※森山安雄著のゲームブック「展覧会の絵」について多少のネタばれがあるかもしれません。ご注意ください。
十枚目の、そして最後の絵 - 「キエフの大きな門」
「展覧会の絵」、ようやくクリア。
最後に語られる主人公の秘密についてはここでは書きませんが、正直なところいまいちだったかなぁと思います。主人公や侏儒の動機はよく理解できるのですが、「真の楽師の琴」を持って世界を旅するということとどう結びついているのかがわからないんですよね。主人公の物語は語られましたが、世界の物語との関連については不十分だったかな、と。
その辺りも含めて、私が「展覧会の絵」に対して物語重視のゲームブックであると言う先入観を有していたのが、評価する上でマイナス方向に働いたという面があったかもしれません。世間では物語重視のゲームブックであるという評価が存在し、実際それは正しかったのですが、私が想像していたものよりはゲーム的であったし、物語性と言う意味では物足りなかったのです。それが顕在化したのが二枚目の絵の「古城」。そこでは風の女王や砂の王と言った物語はありましたが、8つの部屋を好きな順番で回ることができるという、とてもゲーム的な構造をしていました。もちろんそれ自体はゲームブックとしては悪いことではありませんが、「なんだ、こんなもんか」と思ってしまったのも事実です。それ以降でも、多くのシーンで双方向移動が可能で、物語を楽しむよりもゲームを解くというウエイトが大きかったと思います。ゲームと物語の素敵な融合という境地には達することができませんでした。こと「物語る」ための方法論に関しては、マルチノベルと銘打った「ダンジョン商店会」の方がずっと上だったと思います。
物語として良かったと思うのは四枚目の絵「ビドロ - 牛の群れ」。牧場を包むふしぎな雰囲気と、ミステリアスな村人の態度、そしてラストのミノタウロスとのスペクタクルあふれる戦い。話としてはありふれたものでしたが、とても雰囲気があり、物語として楽しむことができました。絵の探索はメインストーリを進める上で重要なんですが、個々の絵の話にはあまり関与せず、ある意味ノイズとも言えるかもしれません。このパートの成功は、宝石と絵の探索があまり前面に出てこなかったことにあったのではないでしょうか。
物語についていろいろと文句を書いてきましたが、逆にゲーム性の面では良くできていたと思います。難易度としては低めでしたが、旋律の初期数と使用場面のバランスが良く、旋律を使用するか否かはアイテムや金などとの兼ね合いもあり、悩み甲斐のある選択でした。また、全体を貫く物語とは別に、絵ごとに様々な世界を巡れるのも面白かったと思います。絵によってまったく世界観が変わると言うギミックにより様々な趣向を凝らすことができ、ゲームブック作家として取り組み甲斐があったのではないかと推察します。時間があったら、後でパラグラフの構造を解析して見たいと思います。幾つか宝石入手できませんでしたし。それをやってみたら、ゲーム的な方面の評価を見直すかもしれません。
個人的なゲームブックのリハビリとしては丁度良い作品でした。このブログを始めてから、ゲームとしてはぬる目のものばかりプレイしてきたので、次は歯ごたえのあるものに挑戦しようかと思います。ファイティング・ファンタジー辺りが妥当かな。T&Tのソロアドもやりたいんだけど、なぜか手元にサイコロが3個しかないので、どこかで調達してこないと。


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