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バルサスの要塞 侵入記 その3
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2005年07月17日 16時48分46秒
<現在の状況>
技術点:8
体力点:14
運点:9
魔法点:12
持ち物:魔法の剣、皮の鎧、ザック、銀の皿
魔法:目くらまし、火炎、千里眼、浮遊×2、技術増強、体力増強
ここから「バルサスの要塞」のネタバレあります。ご注意ください。
そのひらけた空間には、川が流れている。そして、女の人が一人、お洗濯をしているみたい。側にはジジシャツと股引とがくっついたつなぎ(?)みたいなのが干してあるけど、あいつら、こんなの着てるのな……。しかし、こんな洞窟の中で干しててもほとんど乾かないと思うんだけど。
あたしはその女の人に声をかけてみる。いろいろ話をしてみると、このおばちゃんは別に邪悪な人ではなく、はっきりとは言わなかったけど、<柳谷>から連れてこられて働かされているみたい。できれば逃げ出した方がいいということ(それはちょっと無理)、砦にはここまでの妖怪とは比べ物にならないくらい強い妖怪がいること(えと、どこから”砦”なの?)、<羊の毛皮>を手に入れなくては砦のあるじに会うこともできないだろうということ。それらの情報を入手して、おばちゃんに別れを告げる。おばちゃんはあたしの幸運を祈ってくれたので、運点が2点回復する。ありがとう、できれば開運の術を使う前に出会いたかったです。
あたしは川沿いの道を進んでいく。しばらくすると道は再び岩山の中へと入っていく。さらに進むと、十字路に出た。何の選択肢もなく北へ進むと、大きな木の扉に行く手を遮られる。物音は聞こえない。あたしはそっと取っ手を回すと、慎重に部屋の中に足を踏み入れる。
そこは岩でできたゴツゴツした大雑把な部屋。真中には大きな岩でできたテーブルがあり、部屋の片隅には木の箱が3つ積んである。そして何より、正面にある扉の横に立っている、大きな岩の妖怪。そいつはこっちを見ているみたいなんだけど……。動きは鈍そうなんで、やり過ごすことはできるかもしれないけど、箱は気になるなぁ。
「あのー、もしもし?」
あたしは岩の妖怪に声を掛けてみる。反応なし。ハロー、だの、ズドラーストビーチェ、だの、いろいろ話し掛けてみるけどまったく反応しない。そもそも耳が聞こえないのかしらん。あたしはそのまま部屋の中央に一歩進む。すると、それに反応するかのように、あいつも一歩前へと踏み出してくる。場に奇妙な緊張感が走る。実は今回、まだまともな戦闘ってしてないのよね。そろそろ1回くらいいいかなぁ。あたしはこの妖怪と戦う決意を固めた。
あたしは箱に向かって走る。案の定、こいつは動きが遅いんで、邪魔されずに箱のところにまで来られた。で、箱を開けようとしたんだけど、鍵がかかっているらしくて、開けることができない。そうこうしているうちに、ヤツが近づいてきた。<火炎>の術、は効かないだろうなぁ。あたしは剣を手にとってそいつと対峙する。ボカ、ボカ。固い岩に苦労しながらも、なんとか退治。
今度はじっくりと箱を調べてみることに。まず3つ目の箱をチェック。が、これが全然開かなくって。いろいろいじっているうちに、うっかり箱を取り落として、あたしの”むこうずね”を直撃した。
(しばらくお待ちください)
えーと、どこまで話しましたっけ? ああ、そうそう、今度は2番目の箱にトライ。しかしこいつもまた全然開かない。埒があかないんで、剣でごつんと小突いてみたんだけど、逆に剣が刃こぼれって……えー?
