つぶつぶタンタン 臼村さおりの物語

身体の健康と無意識のパワーへ 癒しの旅~Have a Beautiful Day.~

真梨幸子著「みんな邪魔」(幻冬舎)、読書感想 地理とは別のクローズドサークルで

2019-07-14 07:52:17 | 本の感想/読書日記

久しぶりに市報に目を通したら、そこかしこにQRコードが掲載されていた。何かの募集など、詳細がほしいときはそのQRコードから参照できるようになっている。
QRコードを利用する人と、市報をみる人ってなんとなく別の人のような気がしていたから、ちょっと新鮮だった。誰もが気軽にネットで調べものをするる時代が来つつあるのかもしれないね。

真梨幸子著「みんな邪魔」(幻冬舎)を読んだ。

みんな邪魔 (幻冬舎文庫)
真梨 幸子
幻冬舎


真梨幸子さんといえば、沼田まほかるさん、湊かなえさんとともに、イヤミス(読んだ後に嫌な後味が残るミステリー)を描く小説家として有名な方。
3人の小説を読んだことがあるけれど、個人的には真梨幸子さんの小説がダントツで一番ショッキングな気がしている。拝読するのは「殺人鬼フジコの衝動」についでまだ2冊目なのだけれど、うん。そんな感じ。
真梨幸子著「殺人鬼フジコの衝動」(徳間文庫) 読書感想


「みんな邪魔」は、ある少女漫画のファン同好会が舞台。宝塚のようにコテコテした衣装や舞台設定の漫画かな。その漫画は、中年世代となっている女性たちがかつて思春期だった時代に連載されていたもの。

漫画そのものはだいぶ前に打ちきりになったにもかかわらず、今でも根強いファンがいる。ネットの掲示板という機能ができたたことにより、その同好会がさらに活性化している。

そんな同好会の幹事メンバー6人が主人公だよ。


自称ネット中毒のあたしとしてはとても身につまされる内容だった。共通項はある少女漫画が好きということだけなのに、幹事たちのお互いへの親近感はとても強い。むしろ共通項しか判断基準がないがゆえに、お互いのことを盲目的に好きになっている気もする。

一方彼女たちがその同好会でどのように評価されているか、そして何を感じているかが外部や家族に知られることはない。つまりは投げた球への返球が戻ってくるのはその同好会内だけであり、それゆえますますそのコミュニティへの愛着が強くなる。

愛着が強くなりすぎれば何かが起こる。
ミステリー小説には、閉ざされた空間に閉じ込められると殺人事件が起こり、最後はひとりになってしまうという、クローズドサークルという考え方がある。

そのクローズドサークルは、実際の地理のクローズドサークルだけではなく、思想やネットの世界でも起こりうるんだなということを感じさせてくれたのがこの小説だった。

道尾秀介著、仏像の工房を舞台にした「骸の爪」を読んだときも似たように感じた。閉じられた世界ゆえ、人間の感情が濃縮される。とはいえ「骸の爪」は工房が山中にあるという地理的な閉鎖もあった。一方の「みんな邪魔」は都会だし、まさに現代的なクローズドサークルな気がするな。
⇒読書日記:道尾秀介著『骸の爪』 閉鎖された環境


そして、うん、なんとなくわかる気がする。あたしもかつてクローズドコミュニティに所属していたことがあある。
結果的に、それゆえ読書交換会も誕生したし、もくもくアート会をサポートしてくれる方との出会いもあったわけだけど、でも閉じられた空間ゆえの動きというのはなんとなくわかる気がするんだよね。だから自分を振り返る意味でも読んでよかったよ。

ではまた


月2回、東京都豊島区池袋で、読書交換会をやっています。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。⇒東京読書交換会ウェブサイト
※今後の予定は7月27日(土)夜、8月9日(金)夜です。

臼村さおり twitter @saori_u
思考していることを投稿しています。


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