きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

黒い罠

2024年05月31日 | 喫煙防止教育
5月31日はWHOが定めた世界禁煙デーです。
毎年スローガンが掲げられており、2024年は「Protecting children from tobacco industry interference 」「タバコ産業から子供たちを守ろう」です。

世の中にはタバコに関する間違った認識がまだまだ根強いため、喫煙防止教室ではその点を指摘し、子供たちに正しいことを教えるように心がけています。

大人たちが無意識に普段使っている言葉も、時には誤解を招きかねないので、注意が必要です。

たとえば、「タバコは二十歳になってから」という決まり文句。
近所のスーパーマーケットでは「お酒とタバコは二十歳になってから」とよく店内放送を流していますが、やめてほしいです。

確かに日本では二十歳以上には法律で喫煙が許可されていますが、「タバコは20歳になってから吸いましょう」と推奨していると解釈されては困ります。


非喫煙者や、タバコに興味がない人たちはあまり知らないと思いますが、最近は様々な合成フレーバーオイルを熱して発生させた水蒸気を吸うタイプの電子タバコが出回っており、中高生くらいの年齢層をターゲットにして販売されています。

その方面のキーワードでネット検索をちょっとしてみたら、CBD(カンナピジオール)オイルを使ったものもとても多いことに驚きました。
CBDは大麻抽出成分です。

既存の法律にひっかからないようなギリギリのグレーゾーンを狙って、様々な危ない薬物がはびこっていて、ヘルスリテラシーが低いと、簡単に黒い罠にひっかかってしまいますね。

次から次へと新しい喫煙具や薬物が出現しているので、子供達の健康を守るには、私も知識の更新を怠らないようにしないといけません。






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子供たちと思い出を共有

2024年01月31日 | 喫煙防止教育
コロナ禍以降、ずっとリモートで行ってきた喫煙防止・がん予防教室でしたが、校長をやっている同級生から、今年は是非対面でと頼まれて、先日、4年ぶりに直接学校へ出向いて授業を行いました。

「最初にタバコを使い始めたのは?」という質問が子供たちから出ると、見せているお宝があります。
メキシコのパレンケ遺跡に残されているタバコを吸っている人の壁画レリーフです。

これは以前、私が担当した肺がん患者さんからいただいたものです。
今回は、子供たちに、この患者さんのことも話してあげました。

リモート授業でのパソコンの画面越しでも、このレリーフを子供たちに見せたことはありますが、患者さんについて詳しい話をするのは初めてでした。
直接子供たちと接している教室の空気感が、自然と私の口を開かせた・・・そんな気がしています。

今回はリモートのときのように子供達とのやりとりをビデオに撮っていなかったので、子供たちに話して聞かせた内容を以下に転記します。
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「メキシコに旅行したいんですが、いいですか?センセイがダメだというなら、あきらめます」

肺がんの手術をしたあと、がんが再発し、抗がん剤治療を行っていた患者さんからそんな相談をされたのは、2015年の8月のことでした。

メキシコには以前住んでいたことがあり、お友だちがたくさんいて、会いに行きたいのだとおっしゃいます。

そういうことならばと、旅行ができるように注射日やその後の副作用の出る時期などを逆算したりして、治療スケジュールをたてなおしました。

メキシコといえば、マヤ文明。
人類史上、喫煙のことが記録されている最初の文明であると聞いたことがありました。

『どこかの遺跡にタバコを吸っている人の壁画があるはずなんです。絵葉書でもあったらください』と軽くお願いしました。

幸い患者さんは体調もよく、旅行を楽しめたようでした。

メキシコには仕事で2―3年赴任していたことがある程度なのかと勝手に思っていたのですが、聞けばなんと、今から40数年前、空手の師範として23年間も住んでいたのだそうです。

メキシコ全土に弟子とその孫弟子がおり、毎年10月にはご自分の名前のついた大会が開かれ、1万人以上が集うのだとか。
帰国後も、大会の時期に合わせて毎年メキシコへ。
旅行は、その大会に最高指導者として参加するためであったと聞いて、ビックリしました。

