柚木麻子さんの小説「ナイルパーチの女子会」(文芸春秋)を読んだ。
ナイルパーチの女子会 (文春文庫) | |
柚木 麻子 | |
文藝春秋 |
柚木麻子さんファンの方から、柚木さんの作品にはクロ魔術とシロ魔術のように、クロ柚木 と シロ柚木があると聞いていて、「本当かな~、柚木さんはシロっぽい気がするんだけど・・・」とおもっていたら、ついにクロ柚木に出逢ってしまった。
柚木麻子さんの小説を拝読するのは、この「ナイルパーチの女子会」が4冊目。
今までは、「ランチのアッコちゃん」「伊藤くんA to E」「ねじまき片想い」を読んだことがあった。
⇒柚木麻子「ねじまき片想い」/小説、読書感想 おもちゃプランナーの軌跡
最終的にはハッピーエンドだけど、「伊藤くんA to E」「ねじまき片想い」がクロ柚木なのかな?とおもっていたけど、とんでもない。。。真打登場。
「ナイルパーチの女子会」はどこまで行っても闇だった。
主人公は女性二人。ひとりは主婦ブロガー。がんばらない手抜き自堕落生活をつづったブログを書いている。もうひとりはそのブログを愛読する独身女性で、大手商社に勤めている。
小説のタイトルにもなっているナイルパーチとは、アフリカに生息する巨大魚。スズキ目アカメ科に属する魚類で、すしネタのえんがわになっていたこともあるらしい。とても大きな魚。よかったら、「ナイルパーチ」で画像検索されてみて。あたしはその大きさにびっくりしたよ。
商社に勤める女性の専門が輸入魚という設定もあり、食用魚についての記述がそこかしこに出てくる。けっこう知らないうちに食べている魚もあるようで、知らなかった。そして、「まぐろのような大型魚は生体濃縮が進んでいるから環境汚染物質を食べることになる」という話を知識として知っているけど、、、、知らないうちに大型魚を山のように食べているのかもしれないね。
たまたまご近所さんだった二人は、同じお店に居合わせたことをきっかけに出逢う。
一気に意気投合した二人。しかし、その後、あることをきっかけに主婦ブロガーのブログ更新が数日途絶えた。ブロブ更新がないことを心配した会社員の女性が、主婦ブロガーの自宅をブログから類推してつきとめて訪問。そのことをきっかけとして、関係がぎくしゃくしはじめる。
そこからちょっとずつお互いの歯車が狂い始める。そのあとは、依存、共依存、支配、投影、思い込み、恐怖、脅迫、逃避、家庭環境。さまざまにうずまき、平穏だったそれぞれ二人の生活が、両方とも崩壊していく。
彼女たちには、もともとの感情的な癖があった。そしてそれは誰にでもあるでしょう。もちろん、あたしにもふんだんにある。けれどもなんとなくお互いがお互いの地雷を踏まないやり方というのをなんとなく、心得ている。
けれども、本来であれば接点のない異世界に住んでいた二人が出会ってしまったがゆえに、地雷がわからず、互いが互いを破壊してしまった。
多様性といえば聞こえがよいけれど、あたしたちの背景はさまざま。育ちや外部環境で、価値観は大きく異なる。それはたとえご近所さんだったとしても、ひょっとしたら外国で生まれ育った人よりも大きな差かもしれない。
母国語が異なるとか、人種(見た目)や宗教が異なるとか、わかりやすい違いがあれば、あたしたちは他者を尊重しやすい。けれども同じ年代の日本人女性、しかもご近所さんだったからこそ、お互いが相手を異物としては尊重できなかったのかもしれない。
ということをひしひしと感じさせてくれる小説だった。
ネットやSNSの影響で、異世界で育った人同士が出会う可能性はますます高まっている。
近年話題になるネット絡みのトラブルは、「ナイルパーチの女子会」ほどじゃないかもだけど、相手も自分と同じだと思い込んでしまうような関係性ゆえなのかもだよね。
物語としては、もう少し後味よく終わらせてほしい。この小説は、嵐は去るものの、後味が悪いところに落ち着いていく感じ。
でも、うーだからこそ問いを投げかけられた気になっているというか、考えさせられる。
自戒を込めて読んだ小説だった。
ではまた
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