雑居空間
趣味のあれこれを、やたらめったらフットスタンプ




 年末にホビージャパンから、「死のワナの地下迷宮」と「地獄の館」の主人公を女の子にして“現代風の”アレンジを加えた、リメイクバージョン「デストラップ・ダンジョン」と「ハウス・オブ・ヘル」が刊行されるようです。一部ではFFの“萌化”に嫌悪感を覚える人もいるようですが、私はそういう方向に進むこと自体は割とどうでもいいと思っています(私のリプレイもそんな感じですし)。そのことによってゲームブックがより多くの人の目に触れるようになるのならば、良いことなのではないでしょうか。一応、2冊とも購入する予定です。

 気になるのはやはり、オリジナルからどのように変更されているのかという点ですね。それを確認するためには、先にオリジナルの方をプレイしておかなくてはなりません。「死のワナの地下迷宮」は既にプレイしていまして、「地獄の館」も携帯アプリ版ですが一応はプレイしています。ただ、両方ともかなり難易度が高くで、未だクリアには至っていません。

 そんなわけで、「デストラップ・ダンジョン」と「ハウス・オブ・ヘル」が発売される前に、「死のワナの地下迷宮」と「地獄の館」をクリアしておきたいのですが、FFのプレイは8巻の「サソリ沼の迷路」までで止まってしまっていました。別に順番なんて関係無いのですが、既にプレイ自体はしている6巻の「死のワナの地下迷宮」はともかく、10巻の「地獄の館」に挑戦する前に、とりあえず9巻の「雪の魔女の洞窟」をプレイすることにします。

 そんなわけで、社会思想社・現代教養文庫、イアン・リビングストン著のゲームブック、「雪の魔女の洞窟」のプレイを開始しました。

 これ以降、「雪の魔女の洞窟」のネタバレが含まれています。ご注意ください。



氷指山脈の<水晶の洞窟>の奥でアランシアの恐るべき雪の魔女がこの世に新たな氷河期をもたらし、みずから世界を支配すべく魔力を駆使しはじめた。
君はなにも知らなかったが、君が探していた凶暴な怪物の爪にかかった猟師が死にぎわに君に重要な任務を託す。
だが時間は残り少ない。期待に応えるならすぐに出かけねばならない。


社会思想社・現代教養文庫「雪の魔女の洞窟」裏表紙より



 ……寒い。
 分厚いマントや毛皮の上からでさえも、いてつくような寒気は、あたしの柔肌を容赦なく貫く。
 あたし、レイン・デシンセイ。18歳。今あたしは隊商を護衛をしながら、アランシア北部にある氷指山脈の麓にある取引所を目指して旅をしている。護衛といっても、隊商を襲う野盗どもが狙うのはこれから仕入れる予定の北部の品物だろうから、行きの行程で襲撃を受ける心配はそれほど高くはない。とぼとぼと隊の先頭を歩きながら、夕飯に出てくるであろう温かいシチューのことを、あたしはずっと考えていた。

 朝からずっと降り続いていた雪が、次第に小降りになってきた。寒気が弱まるのはありがたいことだが、寒冷地を旅する上では必ずしも良いことばかりとは限らない。例えば今あたしたちが踏み込んでいる、この凍った湖だ。もし湖の表面に張った氷が脆くなってしまっていたら、あたし達はまとめて全滅してしまうことになる。
 氷の耐久性を試すために剣でその表面を突付いていたそのとき、静寂に支配された北の大地を、鋭い角笛の音が引き裂いた。あたしは顔を上げると、周囲に神経を張り巡らせる。その角笛はあたしたちが向かっている前哨砦から聞こえたように思われた。何かアクシデントがあったに違いない。
 あたしは慌てて荷馬車に戻り、御車台に座っているあたしの雇い主であるビッグ・ジム・サンに駆け寄った。ビッグ・ジムはこの非常時にも落ち着き払い、豊かに蓄えられたあごひげをさすりながら、角笛が聞こえたと思しき方角をじっと見つめていた。
「前哨砦から聞こえたようだ。お前さん、行って見てくれ。厄介なことになるかもしれん。いそいでもどるんだぞ」
 彼のその悠然とした態度こそが、隊商の仲間を落ち着かせるのだ。かく言うあたしも、非常事態に少し舞い上がっていたことに気づかされた。照れ隠しのために咳払いをしてから、務めて冷静に振舞いつつ、隊商を離れて前哨砦へと向かった。

 サクサクと新雪を踏みながらあたしは足早に砦を目指し、2時間後、遂にその凄惨な事件現場へと到着した。そこにはボロボロに引き裂かれた男たちのが大勢横たわっていた。全員が息絶えているということは確認するまでもない。小屋も全て倒壊してしまっている。
 彼らの傍らには、巨大なサルのような足跡が残っている。この足跡の持ち主が、この惨劇を引き起こしたのに違いない。辺りには特にそのような気配も感じられず、おそらくはこの襲撃に満足して、既にねぐらへと引き返していったのだろう。
 生存者は、ゼロ。ここであたしがすべきことはもうない。少し肩透かし気味ではあるが、あたしはひとまず隊商に戻ることにした。

 陽もかなり傾いてきた頃、あたしはようやく隊商へと帰り着いた。隊商の面々が不安そうにあたしを取り囲む。なるべく皆に不安を与えないよう、あたしは勤めて淡々と、砦の様子を報告した。
 砦を襲った怪物はすぐには行動を起こさないかもしれない。しかしこの隊商だって、いつ襲われるかわかったものではない。その晩は馬車に円陣を組ませ、焚き火を煌々と焚き、寝ずの番が置かれた。それでも皆落ち着かない様子で、

 とりあえず今晩を凌ぐことはできるだろう。しかし今後も商売を続けていくためには、この怪物を野放しにしておくことはできない。
 ビッグ・ジム・サンはあたしに、この怪物を退治してくれないかと懇願してきた。実のところ、怪物退治は望むところだ。野盗退治なんかよりも、ずっと心が躍る。
 あたしは怪物退治の報酬として、金貨50枚を請求した。これには流石のビッグ・ジムも渋い顔をしたが、この氷指山脈での交易自体を取りやめてしまうわけにはいかないし、そのためにはあたしに頼るしか方法は無いのだ。ビッグ・ジムはとうとう根負けし、あたしの要求を飲むことを承諾した。

 あたしは明朝の出発に備えて毛布に潜り込んだが、怪物のことが頭を離れず、なかなか寝付くことができなかった。砦で見た足跡から、怪物の姿を想像する。なまなかな覚悟では、逆にこちらがやられてしまうことになるだろう。
 寝つきは悪かったのに、太陽が昇るのと同時にバチッと目が覚めた。辺りはまだ静寂に包まれている。皆を起こさないよう、あたしは静かに出立の準備を整える。
 ビッグ・ジムは壁にもたれるように眠っていた。あたしはそっと彼の肩を叩き、出発の挨拶を済ませる。随分と疲れたような表情をしていたが、彼は笑って、あたしの幸運を祈ってくれた。
 外へ出ると、顔に冷気が突き刺さってくる。焚き火を囲んでいた不寝番たちに、きっと怪物を倒してくると約束し、あたしは前哨砦へ向けて歩き始めた。

(つづく)



<現在の状況>

技術(10):10
体力(21):21
運(10):10

金貨:0
宝石:なし
飲み薬:ツキ薬
食料:10

装備:なし

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