私がうろ覚えだった喫煙レリーフのことを現地の弟子達に尋ねてくださり、パレンケ遺跡にあるものであることをつきとめ、お弟子さんがわざわざレプリカを取り寄せてくださり、お土産に持って帰ってきてくださったのでした。

「がんになってしまったし、先生にもきっと海外旅行なんてダメだって言われると思っていたので、今年は行けないと断っていたんです。髪の毛もこのとおりすっかり抜けてしまったし・・・でもどうしても来て欲しいって弟子たちはいうし、先生からも許可がおりたので・・・だけど、むこうで飛行機降りたらこの頭でしょう。迎えに来たみんながビックリして、俺だけが丸坊主だと目立つからって、弟子たちみんなが大会前日に丸坊主にしてくれたんです。開会式では羽織袴に丸坊主がずらーっと(笑)嬉しくて泣けてきました」

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一緒に行く?!

2023年10月26日 | 喫煙防止教育
久しぶりにリモート授業を行いました。

5年生の喫煙防止教室と、6年生のがん予防教室。
何年も前からこのパターンで授業を行っている小学校です。

6年生は私のことをちゃんと覚えていてくれました。
そんな些細なことにも、幸せを感じます。

5年生はあらかじめ担任の先生方に授業をやっておいていただき、当日は1時限まるまる使って、子供たちの疑問・質問に答えます。

マイクの関係上、質問する子は教壇に置いてあるタブレット端末のところに出てきてくれます。
4クラス、約100名の学年でしたが、次から次へと質問が出てきて、楽しかったです。

立て続けに何人か男の子からの質問が続いたので、「女の子からも質問してほしい」とお願いしましたが、なかなか手が上がらず、担任の先生が見かねて「どっちでもいいよ」と助け船を出してくれて、また男の子。

やっと次は女の子から・・・と思ったら、ふたり一緒に出てきて、仲良く声をそろえて質問してくれました。

それに習うように、そのあとも女の子たちは二人一緒・・・
「一緒にトイレ行こう!」とつるむのと同じです(笑)

どうしてなのかなあ?
いつもそうだというわけではないですが、ちょっと気になりました。









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地盤づくり

2023年07月14日 | 喫煙防止教育
毎日のように夕方は雷雨という当地ですが、週間天気予報などを見ますと、連休明けはいよいよ梅雨が明けて、本格的な夏がやってきそうです。

とはいっても、もうすでに日中は35℃を超える猛暑。
熱中症には気をつけたいと思います。

日中の熱い時間帯はエアコンの効いた職場にいますが、とにかく、定期的に水分をとることですね。

飲むものは水筒やペットボトルに入れて、どのくらい飲んだかわかるように「見える化」しています。

学期末は喫煙防止教室の依頼が集中します。
今月も5校の小中学校で行いました。

学校の先生による対面授業とオンラインでの質疑応答というハイブリット形式もだいぶ慣れてきました。

長年お付き合いのある養護教諭の先生には、私の授業を受け継いでもらっており、昨日もJ小のH先生はとても上手に授業をしてくださり、子供達(4年生)の反応も抜群でした。

これまで20年かけて取り組んできた防煙教育の地盤づくりがようやく一段落したなあと感じています。

子供達との質疑応答の様子は、今年度も少しづつYouTubeにアップしていきます。


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7本目

2023年07月11日 | 喫煙防止教育
健康教育について新聞に記事を書くにあたり、昔の資料を色々と見ていましたら、禁煙外来を受診した中学二年生の女の子との会話を記録していたものが出てきましたので、ここに転記して共有いたします。

彼女のことは、私が禁煙治療に携わってきたなかでとても印象強く残っています。なぜなら、彼女のような子供の場合、数本吸っただけで依存症に陥ってしまうことを私に教えてくれたからです。

