つぶつぶタンタン 臼村さおりの物語

身体の健康と無意識のパワーへ 癒しの旅~Have a Beautiful Day.~

石田衣良「北斗」、小説の感想 虐待・トラウマ、裁判員制度が圧倒的な筆致で

2019-10-05 05:12:32 | 本の感想/読書日記

久しぶりの本の感想。つぶつぶタンタンに綴っていると、自分のライフスタイルがよくわかっていいな。本の感想を書くのは2週間以上ぶり。最近描くほうによっていたんだろうね。

日本語は、描く(draw)と書く(write)の音が同じでうれしい。創造(create)と想像(imagine)の音が同じなのも気に入っている。

石田衣良さんの小説「北斗」を読んだ。

北斗 ある殺人者の回心 (集英社文庫)
石田 衣良
集英社


衝撃だった。石田衣良さん、天才、すばらしい!!

石田衣良さんの小説を初めて読んだのは、読書交換会を始めたころで、第1作は「西一番街ブラックバイト」だった。池袋を舞台にした小説で親近感がわいた。内容が衝撃だった。
今、オリンピックに向けて池袋西口公園が工事されている。「池袋ウェストゲートパーク」は様子が変わってしまうんだろうね。

「チッチと子」「4TEEN(フォーティーン)」はほのぼの、しんみりと面白かった。
石田衣良著「4TEEN(フォーティーン)」(新潮文庫) 読書感想
(「ブルータワー」は読んだけどあまり印象に残っていないから、またいつか読みたい。)

そして「娼年」が衝撃だった。
本の感想:石田衣良『娼年』 人間模様、圧倒的な成立感



「北斗」はそのどの作品とも、違った印象。数少ない石田衣良経験だけど、その石田衣良の印象が大きく変わった一作だった。

主人公は両親に虐待された少年。虐待から逃れるために、児童施設に入った少年。そののち、養母に引き取とられた。養子になった少年は里親が死去した後、復讐のために殺人を犯すという内容。裁判のスタートから終了までも細かく描かれている。

虐待のこと、人の心のこと、トラウマのこと、本当によく描かれている気がする。

あたし自身も共感する部分があった。虐待された経験のある方が癒しを感じると同時に、だれもが少なからず共感したり、「もしかして、あの人のあれはああだったのかな」と誰かに思いをはせたりされるんじゃないかな。

重いテーマを扱いながら、エンタメ小説として成立させ、幅広い層の読者の心に響かせる。すごいなー。


気になったところがあると、本のページの隅を折る癖がある。そして小説を読み終わった後、その折り目の原因になった文だけをもう一度読み、自身の記憶や思い出と照らし合わせて、自分を見つめる。

今回は、折り目だらけになったのだ。でも不思議なことに、この「北斗」は小説を読み終わって数日後に折り目のあるページを見直したとき、「もう大丈夫」と思えて、見つめていく作業はしなかった。

本を読む過程で、物語の流れとともに自動的に響いていたんだとおもう。

592ページという長編だけど、飽きずに読めた。また裁判員制度の仕組みについてもよくわかって、その意味でも読んでよかった。前半の虐待のシーンは読んでいるだけでつらくなるから、そこは覚悟が必要かも。

よかったら読んでみてください。お勧めです。

ではまた

東京都豊島区池袋で読書交換会を開催しております。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。
東京読書交換会ウェブサイト
※今後の予定は10月11日(金)夜、10月26日(土)夜、です。

臼村さおり twitter @saori_u
思考していることを投稿しています。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 秋分はこだわらない 2019年秋分 | トップ | 原田マハ「暗幕のゲルニカ」... »
最新の画像もっと見る