読んだ本の感想です。
1か月くらい前に羽田圭介さんの小説「メタモフフォシス」を読みました。
すばらしかった。2021年に読んだ小説の中で一番影響を受けた。
「メタモルフォシス」というこの文庫本には「メタモルフォシス」と「トーキョーの調教」の2編が収録されているので、「メタモルフォシス」は短めの小説です。
ただ短いから読みやすいですよーという小説ではないのです。
小説の主人公がSM愛好家で、主にSMの話だから読む人を選ぶかもしれない。あと言葉が非常に洗練されているというか、世界観を形成しているので、行間から漂ってくるものが深くて、読むのに時間がかかる気がします。
主人公は中年のM男性です。女王様のいるクラブに通っていて、野外プレーを楽しんでいます。M仲間の男性もいて、お互いに知り合いだったり、合同プレイをしたりすることもあります。書いてある内容は実際にどこまでが一般的なことなのかわからないけれど、けっこうエグいですし、グロいですし、気持ち悪いです。
ただなんか読んでいるとき、他人事じゃない気がしたというか、自分もこういうところあるなと共感しました。SMの話ではないです。
なんか社会とか人間関係でこういうところあるなとおもったのです。主人公や仲間のM男性は、SMクラブではMかもしれないけれど、おそらく日常生活は普通な気がします。
けれどもなんというか、SM性というのは誰のなかにもありうるもので、日常の世界であたしたちはSMをしてしまっている部分もあるのかもしれないと。
本当の意味でそれが快適じゃないのかもしれないけれど、無意識にそういうプレーをしてしまう。やってしまうからにはそれが好きなのかもしれないけれど、そうもしれないけれどそうとも言い切れないですよね。
少なくとも、あたしはあー日常でSMやってしまっているなと、ハタと気づくきっかけになりました。そしてそれが好きではないと。
この小説を読んだときはちょうど自己肯定感について考えていた時期でした。自己肯定感の話にも共通することがある気がしました。自己肯定感が低いと日常でSM状態になるよなあと。
(いま紹介できそうな過去の記事を探したのだけど、どれも中途半端な記述でした。)
現在進行形だからかもしれませんが、うまく書けません。一度では消化しきれないのでまた読みたいです。
いまこの記事を書くにあたって、ググっていたら、羽田圭介さんのインタビュー記事を見つけました。
⇒ 作家の読書道 第165回:羽田圭介さん WEB本の雑誌(外部リンク)
そのインタビュー記事によると、「メタモルフォシス」と芥川賞を受賞された「スクラップ・アンド・ビルド」は作品の方法論が同じだそうです。「スクラップ・アンド・ビルド」は介護をテーマにした小説とのことなので、そちらもいいかも。
あたしも「メタモルフォシス」をもう一度読む前に「スクラップ・アンド・ビルド」を読んでみたいです。
羽田圭介さんの小説はまだ2冊しか読んでいないのですが、とても触発されます。なんか自分のなかにはない世界観でハッとさせられるというか、あるいはあっても自分一人では連想できない世界観なのかもだけど、なんというかとにかく視点が気になる。
⇒ 羽田圭介「ポルシェ太郎」、自分とは別世界の小説 だからこそまた読みたい
⇒ 【読書】 羽田啓介「隠し事」、疑心暗鬼になる小説
ちなみにメタモルフォシスについては6月初めの読書交換会で紹介しました。
どうもありがとうございました。
今日もみなさまにとってよい日でありますように。
⇒東京読書交換会ウェブサイト
※今後の予定は2021年7月3日(土)夜・オンライン、7月17日(土)・オンラインです。
◆臼村さおり twitter @saori_u
思考していることを投稿しています。