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私『初めて吸ったのはいつ?』

Aさん「今年の夏休み中。友だちに誘われて・・・」

『どのくらい吸ったの?』

「二箱くらいかな。」

『最後に吸ったのは?』

「三週間くらい前。もうやめた」

『やめるの、大変じゃなかった?やめられない感じってあった?』

「7本目くらいかな。ハマッタ感じがした」


『病院に行こうって言われて、どう思った?』

「もうやめたから必要ないって思ったけど、話聴くだけでもって言われたから・・・」

『じゃあ、せっかく学校早退してきてくれたんだから、何か訊きたいこととか、知りたいことある?』

「今まで吸ったタバコのせいで、将来、何か悪いことがおこる?」

『二箱ね・・・これからもう吸わなければ、からだには影響はないから心配ないよ。あ、でも、一度味知っちゃったでしょう?麻薬だからね。これからの人生でいろいろ誘惑はあると思う。味を知っちゃった人と知らない人とは、そこが違う。それが一番怖いことなんだよね。また、どうってすすめられたら、どうする?』

「高校卒業するまでは、友だちとか、仲のいい先輩から誘われたら、また吸っちゃうかもしれない」

『どうして?』

「そういう子なら、大人にばらさないだろうし・・・」

『子供だから吸っちゃだめで、大人なら吸ってもいいって思ってるの?』

「・・・」


『吸っていることは、担任の先生が気付いたの?』

「自分から言った。吸ってる子達がみんなバレ始めて、自分から言ったほうがいいと思って。そうしたら、そうか、吸ってるのかって。親が呼び出された」

『それで先生はなんて?』

「どなったりはしなくて、からだのことを心配して、いろいろ教えてくれた。がんになるとか、疲れやすくなるとか、集中力が落ちるとか・・・妊娠したときにもやめられないとか」

『がんとか心臓病は、何年も吸い続けた人がなるんだけど、1本吸っただけでも、体の血管が縮んで、血液のめぐりが悪くなったりするんだよ』

「あ、それ、わかる。足の裏とかが冷たくなってしびれる感じ」

『血の巡りが悪くなれば、集中力もおちるし、運動もできなくなるしね。ごはんもおいしくなくなる。受動喫煙でも、同じ変化がおこるしね。だけど、一番こわいのは、やっぱりハマッちゃうってことだと思う。お父さんやお母さん含めて、今吸っている人たちってみんな、そういうこと知らないで吸い始めちゃって、やめられなくなっているんだよ。でも、やめるための薬はあるから。学校の先生や親御さんと一緒なら、中学生だって必要なら出してあげられるよ』

「あたしのほかにも中学生来る?友だちに教えてあげたい。タバコはもう嫌。しわができるっていうし、長生きしたいし」

『自分のからだは、自分で守ってあげないとね。はっきりいって、お父さんやお母さんだって、あてにはできないから。自分が大切にしてあげなかったら、自分がかわいそうじゃない?自分を守るには、正しいことと正しくないことがちゃんとわかるようにならないとね。そのために今勉強してるんだよ。勉強、置いてきぼりになってない?』

「だいじょうぶ(笑)学校好きだし」

『冬休みあけたら、もう一回くらい来る?』

「ううん、だいじょうぶ。」

 『じゃあ、おとうさんとおかあさんに、禁煙治療に来るように勧めてね』

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脳にしみこむ話

2023年02月13日 | 喫煙防止教育
F小学校から届いた喫煙防止教室後の感想文から・・・



何年も前の話になりますが、「最近、結婚相手には喫煙者を選ばないという方が増えています」と書かれた結婚相談所の新聞広告がありました。
タバコ大国といわれ続けてきた日本が確実に変化してきていると、安堵に似た感情を抱いたことを覚えています。

私は以前から、職場の独身の同僚たちには、「もしも結婚したいと思っている人が喫煙者なら、ぜったいに禁煙してもらってから結婚したほうがいいよ」と、常々アドバイスしてきました。
パートナーが喫煙しているかどうかは、お互いの人生を大きく左右する問題だからです。

