『離愁』1973年
ナチス占領下が舞台でもあるし、しかもレジスタンスであるが故に孤独に身を置くしかない女が、妻子ある男性と出逢ってしまい、避難民を乗せた列車で過ごしてしまう。果たして二人は、惹かれ合うと同時に悲劇的な結末は免れないだろう。案の定結末の秘密警察での再会場面では、私自身年甲斐もなく、胸にグッと来てしまった。
もうロミー・シュナイダーの役柄として終始抑えたままの演技を続けて、最後の最後にあれをやられては格別に憂いた美貌だけに、こちらは恥ずかしげもなく涙を溜めて狼狽える他ない。
今は亡きジャン・ルイ・トランティニャンも弱い男を演ずるのがうますぎる。『暗殺の森』の気味悪さしかり。『日曜日は待ち遠しい』のファニー・アルダンの上司役しかりだ。ここでも最後の最後に見せた男気。セリフではなく、仕草の勇気に圧倒されるのである。人生の記憶に強く残る名作だ。