ソマリア資源に熱視線 手つかずの宝、欧米が開発打診(朝日新聞 2012年4月6日)
「土漠の花」によれば、シェラレオネはダイヤモンドとポーキサイト、アンゴラはダイヤモンドと石油、コンゴはダイヤモンドと銅とコバルト、リベリアは鉄鉱石が原因で、国がごたごたになってしまったとのこと。
小説はあくまでフィクションだけれど、小説にしてくれると、臨場感をもって理解できる気がする。
月村了衛といえば、中国の少数民族ウイグル人をテーマにした「影の中の影」、日本に潜伏する北朝鮮トップにテーマを当てた「ガンルージュ」を読んだことがある。
⇒読書日記:月村了衛『影の中の影』 見落とされがちな要素に目を向ける機会
ウイグル人については、米国のトランプ米大統領の発言をきっかけとして、国際社会から注目が行くようになった。けれども月村了衛さんはそれよりも前に、この話書いている。
だから、ジャーナリズムに関心があることもあり、月村了衛さんを尊敬している。
物語として成立させつつ、あたしの勝手な解釈でご本人はそんなこと意識されていないのかもしれないけれど、見逃されているけれど、社会が注目すべきことに焦点が当たるきっかけを作ってくれている。
ハリウッド映画における冷戦時代のソビエトの描かれ方のように、ひょっとしたら誇張や偏見はあるかもしれない。だけど、書かれたという意義は大きく、小説だからこそできることってある気がする。
小説だからできることと言えば、「土漠の花」に登場する自衛官ひとりひとりの感情や背景の描かれ方がよかった。現地にいるのは同じ人間だということや、どんな状況でもあたしたちはその瞬間だけではなく過去の記憶とともに生きるということが伝わってきた。
月村了衛さんの書かれる小説は、アクションシーンが多い。あたしはあまり運動が得意でなかったり、武器防具の知識がなかったりするので、そのところは面白くない。
けれども、「土漠の花」も月村了衛さんが書かれるならと、心の中で正座して読んだ。
また読みたい。
ではまた
月2回、東京都豊島区池袋で、読書交換会をやっています。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。
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