くっそー、2回続けてハズレかぁ。つーか、あたしが悪意ある支配者なら、絶対3つ目も外れにする。絶対する。けど、ここまできてアタリのチャンスを逃すほどお人よしじゃあないわよ。あたしは一つ目の箱を手にとる。これはどうにかこうにか開けることができて、中からは銀の鍵が。これって、他の箱のどっちかの鍵かな? とりあえず、3つ目の箱に試してみる。あれ、開かない。くそ、くそ。どうやっても開かない箱に業を煮やして、あたしは箱を床にたたきつける。すると箱はどこかへと消えてしまった! あれ、いや、ちょっと待ってよ。あたしは慌てて床を探るけど、どこにも見つからない。結局いままでの苦労はなんだったのさ。あたしは岩のテーブルに腰掛けて、さめざめと泣き出した。って、それ違うゲームだし。
ともかくあたしは扉を開けて先に進んだ。いろいろうねうね進んでいくと、大きな明るい部屋への入り口に着く。その部屋はパーティー用の大広間、かしらん。部屋の中央に大きな長テーブルがあり、その周りには4,50脚程度の椅子が並べてある。部屋を見下ろす位置にバルコニーがあり、そこへは左右二つの階段から登れるようになっている。壁には絵や鎧かぶとが飾られている。うーん。絵だの鎧だのは、露骨に怪しいよなぁ。でも、必要だと言われた<羊の毛皮>をまだ入手していない以上、いろいろ首を突っ込まなきゃいけないんだよね。いや、こんなとこに<羊の毛皮>があるとはとても思えないんだけど。
まず鎧かぶとを調べてみる。鎧かぶとは様々な形をしていて、それだけ数多くの妖怪がこの砦には棲んでいるっていうことなのよね。その中の、ひときわ立派な鎧があたしの目を引く。うわー、すっごいわ、これ。と、まじまじと見つめていたら、突然その鎧の腕が動き、あたしを張り飛ばした。痛っー。いきなり、ヒドイ……。どうやらそれ以上悪さはしないみたいなんで、さっさと左の階段からバルコニーへ。
その階段は、ぎしぎしと音を立てている。なんかいやーな雰囲気が漂ってるんだけど、あたしは慎重に、一歩一歩階段を登っていく。すると、ある階段がスイッチになっていたのか、階段が一斉に下方向に向かって回転し、転がり落ちる! あたしは<浮遊>の術を使って難を逃れる。あぶなかった。あたしはそのまま空中を飛んで、バルコニーにゆっくりと着地する。
バルコニーには、右、中、左と3つの扉がある。ここの砦って、3択がけっこう多いなぁ。あたしは右の扉を開ける。中はかなり広く、多くの奇妙な彫像が並んでいる。未完成の作品もあるみたい。そして部屋の中央には箱があり、その上には一体のガーゴイルが鎮座している。こいつはアレですよ、アレ。ガーゴイルはあたしの方をじっとにらみ、奥へ行こうとするあたしの行く手を遮ってくる。うーん。一戦やらかさなくちゃいけないのか。有効そうな術はなさそうな感じだし、あたしは剣を構えて警戒する。と、その前に<技術増強>で技術点を原点まで回復させておこう。
ガーゴイルはこちらを睨んではいるけど、一見無防備にも見える。そこであたしはガーゴイルに向かって斬りかかる。カキーン。しかし、ヤツの固い表面にはじき返されてしまった。くっそー。なんか術を使わなきゃいけないのか。使えそうなのは<火炎>の術くらい。しょうがない、使っちゃおう。
「火炎!」あたしは叫ぶ。が、ガーゴイルには効いた様子もない。やっぱ、<火炎>じゃダメだよねー。うんうん。なんてやってると、ガーゴイルがあたしを張り飛ばす。あいたたたた……。ダメだ、こいつもうダメ! 手におえない! 入ってきた扉から脱出して、別な扉を選びなおすことにしよう。
真中の扉を開けると、中は目が痛い程鮮やかな極彩色塗られた部屋。床には様々な妖怪の人形が転がっていて、右側の壁には大きな箱が、その奥には扉がある。そして、部屋の中には3匹の小さな妖怪が。かわいー、とはちょっといえないかな、こいつら。うーん、ブチ殺すのは忍びないけど、さりとて適当な方法もないし……。無視して奥に進んじゃおう。ちびどもも、特に邪魔はしてこないみたい。うーん、でも何か違和感が……。
でも違和感の正体もわからないまま、結局無事に部屋を抜ける。その先の短い通路を抜け、螺旋階段を登ると、小さな踊り場に出た。そこには右と左、二つの扉が。あたしは右の扉を開ける。