喫煙し続けている夫を持つ非喫煙者の妻は、非喫煙者あるいは禁煙した夫を持つ妻よりも学歴が低い傾向にあったという研究結果もあります。
つまり、リテラシーの問題なのです。



こういった子供たちの感想文や、授業後に学校の先生方からいただいたお言葉のおかげで、ある時から私は、子供たちの命を守るためにやっているのだということを改めて意識して授業をするようになりました。



私の言葉は子供たちの脳にしみこむのだから、責任を持たねばいけない、そのためにも、私自身、日々精進し続けなければいけないぞと思うのです。



この感想文を書いた子は「おそらくあの子だな・・・」と、頭に顔が思い浮かびます。
リモートの画面越しにも、彼の危うさは伝わってきていました。

彼がこれから、マナーやモラルとはどういうことか、正しく学んでくれることを、心から願うしかありません。




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お医者さんに質問@煙の行方

2023年02月10日 | 喫煙防止教育
喫煙防止教室というと、喫煙は大人の嗜みといった考えが主流だった時代には「子供が将来喫煙するのを防ぐための教育」という意味合いが強かったかもしれません。
ですが現代では、どちらかというと「子供を受動喫煙の害から守る」という要素のほうが強くなっています。

喫煙する人を減らすための禁煙治療支援をこれからも推進していくのはもちろんですが、その効果が出るには、今しばらく時間がかかりそうです。

ですから、どうしたら煙の害から自分たちを守ることができるかということを教えることは、とても重要なのです。


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お医者さんに質問@換気扇の下

2023年02月09日 | 喫煙防止教育
昨日、母校の小学校の6年生72人にリモートで授業を行いました。
恒例の子供たちとの一問一答。

換気扇の下でタバコを吸っているお父さんやお母さん、まだまだ多いんでしょうね。

「だめ」だけではなく、そういう行動をしてしまっている人たちの気持ちに寄り添いつつ、正しい知識を得て正しい行動をすること(リテラシーの向上)がこの授業の目標です。


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深い質問に感じる教育の力

2023年02月02日 | 喫煙防止教育
喫煙はニコチン依存症という病気である。
すなわち、禁煙とは、病気の治療である。

このことを理解していない大人は、まだまだ多いです。

医療者でも、喫煙している人への禁煙の動機づけには苦労しています。

私が継続して喫煙防止教室を行っている学校の子供たちのなかには、とても深い質問をしてくる子がいます。
「教育の力」はすごいですね。


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ワタシってサバサバしてますかね?

2023年02月01日 | 喫煙防止教育
先日、私の故郷にあるF小学校の喫煙防止教室を行いました。
F小では数年来、外部講師として講話をおこなっていますが、コロナ禍以降はリモートです。

じつはF小は、初恋の相手が6年生の時に転校していったという、自分的にいわくつきの学校でもあります。

そしてなんと今年度は、幼なじみのN君が校長として赴任していました!

N君とは中学時代、吹奏楽部で一緒に青春を謳歌した仲です。
高校は男子高と女子高に分かれて通学しましたが、それぞれ高校でも吹奏楽を続けていて、N君の発案で、中学時代の部活仲間と一緒にクリスマスキャロルを演奏しながら近所の家々を巡ったことがあり、この時のことは人生の忘れられない思い出のひとつになっています。

今回の喫煙防止教室でのQ&Aコーナーはたっぷりと時間をとっていただいており、20人近い子供たちからの質問に答えました。

後日、授業の様子をずっと見ていてくれたN君からメールをもらいましたが、「子供たちの質問にサバサバと答えている様子が、中学の頃と変わらないのでうれしくなりました」と書いてありました。

録画を見直すと・・・
たしかに、認めざるを得ません。


「タバコはどこで栽培されているのですか?」
という質問でしたが、そもそも最初から子供は「どの国で多く栽培されているのか?」ということを質問していたんですね(笑)

趣味で習っているフランス語でも、サバサバ言ってますよ。
「Ça va (サバ)?(調子はどう?)」
「Oui, ça va.(うん、まあまあだよ)」

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