中は誰かの住居らしく、様々な調度品が置かれている。獣の頭がしつらえられた壁飾りが並んでいたり、床に毛皮がしかれていたり、なにかと動物っぽいインテリアが多い。と、その中の一つである犬の頭が突然こっちを向き、吠え出した。やばい。犬の頭に気を取られた隙に、今度は敷物に耳をはたかれる。あいた。そちらに向き直ると、ちょうど椅子が長身の男に姿を変えるところだった。
「ここになんの用だ?」
「いや、けして怪しい者ではありません。あたしは……」
「だれの許しを得てここにいる?」
うわーん、全然聞く耳持ってないよ、この人。その男は突然蛇に姿を変えて、こっちに向かってきた。さらに、犬の頭もこっちに向かって飛んでくる。まずい、まずいよ、これ。
あたしは<千里眼>の術を使う。どうやらこいつらは、何にでも変身できる、変身妖怪ミクらしい。しかもあたしをナメくさってる。くっそー、こいつらー。さらに、金に執着のある欲深い連中だと言うこともわかるけど、今のあたしはすっからかん。金なんてもってません。うーん、悔しいけど、左の扉に入りなおそう。
ミクの部屋を出て、左の部屋へ。そこは円形の部屋なんだけど、部屋の中央に、幅の広い溝に囲まれた”島”があり、その真中には宝箱が置かれている。部屋の反対側には扉があり、そこへは普通に歩いていける。そして入ってきた扉の側には、一巻きのロープが。冒険者の勘では、あの箱の中には何か有用な物が入っていると思う、多分。危険でも、箱にトライすべきかな、ここは。
<浮遊>の術が残っているんだけど、なぜかそれを使うという選択肢はない。あたしはロープを持って策を練る。うーん。そうだ、コレをわっかにして、箱に向かって投げればいいんだ。それでするするっと手繰り寄せれば。思い立ったが吉日。早速実行に移す。おっ、うまくひっかかった。あたしはそのまま箱を手繰り寄せる。しかし、箱が溝に落ちたとき、あたしは誤算に気がついた。この箱、めちゃめちゃ重いのだ。って手繰ってたときはそんなに重くなかったのにー。あたしは一緒に引っ張られて、溝の中へ。しかし、<浮遊>の術を使って何とかピンチを脱した。ショボーンとしたまま、向かいのドアから先へ進む。
扉の先は、黒い塔の内部に通じる螺旋階段のふもとだった。そこを登っていくと踊り場に出、一つの扉で終わっている。あたしは扉を開け、中に入る。
すると、松明の火が突然消えた。周囲が暗闇に包まれる。そして、その暗闇の中からあざけるような声がする。一人ではない、そこかしこから聞こえる。
「愚かな冒険者よ」
高音から低音へ。まるで唄うように
「ガンジーのすみかへようこそ! 気の毒だが、ここがおまえの目にする最後の部屋だ……ああ、いや、おまえにはなにも見えぬだろうがな、ええ? だがわしらにはお前が見える、なあ、兄弟たちよ?」
周囲を笑い声が包む。そして、白い幽霊のような顔が、不意にあたしにむかって飛んでくる。
怖い!
あたしは恐怖におびえ、その場に倒れこんでしまう。
ガンジー。こいつらが。
あたしの心を絶望感が支配する。あきらめちゃいけないって理性ではわかっているけど、身体に刻まれた本能があきらめかけている。くっそー、動け、あたしの身体!
ザックをあさるけど、めぼしい物は何もない。あたしは剣を手に、どっちを向けばいいのかもわからないけど、震えを必死におさえながらガンジーに相対する。
周囲を沈黙が支配する。なんなのよ、さっきまであんなにうるさかったくせに。あたしはじりじりと周囲に気を配る。どれほど時間がたったのか、あたしの心がほんの一瞬緩んだとき、突然ガンジーの叫びが響き渡る。あたしは平常心を失った。
恐怖にかられ、ともかく扉から外へ飛び出した。そこが高い塔の手すりのないバルコニーだったことなど関係ない。あたしはバルコニーから飛び出し、塔の地面に叩きつけられるその瞬間まで、どんな体勢で激突すれば苦しまなくて済むのか、それだけを考えつづけていた。
あたしは、任務に失敗した。
<多分、つづく>
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